劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」@自由劇場

どもどもケイです。2月のチェス・ザ・ミュージカル以来半年以上ぶりに観劇してきたので、感想を残しておきたい。

いやほんと、新型コロナが流行る世界線にいる身としては、2月にサマンサ・バークスの生ミュージカルを見られたのは奇跡としか思えませんな・・・(ラミンもいたよ!

そして明日11/24の夜9時までは購入可能で限定配信中!!劇団四季初の配信!
こちらも今観つつ感想を書いている。

ネタバレあります。

ロボット・イン・ザ・ガーデン

2015年デボラ・インストール著の小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」のミュージカル化だ。イギリスの小説なので、登場人物はイギリス人とアメリカ人、そしてちょこっと日本人。

劇団四季のオリジナルミュージカル

もうこれに尽きるのだけど、脚本・作詞・作曲・振り付け全部が、日本オリジナルの王道ミュージカルを観られる幸せ。

四季やホリプロ、帝劇がほぼほぼ輸入プロダクションが多い中で、これほどの投資をしてくれる団体は他に無いだろう。

諸々感想はあるけど、このコロナで苦しい中で挑戦を続ける劇団四季には感謝とエール(そして課金)を贈りたいなと思った。

キャスト勢の歌唱やダンス、そして舞台装置や照明などの作り込みも含めて、最高だぜー!と快哉を上げたかった。

内容の批評ができるのも、それだけの中身があるからなんだよね。まずそこを強く主張したい。

グッと掴んでくる冒頭

特に夫婦がすれ違って、タングとベンが出発していく冒頭がすごく好きだった。仕事に邁進する妻と、マイペースな夫、そして彼らの傷としてのロボットとの旅っていうテーマだけですごくグッとくるし、メロディラインがとても聴きやすい。

普通に涙が出たし、ここから大人向けストーリーのホロ苦でギュッとまとめてもらえるととても好みだなぁと思ったのだが、四季だからなぁ・・・と思いながら見ていた。

メインディッシュてんこ盛り

ロボットに仕事を奪われた労働者、夫婦のすれ違い、大切な人を亡くした男の癒し、人生に失敗したと思った人の立ち直り、子供の教育と次世代へのバトン、科学の横暴さ、ロボットと人との絆のあり方、秘密基地からの脱出冒険譚、バディとのロードムービー、ラブロマンス、女の自立、ネオ・トーキョー、影絵、同性愛・・・

天丼とハンバーグと、ステーキと、寿司とをずっと食べていたような、大変てんこ盛りの作品だった。

おそらく原作に忠実に作ったのかな?と思うが、どれかに照準を合わせた方が尺も短く、掘り下げられたのでは無いかと思った。

子供を意識したい、でもせっかくの長田脚本なので大人向けも満足できるもの、そして劇団四季らしいたくさんの世界を旅するような作品にしたい、そして原作のストーリーも破綻させずにいたい・・・

という思いを詰め込みすぎたような気はした。各世界に行って歌&ダンス→ドラマ→解決!と繰り返すので、構造を大事にするとダンスも削れないのだとは思いつつ、あと30分くらいシェイプアップできる道はなかったのかとは思った。。。

チップあげるねは反則だなぁ…

ちゃんと向き合うと泣いてしまうため、当日も気をそらして嗚咽は耐えたのだが、いつか止まる時はチップをあげるね、というタングのセリフはなんかもー涙という感じだった。

父のことを思い出さずにはいられなかった。もう、すぐそこに来ている別れと受け入れた本人から優しい言葉をかけられた時、どうやって返したら良いんだろうね。タングはオイル補充できて本当に良かったね。

こういうグッと来るようなシーンが散りばめられているので、よりてんこ盛り具合が惜しいというか。
てがみ座の「空のハモニカ」を観てしばらく動けないような、そんな深い悲しみと喜びを感じた体験があったのでよりそう思ったのかもしれない。

ハリスおばさんに花束を、風味

5月におすすめしてもらって観て、筆者至上上位に食い込む響き方をしたミュージカル「Flowers for Mrs.Harris」。

大切な人を失った主人公を描いた点と、最後、旅の途中で出会った人たちが花を持って集合したシーンでは、ハリス・・・おばさん・・・?となった。
偶然演出がかぶった形になるのかな?ハリスおばさんでは、花=出会った人々の絆と、おばさんの優しさが花となって人生を彩ると言う明確な演出意図があったけど。

今回は花はあくまでもガーデンの延長で、タングとタングを取り巻く家族の絆が全面に出ていたラスト。
主人公の立ち直りも比較的ライトに見えたので、一緒だぜ!!!とは思わなかったが、ハリスおばさんを観ていると、少し風味を感じたと思う。

子供が生まれることに帰結&ハッピー父母子供家族エンドは個人的に好きな展開ではないのだが、原作やファミリーミュージカルの側面を考えるとしょうがないのかなぁとは思った。

▶︎Flowers for Mrs.Harrisの感想はこちら

私はフリー!

個人的にいいなぁと思ったのは、途中に弁護士2人が高らかに歌い上げる「私はフリー!」。大人向けソングというか、同年代の女として最高だぜぃ!!と思ってしまうような、すごく上がったナンバーだった。
特に主人公の姉役の加藤あゆ美さんのキラめきというか。お父さんもだけど、サイドを固めている人たちが、ご本人も魅力的な人物なんだろうなぁと思わせるような人情味に溢れたベテラン配役だったと思う。

あと、ベンが振られるシーンが好きだった。心が弱い男の情けないムーブはツボなのよねぇ。

タングのパペット

最初は違和感しかないが、最後はもう可愛さに夢中になってしまうタング。
操る2人は常に中腰なので本当に大変だなと思った。タング=子供の象徴的な側面があるので、子供サイズである必要があるのだと思うが、役者さんは腰を痛めないようにお祈りしておきますね。。。

タングといい、ロボットのワンコと言い、役者さんが丁寧に作り上げているからこそ違和感なく観られるというか。リジーとか、あのワンコを愛おしげに撫でるとか中々の無茶振りだと思うのだよね・・・。
相手からは呼吸は返ってこないはずなので、よく考えると演じづらさはあると思うのだが、2人息ぴったりで作り込まれているのが伝わってきてそういうところも良いなぁと思ったのだった。

貼ってもらったガムテープを大事にくっつけているところが、なんとも泣かせるのだよねぇ。

なんでポンコツロボットが庭に現れたのか?

歌詞で何度も歌われている通り(あのフレーズはどうなん・・・という思いはありつつ)、観客それぞれが、なんで受け入れられないような不具合が自分の人生にあるのか?の答えを見つけて終わる作品だと思う。

ラストは、透き通ったような〜と歌いたくなるような、そんな旅の終着感があった(違う作品。

たくさんの広い世界を旅して、そして辛いことを乗り越えて自分のあるべき場所に帰ってくる。そういう王道作品ミュージカルを四季が制作してくれる安心感というか。

気合のライブビューイング

劇団四季初のライブビューイングということで、カメラワークが非常に凝った撮影となっていた。
劇場現地から観た身としても、違和感なく、作品としての迫力と面白さを損なうことなく映像配信することに成功していたと思う。
カメラワークやスイッチングが練り込まれていたので、撮影部隊もどれほどリハーサルしたん・・・?と空恐ろしくなる気合を感じた。

居間で劇団四季が見られるありがたみよ・・・。版権ミュージカルは難しいかもだが、金額も安いので他人にも勧めやすく、自分も見返しやすく。

今後もライブビューイングの継続を希望したいなぁと思った。