十二国記新刊!白銀の墟 玄の月その2(3・4巻感想)

twelve

どもどもケイです。ついに十二国記の新作が完結!!!!

発売日に読み終わって胸がいっぱいになってしまったため、取り急ぎの感想をアップしたいと思う。
普通にネタバレるけど、前回に引き続き考察というよりは魂の叫びだ。

もし少しでも読もうかなぁと思う人は、何も知らないままラストまで駆け抜けた方がいいです。ほんと。

1・2巻の感想はこちら。

切ないラストだった

もうさ、最後の最後にホワイト小野不由美くるのがさ、ずるくないですか??

十二国記の基本コンセプトは自助と希望。だから、力強いハピエンで来るかなぁとは思っていたが!いたがですYo!!!

キャリア円熟のなせる技というか、最近の小野作品の傾向として生活の中の感情を拾い集めるような描写が増えたのだろうなぁと思ってはいたのだけど(ホラー苦手すぎて営繕かるかや未読でネタバレ感想のみ集めているので、はっきりとこうとは言えないけど)。

3・4巻は切なかったよね〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

ラストのラストまでただひたすら、感動よりも胸が苦しくなるような愛しさと切なさと心強さを覚えたのだった。大切な登場人物たちとの別れもたくさんあったし。

今回はじんわり涙が滲んでしまったランキングを発表していきたいと思う。

切ないラインキング3位:水流の籠シーン

1・2巻でも驍宗様へ食料を流しているのでは?!と推測されていた籠を流す親子は、ビンゴでしたね。ただ、そんな流れ方してたのか〜〜!という感想だったけど。

名もなき少女が自分の大切なおもちゃを籠に入れるシーン、ぐっと来るよね。詳細は分からないけど、父が何よりも大切にしている習慣だからそれに自分も倣って、自分に出来る精一杯のおそなえをする。
きっと父自身も自分の親からそうやって思いを受け継いだのだろうというのが読み取れる。

それが結果的に驍宗様を救い出す天恵になるのだけど、少女と&驍宗様はお互いに知らぬままという描写がさ。

もう涙出ちゃうよね〜〜〜〜

その後李斎目線で、さりげなく鈴を剣につけている驍宗様の様子が出てくる。

ここがまた、涙ポイントだよね〜〜〜〜〜〜
お手玉は少女のお姉さんの形見でもあった訳で、小さな少女たちの文字通り決死の願いが天に届いたことを描写していた。その民たちの気持ちを無碍にしない驍宗様の姿勢が伝わってくる名シーンだった。

第2位:飛燕の死

まあこれは、シリーズ読み通しているどの主上の民たち(民たち言うな)も思うのだろうが、

ひ、飛燕〜〜〜〜〜〜(T_T)

それまでも何度も登場していた飛燕だけど、最後まで李斎を庇って傷を負っていく姿が、な、泣ける・・・。だって、李斎が隻腕でも戦えてこれたのって、飛燕がカバーしてたからでしょ?

たま&とらに引き続いて人気があったであろう騎獣が没してしまったのでした。

飛燕にとどまらず、前後のシーンで多くのキャラが亡くなってしまったのは悲しい限りでしたな。

そんなにハッピーばかりではない、という小野さんの世界観がよく伝わってくるシーンでもあった。さすが主人公が娼館に売り飛ばされてしまう異世界ファンタジー小説、十二国記。

第1位「去志はどうしておるかなあ」

淵澄の最期がなんともこの4巻で1番胸に残る死だった。孫のように可愛がっていた弟子を心配して、戦いの気配を察しつつも世を去った淵澄。

このシーン自体は園糸がラストに再登場する伏線だとは思うのだけど、それにしても彼の人生を思うと胸に迫るものがあった。また淵澄がいなければ去志の活躍もなく、泰麒が王宮に行くことも、雁から速やかな助力を得られることもなかった訳で。

ここでもまた、結末をしらない名もなき人々の命が、希望をもたらすことを描いているんだよな。

ロード・オブ・ザ・リングのフロドを信じて、アラゴルンたちがオークたちと戦うシーンもそうなのだけど。ローグ・ワンの設計図をレジスタンスへ届けるために、各自が持ち場で命を賭して役割を果たすシーンもそうなのだけど。

やっぱり1番好きな展開だし、オタクが好きな展開第1位みたいなところはある。

そういう意味では、切ないランキングからは外れているが将軍品堅のエピソードも心に残るものだったな。決して目立つ訳ではないが、部下を捨て駒にされて忠を捨てた人物。帰泉の最期は可愛そうだったね。
いぶし銀の存在感というか、過去のシリーズには出てこないような多様な人物がまた良い味を出していた本作だった。

斜陽を迎えている現代へのメッセージ

十二国記を迎え入れる世の中も18年前とは時代が違くて、少子高齢化や、伸びなやむ経済から無気力が蔓延しているように思う。そう、鳩の支配する王朝のように(鳩言うな。

経済的に行き詰まると、心の穴を埋めるようにファシズムが台頭して、強い為政者を求めて民主主義が自殺していく。戦前にたどった歴史を2019年の今、繰り返しているように思う。

そんな中で、一縷の希望に人生をかける民衆の様子を正面切って小野主上は描いたのだなぁと思った。思考を停止は何ももたらさない。一人一人があがいてもがいて、無駄にも思える道筋の積み重ねでしか未来は勝ち取れないのだと、ハッキリとメッセージングしていた。

ーー過去が現在を作る。
ならば、いまが未来を作るのだーーたとえ繋がりは見えなくても。

この言葉を受け取る同士がたくさんいるのだと思った。諦めるのはまだ早いと、勇気づけられた気がしたのだ。

テレビや新聞などマスメディアが骨抜きになり、政治追従になっているのは誰の目にも明らかだ。改めて、自助と不屈の蜂起を促す物語の頼もしさを感じる。
架空の国「戴」の御伽噺だと思うには私自身は歳を重ね過ぎてしまったが、このお話をまっさらで受け取る世代もあるだろうからだ。

泰麒の選択

あとは泰麒についてですかね、やっぱり。

大きくなられましたね、と。

彼の出した答えとそれに至るまでの様々な禁忌を考えると、本当に苦い気持ちになる。

同時に、お小さい頃から見守っていた民としては、た、たいきー!!!とその成長に涙せざるを得なくね? 気持ちはほんと女仙。

主との再会のやり取りも、もうなんかこのシーン読めただけでも生きてきた意味があると思う名シーンでしたな。驍宗様の「蒿里」呼びがねぇ・・・こう、愛情のようなものを感じさせてもう感無量でしたわ。

黒い鄒虞を見て泰麒を思い出す驍宗さま。そんなだから、ネット上では泰麒強火担の過保護パパキャラになってしまうんだyo!
ただ、今回自力で穴から出てきちゃって、今作も傑物感は健在。王様はラッキーぱないって、ご都合主義を逆手にとる小野主上のシニカルさも相変わらずでしたな。

女性のキャリア

出産を排して、女性が侮られる場合は必ず理由をつけて、開始当初からジェンダーバランスに非常に配慮がある十二国記。ラスト近くの李斎と夕麗の会話は、女同士の苦労を真正面から語り合っていたのが印象的だった。
物語上は(十二国はそもそもジェンダーの扱いの差が無い世界なので)軍属だからという理由だけど、これ現実社会の色々なシーンで当てはまるものだよね。

なぜ李斎が嘆いたりしないのか?必要以上に淡々としているのかーー?どういう思いで小野主上がキャラメイキングをしているのかを明確に読者へ伝えてくれたシーンだと思った。そして、最初の巻「月の影 影の海」がそうであったようにやはり、自立した力強い女性像を読者に届けたいという思いを受信したのだった。

泰麒救出と驍宗様の再登場は李斎がいたからこそ成し得たことだ。片腕を失っても折れない強さで、忠誠を誓う部下がたくさんいて、剣の腕前が立って、将軍としてのキャリアもある。そんな中年女性を主人公に据えての物語は、少女が主人公のシリーズ過去作よりもグッと重みが増していた。
受け手の自分自身が歳を重ねたことも要因だろうけど、背中を押される気がしたのだ。

正頼とか、耶利ちゃんとか、話は尽きないが長くなったのでこのへんで!

短編集に園糸と頂梁のその後は出てくるのか!?目下の関心はそこですな。
まさか主上がラストで堂々とラブをぶつけてくるとは思わなんだ。りょ、両想いやないかーい!!!!!最高かよー!!!!!

1・2巻の感想はこちら!