ミュージカル「RENT」の作者ジョナサン・ラーソンの自伝的ミュージカル「tick, tick, Boom!」を元に、彼の作詞・作曲・劇作の苦闘の日々をドラマ仕立てで描いた作品。
実際の映像を再現したと思われる「tick, tick, Boom!」の公演の間に、彼の生活の映像が挟まるような作りになっている。
監督は大人気作家にしてミュージカルのガチオタ勢リン・マニュエル・ミランダ御大。そして映像部分の脚本は「ディア・エヴァン・ハンセン」のスティーブン・レベンソン。
こんなん絶対好きじゃんと思いながら見始めた。
No Day But Today
最初からジワジワとずっと涙目だったのだけど、もう途中からじょびじょびになっていった。
RENT公演前夜に起こった彼の結末を知っているからこそ、彼の苦闘の日々が眩しく、そしてとても切ない。
人生の全てをかけて作品を作っていたこと、そして苦しい中でも友人と愛情を持って寄り添って生きている姿が描かれていた。
少し美化されて過ぎている気もするが、まさにRENTの伝えるI die without you(あなたがいるから生きていける), No day but today(過去も未来も他の道もない、今を生きるだけ)、そのままの生き方が映画になっていた。
最後の友人のセリフ「make a wish」がまた泣かせるのだ。実際に、トニー賞、ピューリッツァー賞を受賞し、彼はブロードウェイミュージカルの歴史を変える作品を世に送り出す願いを叶えるのだから。
ブロードウェイへの賛歌
ジョビジョビになったのは、同時にブロードウェイへの愛情が伝わってきたこともある。
作品が生み出されるまでと夢と生活の狭間で散っていく無数の人への寄り添い、それが伝わってくるようだった。
作中の要のシーンのようにアーティストは走り続けるからアーティストなのだろう。
コロナでクローズしたブロードウェイ、その渦中でのこの作品の公開は、ショービズに命を捧げる人々の魂を現したようにも感じた。
ミュージカル映画としても良質!
実際のtick, tick, Boom!の公演と、半生との交叉も見事だし、全体通じてナンバーが多くてミュージカルだし、ミュージカル映画としても完成度高かった。
絶対に良いミュージカル作品にすると制作陣の鬼のような気迫を感じた。
カメオ出演
本作の見どころの1つは、ブロードウェイ大御所のカメオ出演。私でも分かるレベルの大物がぼんぼん出てきてて途中笑ってしまった。まさにお祭り状態。
そして、同時に涙が出てきた。彼をいかにブロードウェイが悼んでいるかが伝わってきて。
また、最後の電話はソンドハイム本人の肉声とのことだった。年末にソンドハイムが亡くなったのも重ねて胸にくるものがあった。
芸達者なアンドリュー・ガーフィールド
主演のアンドリュー・ガーフィールドもさすがというか。どこか自暴自棄だが、愛嬌がありあくまで純粋なラーソンを好演していた。
エンジェル・イン・アメリカの主演の時に、単なるスパイダーマンではないんだ!(失礼)、と役者として実力を目の当たりにしたのだけども、歌もお上手なのね・・・。
英語版wikipediaを見ると、ラーソン役にアサインされた後でボーカルトレーニングを重ねたと書いてあって、努力の人なのだなぁ。
名作演劇「エンジェル・イン・アメリカ」は限定配信中!!
同じアンドリュー・ガーフィールド主演とのことで、時代的にも話的にもエンジェル・イン・アメリカのドラマが重なってきて、アンドリュー・ガーフィールドによる借景のような効果をもたらしていたと思う。
(彼はこの作品で、ローレンス・オリヴィエ賞主演男優賞ノミネート、トニー賞演劇主演男優賞受賞を果たしている。)
エンジェル・イン・アメリカは2022年2月7日まで予定でNT at Homeで配信している。
◆配信ページはこちら
(単発レンタル、または見放題サブスクで視聴可能。スマホアプリが便利)
夜中犬やWar Horseの演出家マリアン・エリオットのディレクション作品であり、2018年のトニー賞やローレンスオリヴィエ賞、ドラマデスクアワードなどのリバイバル作品賞を総なめにしている作品なので、ちょっとでも興味があれば見るのがオススメである(長いけど、面白くて飽きずに見られる。)
というか、私も見なければ・・・。