ロンドン5本目はミュージカル「プロデューサーズ」でした。2001年トニー賞作品賞、2005年に再映画化もされ、日本でも何度も上演している作品の新演出版。
演出はレオポルトシュタットなどのパトリック・マーバー。
会場は、リトル・ナイト・ミュージック、ラ・カージュ・オ・フォール、メリリー・ウィ・ロール・アロングの初演などでも有名なメニエール・チョコレートファクトリー!!
元チョコレート工場を改装した劇場で、客席数180と極狭い。
行ってみたいなぁと思っていたのだが、今回無事公演がある日程に当たり、かつチケット発売開始すぐに押さえることができたのだった。
12月末の舞台チケットを8月に取ったのだが、直前は完売になっていた模様だ。
以下感想メモです。
1幕
•開演前は、ファニーガール、キャバレー、雨に唄えばなどの名ミュージカルの曲が流れてすでに楽しい
•序曲で、柱にかかった帽子にライト
ーラストの帽子のシーンまで、ずっと柱にかかったまま。演出最高!
•アクロバット色物キャストが1人プラスアルファ
•歌セリフは意地になるほどそのまま!
ー元々のブラックジョークで笑わせる系からギャグとして正面から笑わせる形へ修正されており、ちょっとした吉本らしさが漂う
•プロデューサーになりたい!ではタップが全面に
ー至近距離で狭い舞台でぎゅーぎゅーになりながらのタップ見物。こんなに楽しいことある?
ーレオ役のMarc Antolin、ダンスうめぇ。主演の情けない役になりながらのタップの振り付け。好き
ーというか、Marc Antolin、背が高くてシュッとしていて歌もダンスもうまくて、もやしの演技が上手いから気がつくのに時間がかかったけど結構王子様だな
ー君は違う、はマックス役のAndy Nymanが女装して登場。回想が混ざっちゃったのかな?という感じで、順調にコンプラ準拠に改変されているのを実感。
ーていうかAndy Nymanも不潔オジ感が強いけど、歌ダンス上手いしほんと素敵だね。(翌日、別人のようにダンディな映画Wickedのマンチキン総督姿に映画館で遭遇)
•ナチのシーンでは、アンサンブルは鳩へ
ー全身黒タイツで、両手に1羽ずつ鳩をつけたアンサンブル。鳩の背中には鉤十字
ーヒトラータップタップがすごく楽しそう。
ー最後は鳩のマスクを頭に被った、両手に鉤十字の腕章入りの羽をつけた鳩人間が登場
ーヒトラーのバカに仕方が小学生みたいだね
•ゲイのシーンでは、ゲイを笑わず
ーゲイだからというより倫理が飛んでいるから色物演出家であるという改変
ー上手側に局部まで作った全身タイツの大理石像が出てきてこれに笑うシーンへ変更
ーすごく無理やり。でもめっちゃ笑う。何とか現代に合わせたい制作サイドの苦渋の決断を受信
→この大理石像は次のシーンまで取り残されちゃって皆大笑い。
ーゲイのメンバーがそれぞれのイニシャルのTシャツを着ているのがジワる
ー全員オネェキャラだけど、最後は女性だけどガテン系はそのまま
ー最後はボンテージに覆面姿、イエスキリストがワイン(シャンパングラス)を持って配りにきたり、メチャクチャ
•ウーラは、歌強い系キャストへ。お色気ダンスもほぼかっこよ演出。
•老女シーンの演出イカしている
ー棺が舞台中央にあり、その前に置かれたトランポリンで次々と飛び戻ってくる老女。皆豹柄の豪華コート
ー主人公の苦労というかある意味搾取されているのがちゃんと分かるような形になっている
ー老女が上手の壁に埋め込まれている金庫の中に消えていって、その後閉じて開けると紙幣の山に変わっている
ー主人公が踊り途中で股関節コキっとしたり芸が細かい
↑他のシーンもそうだが、アイテムの使い方が暗喩&ミニマムでオタクが好きなやつ。
•1幕ラストはふさわしい盛り上がり。
ーオープニングの舞台案内役、次の曲の物乞い、などのチョイ役も含めて全ナンバーのメロディに合わせて全メンバーが集い、ブロードウェイの楽屋物にふさわしい愛を感じる演出
ー春の日のヒトラーのポスターが出てくる。ヒトラーがキュートすぎて、ステージの勢いもあって腹筋が崩壊する
ー途中から大理石像がアクロバット。最後は鳩人間が看板の後ろで羽ばたいていて、カオスだしギャグ〰︎というお祭り騒ぎ
ーインターミッションに入ると、ファニーボーイだった上手下手のポスターが、春の日のヒトラーへ変更になっている幕間
すんごい笑えるのだが、枢軸国だった国の人間なので何に笑っているのだっけと少し悲しくなる。
あと、ほんとこの国の作品は、他の国をこき下ろすのが一級品だな。
2幕
•事務所はドアとソファと金庫が花柄へ
•オーディションのシーンもとても楽しく。
ー鳩を渡されたウーラ。ヒトラーポンポン!の時に拍に合わせて鳩が動いていたのが好きすぎた。
ーこの歌のシーンの皆の唖然とした必死な表情(そしてそのまま、歌中ずーっと同じ表情)が笑いを誘った。
ーオーディション待ちの人はちょび髭つけたり、制服着たり。小馬鹿にする感じ良い。そういうことじゃない感。
•春の日のヒトラー
ー花柄の鉤十字
ー冒頭は銀の衣装で、プレッツェルやソーセージ、ゲルマンのカブトなどのエロ美女は一緒。エロ美女に混じるアシスタント。
ー超イケメンも一緒
ーヒトラーはゲイというより変な人。ゲイのクネクネは無いけど、手がくいって曲がっちゃう感じ。
ーヒーラーはなんか花柄の胸パット入りのガウン、からの脱いでゲシュタポの制服
ー皆のはやしのあとの再登場ヒトラー!最高!!
ーアポロンの戦車のようなものに乗っているが、引いているのは四つん這いの人!(そして皆、無駄に黄金)
→ラストは、鉤十字色のリボンを振り回すヒトラー。超大盛り上がりだけど、ダンス含めて変でとても楽しい。
最後はギンギラのユーボートも登場してもう何が何やら。
ーブックオブモルモンの不謹慎すぎるけど、でも面白すぎる。際どい笑い。
ー春の日のヒトラー、ちゃんとナチスを馬鹿にしつつ、「あっこれ、ブロードウェイでヒットしちゃうのも分かるかもしれない?」という説得力が欲しくて、それがあった。
ー間違えなくこの作品の見せ場なはずで、ド派手なお笑いショーという、作品を表現している
•逮捕のシーンも楽しい
ー2人が帳面の奪い合いをしているところは、重なって座って「give it to me!」×10回以上というゲイギャグに。
ーそれを見てニヤニヤするゲイ2人。我々は何を見させられてるんだ…?
•金庫をひっくり返すと牢屋へ。
ー金をキーにした暗喩と、最小限なセットでほんとすごい。
ーこの歌は最高だよね。本日1番の割れんばかりの拍手。
ー曲をさらっていくところでは、インターミッション!で客席に明かりがついてインターミッションに。
ーここは客席とほぼゼロ距離で、こちらに語りかけるように歌っていて。
ー物語の主人公が話しかけてくれるほど幸せなことは無いよね。
•裁判のシーンもいい感じ。
ー歌いながら脱走して銃で戻されるところは映画そのまま。好き。
ーちゃんとこの2人がバディに見える。だからこその説得力なんだなと思う。
•全体を通じて
ーアンサンブルの衣装はどこにこんなに大量に?と思うほど、ほぼ全曲全員登場。生演奏だし豪華豪華。
ー衣装:必要十分でとても楽しい。何より、Andy Nymanも不潔オジとして設定して表現している感覚と衣装メイクの腕に脱帽。
そうなんだよ。うらぶれたミュージカル大好きおじさんが頑張るから愛せる物語なんだよ。主要メンバーが等身大。
ー照明:電飾が随所に使われていて、古き良きブロードウェイへの愛情を感じる。
ー装置:最高オブ最高。ミニマムなのにキーアイテムは舞台上に全て表現。
受け入れ難いものも多いけど、ミュージカルへの愛と制作側の本気が伝わってきて絶妙なバランスで楽しめてしまう作品。
寝て起きて翌日の虚無感もすごかった。春の日のヒトラーを楽しんでしまった自分はなんだったの…??という、まさに劇中の観客と同じ気持ちに。
この時代に大ヒットはしないと思うのだけど、このクオリティをこの小劇場で見られた感動が凄まじくて、生きていて良かったなぁ。
朝6時おきでコッツウォルズ1日観光に行ってきたのだが、まっったく眠くもならず、幸せな観劇でした。
Andy Nyman (Max Bialystock)
Marc Antolin (Leopold “Leo” Bloom)
Joanna Woodward (Ulla Bloom)
Trevor Ashley (Roger De Bris)
Raj Ghatak(Carmen Ghia)
Harry Morrison(Fraz Liebkind)
Mel Brooks&Thomas Meehan (Book)
Mel Brooks (Music& Lyrics)
Susan Stroman(Original Direction & Choreography)
Studio Canal (Special Arrangement)
以上が公式サイトのクレジット。
実際の演出はPatrick Marber。