ミュージカル「アラジン」感想@ニューアムステルダムシアター

ディズニースキーであり、作曲者アラン・メンケン信者の筆者にとって念願のブロードウェイアラジン感想。一部ネタバレがあるので、観劇予定者はご注意ください。ストーリーや楽曲に対しての思い、実際の舞台ナンバー映像は予習編をどうぞ。

▽舞台映像動画を集めた予習編はこちら。

【NY予習編1】ミュージカルの予習 その1 アラジン

2017.08.27

王道エンターテイメント

2014年にブロードウェイで上演開始後すぐに劇団四季が輸入を決めただけあり、歌にダンスに魔法に漫才に、緩急自在の怒涛の2時間半だった。耳慣れた有名ナンバーに加えて、芸達者な脇役たちで固められたこれぞ、ブロードウェイミュージカル!!と心が満たされる。

入り口にフォトブースがあるので早めに行くとランプの記念撮影ができる。

外国人でも十分面白い!

子供もターゲットになっているからだろう、ミュージカルの説明部分も面白おかしく演出されていた。

例えばジャファーとイアーゴが魔法の洞窟について調べて、アラジンを潜入させようとしているシーン。スプーキーボイス(不気味な声)が予言めいたことを告げるのだけど、この声を登場人物2名がいじるいじる。その後のジャファーとイアーゴのコミカルなやりとりも含めて、大きな動作とお袈裟な表情で表現してくれるので、子供や外国人であっても何を言っているか十分にわかり、くすりと笑えるシーンとなっていた。
外国人に受けるようにするって、ある意味文字通り子供でもわかるような内容にすることなんだなという気づきがあった。

個性豊かな実力派の脇役たち

アラジン役のテリー・リアンとジャスミン役コートニー・リードについては、歌唱や身体性含めて大満足。加えて印象的だったのは、脇役たちの多彩さだ。話の説明部分、魔法もじゅうたんもない地味な部分をだれずに進行できるのは、脇を固める役者陣の実力と巧みな演出ゆえだ。

特に、イアーゴ役のドン・ダリル・リヴェラのファニーな演技とそれにそぐわない朗々たる歌唱、アラジンの盗賊仲間カッシーム役のスティール・バグハートのテノール歌手のような見事な歌声などなどは記憶に残っている。
観劇後の同行者との感想戦では、あの人のあのシーン本当に良かったよね!と次々出てくるような観劇体験だった。我を見よ!!というブロードウェイ役者の押しの強さ、層の厚みが実感できた。

ディズニーという義務

「僕たちは機械じゃないから疲れるし、不調な日もある。ショーは週8回もあるしね。でも、観客にとっては一生に一度の機会なのだから、100%のパフォーマンスを見せるべきなんだ。」というのは、主役アラジン役のテリー・リアンのラジオ番組でのコメントだ。

一緒に出演していたメリーポピンズ役のアシュレイ・ブラウンも「そうね。例えば誕生日とか、特別な機会に来ている場合だってあるんだから。」と答えていた。
ディズニー作品の場合は知名度・エンタメ性などの間口の広さなどから、客層も多岐に渡るだろう。ミュージカルを初めて見る観客、人生の特別な機会に来た観客、家族連れ、目の肥えたミュージカルファン、原作信奉者、ディズニースキー(筆者)などなど。

その多様な観衆の期待を裏切らないだけの作品、というディズニーにはディズニーのハードルがあるのだなということを実感した。知名度があるのでプロモーションコストは下がるが、その分盛り上がる大作でなければならないのだ。

1幕最後のフレンド・ライクミーではロケット花火、2幕最初のプリンス・アリでは客席へのリボンの発射など、随所に露骨な盛り上がり要素を入れていた。正直そこまで必要かな?と疑念を抱くほどくどい演出は、そんな義務感の現れなのだろう。(先日のヘドウィグ製作陣にぜひ参考にしてほしい観客への気遣い。)

そして、何が言いたいかというと、2018年2月スタートのアナ雪が楽しみ過ぎるということです。(結局そうなる

また、同じインタビューで「舞台に立って作品を届けられることがどんなに幸運なことなのか、常に考えなければ」というコメントも出ていたので、週8回100点満点のパフォーマンスができる役者でないと残っていけないブロードウェイの厳しさよ、、、(でも、今回はテリー・リアン、前半は不調そうで後半持ち直していたけど、、、)

主役テリー・リアンの魅力

予習の時点で塩顔イケメン具合にくらっと来ていたのだが、当日彼を目の前にして衝撃を受けたのはその身体能力! ダンスうまっ!!アンサンブルの誰よりも軽々踊っていたし、飛んだり跳ねたり、まさにコソ泥アラジンを彷彿とさせる身軽さ。

加えて、30代半ばでありながら、溢れ出る少年のピュアさ。オリジナルキャストのアダム・ジェイコブスに感じた野生児アラジンのワイルドさが鳴りを潜め、母を信じる純粋さが全面に出るキャラになっていた。
テリー・リアンは特徴のある声だが、決して美声というわけではない。しかし、歌唱能力とその身のこなしで目が離せなくなるような魅力があった。
このいつまでもこの人を見ていたいという存在感って、主役には欠かせないものだと思う。

ジャスミン役のコートニー・リードはオリジナルキャストが続投中。原作のフェロモンジャスミンと異なり、背も小さめでおてんばなお姫様という感じ。アニメ声でこれまた可憐に歌う。そしてボリューミーな胸元。そう、美少女巨乳ジャスミンが海のむこうで爆誕していたのだった。

サウンドトラックの鼻にかかる歌声が好きではなかったのだが、舞台を観るとメロメロになった。録音が悪いのか、サントラでは魅力が伝わらないと思う。歌がうまいのはもちろんだが、ところどころ裏返る声が絶妙。

大盛り上がりの観客席

オープニング曲アラビアン・ナイト、フレンド・ライク・ミー、プリンス・アリなどの豪華ナンバーが盛りだくさんの本作。

導入部は客席温度おさえ気味

言葉を汲み取れない外国人や普段ミュージカルを観ない層が多いせいか、始まってしばらく観客席のテンションは低めだった。
もちろん筆者はその間も、ワン・ジャンプ・アヘッドで建物を実際に飛び回るアラジンににやにやし、好みストライクすぎるジャスミンと女官の可愛みあふれる三重唱に目尻を下げ、大好きすぎる曲ミリオンズ・マイル・アウェイを涙ながらに口パクで一緒に歌い、打ち震えていた。

余談ミリオンズ・マイル・アウェイ

ミュージカルを通して観て、改めてこの曲の良さを感じたのでぜひ記しておきたい。

この曲は、映画にはないミュージカルの追加曲で、作曲神メンケン様が降臨した素晴らしいナンバー(恣意的な紹介。市場で出会ったアラジンとジャスミンが、追っ手から逃げ切ってアラジンの寝ぐらで歌う。

後半の有名曲ホール・ニュー・ワールドと対をなしており、同様にアラジンの問いかけで歌が始まる、ホール・ニュー・ワールドが魔法のじゅうたんに乗って空の旅をするのに対し、海の航海で自由を例えるなど、対比が明確に意識されている。

ここから一瞬で消え去って(vanishing from view)、新しい、自分らしい人生を始めるという歌詞は魔法を彷彿とさせるし、この一曲を市場の一角で地味〜にデュエットしているからこそ、後半の魔法のじゅうたんの華やかなシーンが引き立つのだということを今回改めて感じた。

海の冒険を夢物語として語り合った2人が、後半では魔法の力を借りて再開し、実際に夜空を飛び回るのだ。うーん、ロマンチック。

そして、なによりの萌えポイントは「(新しい自分を求めて)もしかしたら砂漠を行くのはなく、海を旅するかもしれないわね」と歌うジャスミンに対して、「じゃあ僕が乗組員をするから、君は舵を握っていいよ」と笑いながら言うアラジンなんすよ。王宮でがんじがらめにされていたジャスミンにとって、自分の意思を尊重してくれるこの部分がいかに嬉しかったかというのは想像に難く無く、、、

この、どうしてジャスミンもアラジンに一目惚れしちゃうのか、という映画では掘り下げていない部分を表現しているというのも今回の観劇で発見。自由でたくましいアラジンに魅せられただけではないことを、メロディと歌詞で表現されているのがツボすぎるんだよな。

やはり神曲フレンド・ライク・ミー

そんな遠慮が見え隠れする客席の空気をがらっと変えたのはやはりフレンド・ライク・ミーだった。ジーニーの派手な登場ナンバーであり、前半最後の大見せ場。

奈落を多用した人物の登場に、早着替え、マジック、瞬間移動、ディズニーの名曲たちのカラオケ、タップダンス、花火、となんでもありのシーンだ。原作映画だとジーニーの魔法で目まぐるしく色々なものと色々なジーニー笑が登場するこの曲を、プロジェクションマッピングなどに逃げず、物量で押し切っていたのは見事。

YouTubeでこの動画を何十回と見ていたので、何が起こるのかわかっていながら、、、もう本当に夢中になっていた。

2014年ジーニー役でトニー賞の助演男優賞を獲得したジェームズ・イアンハートは現在ハミルトンに出演中。今回のジーニー役メイジャー・アターニーはブロードウェイデビューでありながら、ちゃきちゃき動き回る若々しいジーニーを好演していた。

次々技を繰り出すジーニーに客席はあっと言わされ、最後アンサンブル総出のタップダンスは身を乗り出さんばかりに。終わった瞬間の客席の一体感たら無かった。うわんと会場を満たす割れんばかりの歓声。
いい作品だったなと印象づけるためにもインターミッション(途中休憩)直前の曲は強く押し出すのが定石だけど、ここまでの歓声で前半が終わるのは久しぶりだった。

その後は、各キャストが喋るたびにどっと笑いが起き、クライマックスに向けてますます客席のボルテージは上がっていったのだった。前半が丁寧に描かれている分後半は怒涛の展開で、あっという間に終わる感じに。特にジャファー様の退場シーンは、早着替え3連続とスモークでどさくさに紛れて一瞬で過ぎる。このにじみ出すやっつけ感…。

魅惑の魔法のじゅうたん

魔法のじゅうたんも仕組みについては理解していたが、目を凝らしてもワイヤーが見えない作りだった。ホール・ニュー・ワールドのシーンはうわーという嘆息が客席のあちこちで聞こえた。

筆者自身は思い入れが強すぎて、泣きながら観ていたので…もう…はい。曲もピアノとオーケストラの緩急がほんとたまらなくて、ミュージカル版アレンジも大好きなのだよな。

YouTubeで散々見ていたのだけど、星空をプロジェクションマッピングで表現することでスピード感が出ていたのが、生舞台の追加感想。

また、じゅうたんで心に残っているのは最後のシーン。ミュージカルの最後の最後になんとじゅうたんが再登場、2人が乗って見送る形で幕が下りるのだ。

サウンドトラックを聞いていた時に、最後の曲構成が気持ち悪いなぁともやもやしていたのだが、舞台を見て納得。失礼しました。
主役が歌わない謎のジーニーパートは2人がじゅうたんに乗り込む部分、長めの後奏と不自然にコーラスの音階が上がるラストは、じゅうたんの上昇に合わせた表現だったのだ。

圧倒的な王者の風格を見せつけ、ミュージカルは終了。ニューヨークへ来てこの作品を見られた達成感と相まって、筆者号泣。大満足の中、マンハッタン初日の夜は更けていったのであった。

公式グッズたち。個人的にはタッセルのキーホルダーが可愛かった。

この動画の最後に絨毯のワイヤーの仕組みがちょこっと出てくる。


奈落などが自動制御されている様子がわかる装置チーフのインタビュー動画。

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【NY予習編1】ミュージカルの予習 その1 アラジン

2017.08.27

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