二月大歌舞伎昼の部@歌舞伎座

どもども。アカデミー賞の主演女優賞スピーチに感動したケイです。

すでに楽日を迎えていますが、歌舞伎座二月大歌舞伎を見てきたので感想を残しておきたい。
今年のテーマである歌舞伎について、順調に舞台を観に行っている。

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京鹿子娘五人道成寺@東劇〜初めてのシネマ歌舞伎〜

2018.01.28

前回からの進歩

いくつか書籍を読み歌舞伎の魅力について学んだ。友人に歌舞伎の話をする機会も増え、少しずつ知識が付いてきて楽しめるようになってきた。

ビジネスマンへの歌舞伎案内

元日本マイクロソフト社長によるビジネスマンという、金と時間をつぎ込む舞台とは対極にいる存在へ歌舞伎の魅力をアピールした入門書。疑問に思っていたことが、次々解説されており面白かった。


成毛 眞「ビジネスマンへの歌舞伎案内」 (NHK出版新書)

本書の魅力は内容もだが、その紹介手法である。別名、いかに推しに興味の無い人を、沼に引き摺り込むか読本。布教活動を実施している人は、とても参考になると思う。

くまどりんカードを入手★

古文と文化背景を理解するために必須のイヤホンガイド。イヤホンガイダーの必需品、くまどりんカード。これを入手した。

通常だと700円プラス保証金1000円が必要だが、このくまどりんカードで、ピッとすぐ借りて保証金のやり取りの手間要らず。公演後さっと帰れる。ちょっとした優越感だ。
しかもレンタル費用が1回700円から600円へと割引なのだ。7回見れば1回分おトクになるので、Tohoシネマズのシネマイレージカード並みのメリットがある。

イヤホンガイドの受付でお願いすると簡単な申込書を書くだけで入手できる。デポジット制で10回分と、15回分を選択できる。筆者は決意の15回を選択★

バラエティ豊かな4本立て

初めての歌舞伎座フル演目は、長かった。11時から3時半ごろまで、長くてあっという間の4時間半だ。そのうち休憩が1時間弱を占めるので、のんびり半日見ているような感覚だった。

新春駒高麗

高麗屋襲名披露期間中なので、華やかな舞のお祝い演目だった。3名の姫が登場し、もうもう目の前がぱーっと明るくなるような豪勢な衣装で舞い踊る。

背景幕に富士山が描かれており、最後は登場人物7名で富士の山形になるように並んでポーズを決めて幕切れとなる。
富士のポーズって何ぞ(^0^)
江戸ハイセンス登場やで(^0^)好き(^0^)

筆者には、特撮ヒーローものの決めポーズのように見えた(歌舞伎レンジャー!!。筆者の心の目には謎の荒野で、後ろに爆炎が上がっているのが見えた。見えたぞ。

話自体は、仇討ちを企む兄弟が遊郭に出入りするうちに、その遊女と恋仲になって別れを惜しむというもの。さらに2人の仇が、別途戦いの舞台を用意して正々堂々といざ勝負!というところで幕になる。
こういうインスタントに、ドラマ設定を作ってしまうのは計算高いのか大雑把なのか・・・溢れ出る世界最速感み。

▼新春駒高麗のあらすじはこちら
歌舞伎美人「二月大歌舞伎」

筆者が気になっている、中村米吉、中村梅丸のお二人が並んで舞っていたので、とろけそうであった。

幕間は遠足気分

今回は昼の部ということで、幕間にはお弁当をいただいた。他の方々のアドバイスにあった通り地下の木挽町広場で、お弁当を購入してみた。うーん遠足。そして残念ながら、これでは足らない(大食漢。筆者の体感覚だと、お弁当プラスおやつも必要だ。先生!バナナはおやつに入りますか!

なお、ビニールをカサカサさせながら入場しても大丈夫だった。客席を見渡すとお弁当以外にも、コンビニのサンドイッチやバームクーヘンなど各自思い思いのものを食べていた。次回は違うところで買ったものも持ち込んでみよう。

一条大蔵譚

実はうつけと思っていた大蔵卿が、切れ者でござったのお話。
松本幸四郎の主演作品なので、阿呆の幸四郎ときりりとしたイケ面幸四郎が両方味わえる作品となっている。てか、大蔵卿可愛すぎかよ作品。ニコニコして舞を真似てフラフラしている大蔵卿が、キュートを極めていた。

静御前が登場し源氏の仇討ちを誓う、という平安末期〜鎌倉の軍記物が好きならテンションが上がる作品。こういう借景のような大河ドラマを借りたストーリーテリングも歌舞伎の特徴だと思った。
それとも、シェークスピアと違って、自国の身近な歴史なので胸熱くなるのだろうか。英国の方々もシェークスピアの国王ものを見るときは、こんな気持ちなのか・・・。

冒頭のアイキャッチ画像にもなっている「ぶっかえり」が物語のハイライト。
袖を抜いて、拍子木の音を背景に階段を駆け上って、ぶっかえりを披露して、大蔵卿がポーズを決めて終幕となる。歌舞伎の様式美を味わえて大満足。でも最後にうつけに戻った大蔵卿かわいいよ。

暫(しばらく)

人生初海老蔵だった。市川家の歌舞伎十八番の一つ「暫(しばらく)」。現代語にすると「ちょっと待った!」とか「待ちやがれ!!」という意味になる。

イヤホンガイド先生「悪人が悪いことを使用としている時に、ヒーローがちょっと待てと出てきてポーズを決める、ただそれだけのお話です。」ざわつく観客席。ガチでそれだけの作品だった。最高かよ。

舞台上には、極悪人が実に極悪人らしい格好で15人ばかし並んでいる。そして地面に座らされる善人15名ばかり。イヤホンガイド先生「地面に正座して座っているのが、全員善人です。それ以外は悪人です。」先生、切れ味爽快すな。

そしていきなりクライマックスからスタート。3分クッキングもびっくりのサビからスタート。

もみあげが三つ編みのナマズ坊主や、むきむきの入道、謎の髪型の女ナマズなどキャラ立ちした悪役たちが次々を口上を述べると聞こえてくる。「しばら〜く」。聞き覚えのあるエビ様の声。何度か繰り返し、花道からエビ様登場!

ん?ガンダムかな?!(^0^)

2メートル以上の巨大な着物に埋もれた、海老蔵らしき巨体がズシンズシンと登場。顔が見覚えあるので、海老蔵だということがわかる。かろうじてわかる。60センチの高下駄を履いているので本当でかい。転ばないかハラハラした。

そして女ナマズは悪を裏切って、正義に寝返った。美味しいかよ。そして、おもむろに袖を脱ぎ始める海老蔵。4人がかりで袖を抜くのに時間がかかるのでーーその間善人たちがのんびり、舞台を一周する。

ん?この間は何かな?ガンダムの変形かな?!(^0^)

そして、やっと服を整えた海老蔵が口上を述べて、カッコ良く決めて幕が引かれるのだった。観客もやいやい盛り上がっていて楽しい演目。

井伊大老

そろそろ疲れたな〜と見始めたが、最終的に引き込まれて涙がぼろぼろと溢れた作品。今回の4作品の中で、余韻があって一番好きだった。
それにしても、演目は甘いの、次にガツンとしょっぱいメイン、ジャンキーときて、最後はホロ苦い抹茶のような絶妙な組み合わせですな。

舞台は桜田門外の変の前日、3月の桃の節句なのに雪が舞い散る不思議な日。娘を悼んだ雛飾りが一層寂しく、永別の予感が満ちる静かな舞台設定が、深く深く心にしみるのだ。

▼あらすじはこちらのサイトが詳しい。
帆足由美のヤッホーな日々

井伊直弼が愛妾相手に人生を振り返るのがメインのシーンだ。(本妻が遠く呟いて放って置かれ、愛妾相手に井伊大老が嘆いているこの封建スタイルは非常に引っかかるところがあるが取り急ぎ置いておいた。)

「この世に正しいことをしながら、埋もれているたくさんの人がいるのです。」
故郷を思わせる無垢な少女昌子の方から諭される井伊直弼。
後の世の知己を待つなというのだな?

この「後の世の知己を待つな」とは調べていると、勝海舟の「氷川清話」の一節と対句になっているようだった。オリジナルフレーズは「知己を千載の下に待つ」のようだ。

維新志士たちが、100年先の名誉と志を胸に己の正義に邁進している中、その知己すら待たずに何とか国の瓦解を防ごうとする井伊直弼・・・泣ける(;_;)

そのあと、まさかのラブロマンスパートに突入。来世での愛を誓い合う二人。そして「間違っても大老にはなるまいよ」というセリフで幕引きとなるのだ。
このほろ苦いセリフが見事だった。余韻がジーンと響くのだ。

ミュージカルとのエンディング比較

自分自身を貫くラストシーンは様々な作品があると思う。筆者がこの井伊大老を見ながら思い出したのは、2つだった。ミュージカルのレ・ミゼラブルと、同じくミュージカルのエリザベートだ。

両者とも西洋的な宗教観が元になっている作品だ。
レ・ミゼラブルでは運命に翻弄されたジャン・バルジャンが、最後神の国に迎えられて終幕となる。「誰かを愛することは、神の御顔を見ること」という歌詞は筆者が最も好きなところだ。
貧しい、苦しい人ほど神の御国が近いという聖書の教えを忠実に体現したエンディングだと思う。汝隣人を愛せ、のメッセージそのままなのだ。

エリザベートでは、「死」の概念を擬人化したキャラクター「死(トート)」と口付けて人生の終わりを迎えて終幕となる。最後の曲のドイツ語歌詞では、エリザベートは最後まで己を貫いたことを告白し、「死」とともに復活を誓って死を迎え入れる。
自由や愛、死などの概念を擬人化する文化に加えて、復活することに死の救いを見出す価値観が色濃く出ているなぁといつも思う。(日本版では宝塚では黄泉の帝王との永遠の愛、東宝版では真の自由がテーマになっていると思う。これも好き。)

様々作品のラストで西洋的な価値観だと、永遠の命や神の御心に行ってしまうなぁ・・・と時々感じていた。今回の井伊大老では、「現世で誰にも理解されないことを受け入れる」来世エンドという新たな発見があったな、と思った筆者であった。そう、仏教エンド。
じっと春の雪景色を見ながら、来世に思いを馳せる気持ちが身にしみた。

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三月歌舞伎@国立劇場

2018.03.10

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2018.01.28