新春浅草歌舞伎@浅草公会堂〜初めての歌舞伎〜

どもども。毎日納豆とミルミルとヤクルトとミヤリ酸を飲んで腸内環境の改善をはかっているケイです。

昨年9月ニューヨーク旅行からの課題、私が好きな舞台たちは私向けに作られていない(かもしれない)問題

ブロードウェイやバレエ、オペラなど西洋文化圏の舞台が好きだ。ただ、アジア人や黒人はどうしても「有色人種」としての少数の役しかない場合も多い。製作陣も演者も観客も、自分とは異なる人々だということを実感した2017年ニューヨーク秋。少し寂しくなった。

勝手に好きになり、勝手に観に行ったのに結果寂しくなるとは此は如何に。

そんなわがままな恋人のような状態だが、とにかく、自分に向けて自分の文化圏で作られた舞台は何か?を悩むことになった。
1つの解として日本の伝統舞台があるのではないか。

日本の伝統舞台についての知識と知見があれば、大手を振って好きなものたちに体力と財と時間を投入できる気がするのだ。
というわけで2018年は歌舞伎イヤーにしようと思う(突然の宣言。来年のお正月には、歌舞伎作品や歌舞伎事情の一定のノウハウが身についているに違いない。未来の自分に期待しよう。

はじめての歌舞伎

歌舞伎は古典なので、過去オペラにはまった時のことを参考にしようと思う。オペラの楽しみ方を習ったのは大学の授業だった。そして教授の思惑にまんまとはまってそのままオペラ沼へドボン。教授のオススメ勉強法は3つだった。

筆者が教わったオペラ勉強法

  1. とにかく実際の舞台に足を運ぶ
  2. 舞台のハイライトとなる歌を動画で予習する
  3. ガイドブックやパンフレットであらすじと見所、有名俳優の知識を得る

まず何をおいても実際の舞台を観ること。余談だがそのポリシー通り単位の条件は、出欠でもテストでもなく実際の舞台に足を運んだレポートとチケット半券の提出だった。
加えて、楽しむために重要なのが、舞台ハイライトの事前予習だ。ブロードウェイなどの予習と同様のことをするのだが、古典は独自の文脈での見所となる場合が多いので予習が必須なのだ。

見どころあらすじなどをまとめたガイドブックを1冊手元に置くのが、古典を楽しむ第1歩だった。


歌舞伎ハンドブック―歌舞伎の全てがわかる小事典

早速歌舞伎のガイドブックを購入した。

授業の教科書であり、オペラ鑑賞のお供だったガイドブックと偶然にも同じ三省堂のシリーズだった。古典は再演を繰り返すので、かなり前のガイドブックでも有効なのが面白い。

役者の名前問題

ガイドブックを読んでいて思ったのが、歌舞伎の役者名についてだ。とっつきにくさの一因になっていると思う。

筆者の混乱ポイント
・襲名で名前がずれて、誰が誰を指すかわからない問題
・多発する中村問題
・結局どのお家がどういう作品をしているのか問題

家系図は●代目としか書いていないし、顔写真は親戚で顔似ている…という感想しか抱けないし、この誰が誰だかわからないというのが地味にストレスであると思う。この舞台は自分のものだ感がないのだ。

役者名の他に、襲名しても変わらない名前を呼びかわすことはないのだろうか。タカラジェンヌはファンの間では学生時代のあだ名で呼ぶのが通例だが、このあだ名呼びが親近感がわくと同時に覚えやすくて大層便利である。あだ名だけに本人をよく表しているし、短くて呼びやすいのだ。(例:望海風斗→だいもん)こういう呼び名が歌舞伎にもあるのだろうか。この問題は引き続き研究して行きたい。

新春浅草歌舞伎

若手のイケメンが出ていて初心者にもオススメとtwitterで回ってきた舞台に行ってきた。


この日の年始の口上は坂東巳之助。「本公演は初めての方も多いと聞きます。初めての方は挙手お願いします。」人生初歌舞伎をアピールするため、おずおずと挙手。恥ずかしいけど主張したいオトメゴコロ。3階席の挙手は筆者のみ。平日だったのもあり、客席はほぼナイスミドルのお姉様方で占められていた。歴戦の戦士たちのかほり・・・

ちなみに浅草公会堂は3階席プラスオペラグラスで十分楽しめた。3,000円という値段も魅力的だ。

文明の利器!イヤホンガイド

どのウェブサイトをのぞいても初心者は絶対レンタルすべしと言われている、このイヤホンガイド。レンタル代700円。とにかくこのイヤホンガイドが素晴らしすぎてわーっとなった(語彙力。パンフを読み込まなくても理解できる、そうイヤホンガイドならね

役者の登場シーンでは「三番叟役は中村種之助」とすかさず言ってくれるし、「ここで幕が取り払われて登場するお囃子。隣の家で宴会をしていて音が聞こえてくる設定です。」と絶対台詞だけではわからない解説も入るし、「女房お早が引窓を巧みに操る、この幕の見せ場です」とハイライトの予告も入る。

わ、わかるぞ!歌舞伎がわかるぞ!(光の速さで調子に乗った瞬間

ということで、見ても理解できなかったらどうしよう?という心配は杞憂に終わったのであった。この非常に淡々と耳元で囁く声があれば、千人力だ。幕間では出演俳優たちがワイワイと作品解説もして耳福だし、新国立劇場のオペラやバレエもこういう解説があるといいのになぁ・・・と思った筆者であった。

なお、幕間でのキーワードを受付で告げるとステッカーをもらえるキャンペーンもしていた。

この・・・やっつけデザイン感がなんとも・・・(でも次ももらいに行く。左下はイヤホンガイド公式キャラのくまどりん。
ちなみに解説員さんのページにある他己紹介が地味に面白い。
▶︎イヤホンガイド解説員のプロフィール

肌になじむ感覚と驚き

ここからは初めての歌舞伎の感想をお伝えしたい。

筆者が見たのは第二部、「操り三番叟(あやつりさんばそう)」、双蝶々曲輪日記より「引窓」、銘作左小刀より「京人形」の3本だ。

歌舞伎は全幕を演じるのではなく、一部のみを演じるガラ形式が通例であるらしい。ハイライトを抜粋した1時間程度のお芝居とダンス・・・これって宝塚も一緒のような。以前から美味しいところ取りの構成を不思議に思っていたのだが(ミュージカルとして見ると短い気がする)、歌舞伎ルーツの構成なのかもしれないという今回の発見だった。

新春を寿ぐ舞台「操り三番叟」

1演目目の操り三番叟は2部構成だ。前半は能を基にした翁と千歳(せんざい)の舞。後半は人間マリオネット三番叟(さんばそう)とそれを操る後見(こうけん)の舞。

▽写真ありのプロによる解説はこちら
歌舞伎演目案内「操り三番叟」

吉祥の歌詞に乗せて、祈りを舞うのがとにかく自分にとって新しかった。「お正月」という季節感のある演目はもちろんのこと、「亀や鶴のように長生き」のようなポジティブ100%の舞台にびっくり。歌舞伎って堅苦しいかと思っていたけど、ハッピーさが溢れているような・・・。オペラが韓流ドラマのように俗っぽくて身近なのとはまた違う、喜びの表現感覚だった。

またハレの歌詞に合わせて舞うこと祈りを捧げるというのも、バレエなんかとは全く別の文脈だなぁとしみじみ感じた。種もみを模した鈴を使って種まきを舞うことで五穀豊穣を祈るってこれぞ農耕民族、というか。
主語が大きくて恐縮だが、西洋の文化はあくまで個が主体で自然や運命を擬人化して引き寄せる表現なのに対して、今回の舞は個が消えて自然や運命と一体となる方向性なのだ。

とにかく昨年感じていた寂しさを一掃するような、描かれている文化もテーマ肌身に感じてわかるぞ!平たい顔族の作品なのだな!と胸がじんわりしたのだった。

後見が糸で人形を操る演出も面白く、三番叟は常に中腰で飛び跳ねているので歌舞伎役者は身体能力も必要なのだなぁ。

義理と人情!「引窓」の美学

2幕目は「引窓」。これが少し長めで途中で一瞬自主休憩に・・・( ˘ω˘)スヤァ…。周りを見渡しても結構な人数が船を漕ぎ出だしていたので、3階席の異様な暑さも原因だと思いたい。

▽作品解説はこちら
歌舞伎演目案内「双蝶々曲輪日記〜引窓」

義理の息子と実の息子の板挟みになる母、義理の母を想って夫を思って涙ながらの嫁・・・まさにプンプンとくささ溢れる義理人情の話だった。Oh・・・醤油味というか、もうこってりすき焼き味・・・。幕間の解説では「義理と人情のミルフィーユや〜」という言葉も飛び出していた。

とはいえ1時間の間にここまでのこってり設定を練り上げる展開も、引窓の光を使った2回のクライマックスも巧みの一言。見せ場を作ってなんぼの歌舞伎魂を感じた。
出演者で唯一知っていた尾上松也は相撲取り役ということで、全身肉じゅばんの上に「ごわす」語尾。江戸文化はもともと好きなので、相撲レスラーを人気イケメン格闘家へ脳内変換するのはスムーズに実施できた。

ただ、途中で投げ銭でほくろが取れたりと江戸ハイセンス全開の展開なので(えっ・・・ほくろ取れた・・・?しかもみんな形見のほくろが取れて号泣・・・^o^)、義理人情にグッと胸が詰まりそうになってそのまま思いが迷子になるシーンが何度かあった。

女装美男子祭り

えー、えー、えー、1幕2幕となんとなく感じていたが、次の3幕「京人形」で開眼。歌舞伎は女装美男子の宝石箱やー
昨年蜷川幸雄版「ヴェニスの商人」で筆者を虜にした中村倫也扮するポーシャ。そう筆者は美少女も好きだが、女装美男子にも心踊るのである。

「引窓」では中村米吉演じるお早、元遊女設定の艶やかさが漏れる慎ましい姿にうっとり。3幕目「京人形」では、坂東新悟演じる京人形の精の遊女姿に惚れ惚れ。

そして何より1幕の後見姿がすでに気にはなっていたのですよ。主役の三番叟を操る後見役の美少年はどなた・・・?3幕では可憐な赤姫姿で登場の中村梅丸でした。姫の登場と同時にオペラグラスロックオン!

引き続き演目や見せ場、役者さんの実力も勉強して行きたい所存である。

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京鹿子娘五人道成寺@東劇〜初めてのシネマ歌舞伎〜

2018.01.28