どもども、食欲の止まらないケイです。この寒さに体が冬眠しようとしている。
東劇で上映しているシネマ歌舞伎に行ってきた。
生の舞台を1回しか見たことないので、シネマ歌舞伎はまだ早いと思っていた。空気感や大きさが分からず、臨場感を感じられなさそうだからだ。しかし、丁度読んでいた本に「京鹿の子娘道成寺」が出てきたのであった。
美少女とともにお姫様に目がない筆者、夢中になって登場するアイテムを眺めていた。
色とりどりの豪華な衣装、きらきらしい髪飾り、引き抜きでの早着替え、大蛇のウロコを模した打掛。その出典作品に何度も「京鹿子娘道成寺」の文字がのぞいていたのだ。ん?これはもしやシネマ歌舞伎で今かかっている作品では?
いよいよ今週末より『京鹿子娘五人道成寺/二人椀久』公開です!上映時間が続々と決まってきております!ムビチケをお持ちの方は事前のネット予約も便利です。上映劇場はこちらでチェック!https://t.co/P0QmTlxiez pic.twitter.com/HY9sbPZhQN
— シネマ歌舞伎 (@cinemakabuki) January 11, 2018
そういう訳で、歌舞伎デビューほやほやにしてシネマ歌舞伎デビューを果たすことに相成った。正式なアナウンスの期間は1月いっぱいだったが、2月以降も日に1回の上映が続くようだ。
▽歌舞伎美人「歌舞伎女方の髪・入門 第2回 飾りものにまつわる、珠玉の物語」
この白拍子の髪飾りは金属に加えて、紙と布で作成されているらしい。
姫衣装、たまらんなぁ。作中の花子は白拍子なので、ちゃんと烏帽子をつけて舞うところもツボだった。白拍子は男装遊女として、鎌倉・戦国ファンタジーで大人気です。
▽前回はこちら
京鹿子娘五人道成寺
理由は後述するが(後述も何もイヤホンガイドがないため)分からないことも多かった。貧乏シアターゴーアーゆえ、資金も保管場所も無いのでパンフ購入はしていない。していないというか、断腸の思いでいつも自分に禁止している。
もし石油王ならパンフとグッズを買い漁って、飾る保管庫を作って、ついでに劇場通りを作って、たくさんの海外カンパニーを招致して、作品を巨額の資金でプロデュースするのになぁ(ほとばしる夢。
シネマ歌舞伎は、作品の間間にインタビュー映像が挿入される形式だ。舞台裏もチラチラ映るので、楽しい。何人にも着せ替え人形にされている役者さんの姿や、忙しい本番の合間を縫って若手にアドバイスをしている坂玉さん、お互いに衣装を整えている中村兄弟などが映っていた。
筆者が驚いたのはタイミングを計ってカツラを出番直前につけていたことだ。バレエやミュージカルなどでは基本的に控え室でつけて、そのままだからだ。
▽歌舞伎美人「歌舞伎を支える仕事 第3回 かつらの技術」
カツラの土台はなんと銅板!ヘルメットやないか〜い(^o^)
舞台裏では扇風機やドライヤーも使って涼を取っていた。確かに、あれだけの重い衣装で踊るんだから相当暑いよなぁ・・・。カツラも重たそうだし、歌舞伎の衣装は服というより着ぐるみに近いのかもしれない。
▽作品解説はこちら
歌舞伎演目案内「京鹿子娘道成寺」
タブの「観劇+(プラス)」コーナーの見どころ解説がためになる。
wikipedia「娘道成寺」
作品の歴史と変遷が詳しく掲載されている。
歌舞伎演目案内「二人椀久」
娘道成寺とは対照的な渋い作品だった。二人が見つめあうと、ちょっとドキドキした。年齢も離れているにも関わらず、想い合う男女の見てはいけないところを目撃してしまったような気持ちになるのだ。
心細いイヤホンガイドなし
着席して思ったこと。
初心者ハチベエの助さん格さんである、イヤホンガイドがない!
今の踊りの意味、歌詞を解説してくださる方がいないというのは、なんとも心細かった。いわば喋る伝説の剣を失った初心者勇者の気持ちだ。
ただし、役者さんたちは所々にインタビューが放り込まれて、どの方が何を演じているのか理解できるようになっていた。
後半の二人椀久は、予習不足が前面に出た。なんか・・・二人がイチャイチャしているんだけど・・・切な( ˘ω˘)スヤァ
シネマ歌舞伎は予習が無いと辛いことが判明した。予習といえば、見せ場と曲、歌詞だ。
長唄の歌詞を予習したいが、古文である。ブロードウェイの予習はTOEIC向上に直結するのでモチベーションが上がるのだが、古文よ。いと憂し。
▽歌詞掲載ブログ
MJQ・日本文化を楽しむ会「二人椀久の歌詞」
読みても、読みてもいと難し。
5人ユニット作品
今回は新演出、坂東玉三郎と新進気鋭の女形4人と中村勘三郎が演じていた。元々の娘道成寺は1人で踊りきる作品だが、2人道成寺や奴道成寺が流行し、今回は新演出の5人での道成寺。
歌舞伎、自由だなっ!!
バレエで考えると・・・オーロラ姫って華やかで美しくてほんと素敵!じゃあ、2人出したらもっと素敵☆眠れる森の二人美女☆
ならないならない。しかも今回5人!2人はまだ鏡合わせなのだなぁという解釈も出来るが、それを5人に増やしてしまえというのがすごいと思う。
蛇になった時も5人。左上、おわかりいただけただろうか。
最近物議を醸した某アニメのごときキャスト表である。観客を沸かせてなんぼの歌舞伎魂が全開である。
※写真は東劇の壁面に掲載されていたもの。係員の方に確認したら「ブログ掲載も大丈夫です。むしろよろしくお願いします。」と仰っていた。素敵なお方。メトライブの椿姫の時に外の写真掲載を初めて知ったのだが、前よりも増えている気がした。合法素材探しは素人ブロガーの課題なので、ありがたや。
アスリートのような体
娘道成寺は女形の舞踊の最高峰の作品ということで、きらびやかさに満ちていた。お姫様好きの筆者のテンションも爆上げですがな。
日本舞踊わからないマンなので、まだ馴染みのあるバレエと比較しながら見ていた。
人間国宝である坂東玉三郎は60代半ば・・・60代半ば!? 基本的に中腰の舞踊、重たい衣装を軽やかにまとって、膝を緩やかに使いながら縦横無尽に動き回っている。10代の白拍子に見える華やかさとツヤ。これが人間国宝やで!となった。
前回も歌舞伎って想像以上に身体能力が問われるな、と思っていた。しかし、今回改めて役者さんの身体能力に驚嘆。
数十キロの衣装をまといながら、骨盤を立て続ける腹筋と骨盤底筋、柔らかな膝使いを支える大腿四頭筋とハムストリングス、ヘルメッドのようなカツラの頭をすらりと伸ばす脊柱起立筋、肩を引き下げながらも優雅に舞う手の元になる背筋群。
どうやったらその動きになるのか?と思うような動きとポーズの連続だった。皆様脱いだらすごい体なんだろうな。
美しい衣装の競演
金糸、銀糸がふんだんに使われた豪奢な着物と、どの瞬間も浮世絵のような美しい舞に涙が出そうだった。二つが組み合わさって、眩しさに目を眇めるほどの華やかさ。こんなにも美麗なものが、世の中にはあったのだな。しかも、5人もいたので鮮やかさもひとしおなのである。
バレエは体を見せる芸術だと思う。スカートが捲れても気にしないし、チュチュなども美しい足さばきを披露するための装飾だ。男性に至っては、もっこりも割れ目も見えるタイツを着用して筋肉美を強調している(王子たちの下半身履いていないように見える問題。
歌舞伎は衣装込みの美しさなのだなと思った。中腰やすり足で動くことで、衣装の形を保つことができる。滑るような膝使いにより、衣装が花のように広がる。袖からのぞいた白い手がひらりとひるがえる様は可憐だ。
感情表現などが見て取れるようになれば、もっと面白くなるのだろうなぁ。
WOWOWのシネマ歌舞伎
過去放映されていたシネマ歌舞伎の感想を簡単にこちらに残しておく。胸がいっぱいでどう表現するか迷い、WOWOW使い倒し記シリーズには入れられなかったのだ。
▽利用料の元は取れるのか?!WOWOW使い倒し記はこちら
野田版の現代歌舞伎
WOWOWでは明日5/5シネマ歌舞伎『野田版 鼠小僧』&『野田版 研辰の討たれ』を放送!なんと野田さんの最新作『足跡姫』も放送されるようです!
3作品まとめて観るときっと色んな気づきがありますよ…(°▽°)https://t.co/eC3SL2pnb9 pic.twitter.com/6kVtqrX2lq— シネマ歌舞伎 (@cinemakabuki) May 4, 2017
11月に視聴した「研辰の討たれ」、そして12月に視聴した「野田版 鼠小僧」。野田秀樹の脚本・演出、故中村勘三郎が主演の現代歌舞伎だ。他の出演者も筆者でも名前を知っているような大御所が出演していて豪華だった。
野田秀樹の舞台は「半神」と「エッグ」を芸劇で「逆鱗」をテレビで見たことがあるのみで、目下勉強中だ。特徴は高度な言葉遊びと、後半になるに従い引き絞られるように明らかになるような世界観だと筆者は理解している。その魅力は歌舞伎になっても健在だった。
中村勘三郎にアテ書きされた主役の研辰、勘太は、忙しなくて狡くて、でもどこか憎めないようなキャラだった。
マシンガンのように次々と繰り出されるセリフは野田作品でお馴染みのものだ。
見ていてしみじみ思ったのは、中村勘三郎はいい役者だなぁ、ということだった。歴史に名を残す大歌舞伎役者に向けて一介のサラリーマンがいうセリフではないのだが、とにかく全てがサマになってめっちゃカッコイイのだ。
また、間の使い方がとにかく巧みで夢中になった。コメディパートも多いのだが、ギャグを挟む一瞬の間に引き付けられてやまないのだ。
歌舞伎の役者道を突き進むことは、他ジャンルにも通じる舞台役者として大成していくことに昇華されるのだなぁ。生の舞台を見てみたかった。
特に心に残っているのは、鼠小僧の中盤である。勘太が鼠小僧になって見せようと言って屋根へ駆け上り、ばっと片手を挙げてポーズを決めるシーン。盆が回って姿が消えるまでの10秒以上、中村勘三郎は微動だに瞬き一つしなかった。その屋根を渡ってから姿が見えなくなるまでの間、一緒に息を止める筆者。シーンが終わると、くーっと思わず声が出た。テレビの前なのに拍手をしていたのである。
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