「ディア・エヴァン・ハンセン」感想@MusicBox Theatre‎1〜全体とキャスト編

どもどもケイです。なんとか、ベン・プラット最終公演日の現地11月19日中にアップできた!
4月から恋い焦がれてきたDear Evan Hansenを無事観劇できた記録です!改めて感無量!!

SNS時代の孤独がテーマの本作だけど、サウンドトラックを聞いていた時よりも脚本を読んだ時よりも、本番の舞台はなお寂しくてエヴァンの苦しさが突き刺さるようだった。

なお、読み応えのある脚本を中心としたストーリー重視のミュージカルなので、観に行く方は予習がおすすめだ。

小劇場の音楽劇

脚本を読んで、歌がなくても演劇作品として十分成立しそう…と思ったけど、観劇後の感想はとにかく演劇だな
キャストは9人で、ダンスも派手な見せ場もなく、演劇要素が非常に強いのだ。食卓やソファに座って、登場人物たちは極めて自然な流れで歌う。こんな作品もあるのだと目からうろこが落ちるようだった。
いわゆる音楽劇のようだったけど、楽曲・歌詞共にブロードウェイらしい贅沢さだったので、どうカテゴライズするか迷うところだ。

舞台までの近さ

客席数が984席とブロードウェイでも小さめの劇場(Wickedで1800席、ドキュメンタリーのCome From Awayで1046席)、さらにオーケストラピットを舞台上左上方に移してステージを観客席へせり出させた変則舞台によりステージまでの距離が極端に近かった。

1階最後列からでもこの近さである。観客に共感してもらう、日常の連続としての舞台なんだぞという強いメッセージを感じた。

筆者はこんな感じで、3列目だったので、キャストまで3メートル足らずだった。眼福。なお、1列目の人は視界の半分くらいが壁のようで戸惑っていた。

現地の人も大興奮

入場すると舞台上にはいくつもの画面がつるされており、画面の中ではfacebookなどのSNSがしきりに更新され、聞き慣れた更新音が流れている。
現地でも若者を中心に大人気であるニュースは何度も目にしていたが、実際にも隣の席の少年はDearEvanHansenTシャツを着ているし、後ろの席の男性カップルは、3分おきにオーマイゴッシュ!あと○分だぜ!とカウントダウンしているし、皆興奮を隠しきれ無い様子。そして、皆SNSに思いの丈を投稿している…

主演ベン・プラットに夢中!

2017年トニー賞9部門ノミネート、作品、作曲、編曲、脚本、主演男優、助演女優の6部門が受賞となっている。

この半年を通じて主演ベン・プラットの魅力のトリコになったのでご紹介したい。※ベン・プラットは11月19日をもってディア・エヴァン・ハンセンを卒業しています。出演最新作などの情報はツイッターにて随時リツイートします。

twitterアカウントはkey_s1014へどうぞ!

主演ベン・プラットの魅力その1:演技力

とにかく各方面で絶賛されている主演ベン・プラット。トニー賞授賞式では作詞作曲家もプロデューサーもベン・プラットに特別の感謝を見せていた。
今回の観劇でなぜベン・プラットが絶賛されているのか分かった。とにかく演技力・歌唱力が半端ないのである。ずっと出ずっぱり、歌いっぱなし、しかも途中で自失呆然でへたり込んだり、嗚咽したり・・・これを週8回も演じてるの?と恐ろしくなるような舞台だった。

ベン・プラットが演じるエヴァンは神経質で対人恐怖症、そして何かにつけて自分を否定して泣く場面が目立つ。ベン・プラットは本当にエヴァンそのものにしか見えなかった。彼が追い詰められているシーンが何回も出て来るが、腕をぎゅっと掴み顔色を悪くし、見ているこちらが辛くなるような迫真のものだった。

特に、前半の見せ場であるコーナープロジェクト講演シーンで壇上に立つシーンは忘れられない。落とした原稿を拾おうとして、そのまま座り込み過呼吸のように大きく肩を震わせながら泣きながらの無音の数秒間、そしてそこからコーナーの遺品のネクタイを掴んで立ち上がるエヴァン。勇姿よりもエヴァンの痛々しさに胸がつぶれる思いがした。
また、後半のクライマックスであるエヴァンが自分の嘘を告白するシーンも目に焼き付いている。僕がしたんだ!!とむせび泣くエヴァン。この部分は思い出すだけで涙が出る。嘆息でどよめき(Oh・・・)、その後静まり返る客席・・・
ただ、予習でこのままwords failの歌の突入することは知っていたので、え、この状態で歌うの?と思うも一瞬の後に泣きじゃくりながら、しかししっかりと歌い出すエヴァン。

嗚咽しながら、嗚咽をこらえながらよくもまああんなに朗々と歌えるなと…これは色々なインタビューでもよく言われてる部分だ。技術的に嗚咽のタイミングまでコントロールしているよ、と必ず応えているベンプラット。しかし、だよ。自然なんだよ。

このベン・プラットのインタビューを紹介したい。


Ben Platt
エヴァンはとても孤独なティーンネイジャーで、周りから孤立しているのが、つながりがメインであるSNSで更に強調されている。
(インタビュアー:エヴァンは喋ったり伝えたりすることに、恐れを感じている少年だ。この話は彼の嘘が人を傷つけてしまうストーリー。1曲目で泣いて最後まで泣き通しだったよ)観客はどこか自分との共通点をエヴァンの中に見つけると思う。演じててそんな瞬間を感じられるのが嬉しい。

(インタビュアー:どうやってそんな感情表現をしているの?涙も鼻も出てるし・・・)2つの側面があって、1つは曲のどの部分で鼻水を飲み込んで・・・みたいな技術的な部分。興味深いのは泣き始めると舌の位置が上がって鼻の中に反響スペースが出来たりして歌いやすいんだ笑。
もう1つは、感情とメロディのバランス。元の曲のスコアが持つ美しい旋律を犠牲にしすぎないように、しかし歌に集中して背景の感情をおろそかにしないように、毎公演なんとかバランスを取ろうとしているんだ。

このあと、目の前でいちゃつくカップルたちにくしゃみをお見舞いした話が出て来る。ベン・プラット本人は早口のおしゃべりで、理知的で少しお茶目な性格であることがよくわかる。可愛すぎか。

主演ベン・プラットの魅力その2:歌唱力

歌の安定感も素晴らしいものだった。高音からシャウトまで、少し影のあるボーカル。個人的にはビブラートがかかった長い音の時の声がたまらん。


この動画は一番有名な曲の一つ、Waving Through a Window。
窓の外から手を振っても(スマホの画面をタッチしても)、決して誰も気がつかないというエヴァンの寂しさがヒリヒリするようなナンバー。
エコーがほとんどかかっていないボーカルでこの技量。そして、後半「誰にも僕の声が届かないんだ。たとえ傷ついたとしても、誰にも届かなかったらそれってもう傷ついたと言えるのだろうか」と何度もくりかえす独白部分から涙ぐんでいるのにも着目。

彼のキャリアは長いが、以下の2役が有名である。

アナ・ケンドリックの出世作でもある映画ピッチ・パーフェクトのベンジー役。そして、ブック・オブ・モルモンの主役カニンガム役だ。

この3役に共通するのは、情けなくてコミュ障な青年という・・・ベン・プラットは11月19日に卒業することが決まっているので、今後はヘタレ役以外もぜひ見てみたいな。

11月21日以降はブロードウェイデビューのノア・ギャルビン、1月半ばからはハロー・ドリーで活躍していたテイラー・トレンチが登板予定なので、また情報をウォッチしていきたい。


ちなみにテイラー・トレンチのベン・プラットラス日のツイッター。この抱擁だけで・・・泣けるぜ。でも、ベン・プラットこのシャツ着すぎじゃない?

どのキャストからも目が離せない!

カンパニーがたった9名ということで、粒立っていた。
皆涙を流し、朗々たる歌唱を披露し、それでいてそこらへんにいる日常感を醸し出す演技力。ベン・プラット以外はしばらくオリジナルキャストが続投しているようなので、ぜひ会場で目にしていただきたい。

ジェアードとアレーナのインパクト

特にジェアード役のウィル・ローランドとアレーナ役のクリストリン・ロイドが絶品!


この2人は出番と曲が他のキャストよりも少なめ。ということで、出番のたびに全力歌唱でとてもパワフル。特に2人が揃って歌うGood for Youの迫力は圧巻。サウンドトラックで聞いていたよりももっと直接的に、お母さんのハイディ、ジェアード、アレーナにエヴァンが責められるような配置だった。

こんなに力強く責められたらそりゃ、嘘もつきたくなるような。。。

王子様?マイク・ファイストさま

未だかつてこんな完璧なロン毛がいただろうか?(いや、ない。)

2017年トニー賞助演男優賞にノミネートされたマイク・ファイスト様の魅力は何と言っても笑顔!そしてそのスタイルの良さ!ピュアな歌声!!

と思っていたのだけど・・・予想以上にファイスト様演じるコーナーはクレイジーで怒っていた役だった。
インタビューその他でいつもふわふわの綿菓子みたいな姿しか見ていなかったので、ヤクでいってしまったその姿に衝撃。このギャップ・・・!

保護者の皆様も主役

エヴァンの母親ハイディ役のレイチェル・ベイ・ジョーンズ(トニー賞助演女優賞ノミネート)、そしてマーフィー家の3名含めて脇をがっちり固められていた。もちろん4人とも劇中泣きます!

本作は、SNS時代の孤独というメインテーマの他にも、家族のあり方、親としての悩みも大きなテーマの一つ。1曲目が母二人のデュエット、最後の曲もエヴァンの母ハイディの独唱など、親世代のナンバーが多い作品構成にもテーマの重要性は色濃く現れている。

この現代家族の投影部分は出演者も繰り返し語っており、ラジオ番組でも「どの世代の人でもどこか自分に似た部分があると共感してもらえるような役ばっかり」と語られている。また、コーナー以外のマーフィー家の面々がインタビューされていたが、家族の空気を醸し出すためにみんなでピクニックしたり、サイクリングしたりして一緒に過ごしたらしい。テスト上演、オフブロードウェイと同じキャストで丁寧に作られてきた作品ならではだな。

「ディア・エヴァン・ハンセン」感想@MusicBox Theatre‎2〜クリエイター編

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