どもども、いつになったら花粉が終わるの。ケイです。噂のノートルダムの鐘を見て来たので感想を残しておきたい。
久しぶりのザ・ミュージカルに、会場到着の時点で幸せすぎて胸がいっぱいで泣きそうになった。やっぱり好きなものは好きだよね。
▼前回のミュージカルはこちら
KAATのホール(大劇場)は初めてなのだけど、かなり傾斜がきつく、座席間も離れているので、すごく見やすい。1階席の面積の割に、4階席まであるので、穴ぐらのような独特の雰囲気のある劇場だった。
ノートルダムの鐘
2015年にニュージャージー州ペーパーミル劇場で公演された作品だ。2016年に劇団四季が東京公演を皮切りにツアーを開始、今回は首都圏への凱旋公演だ。
『ノートルダムの鐘』横浜公演が開幕しました – https://t.co/CtlcK5HEQ3
— 劇団四季 (@shiki_jp) April 8, 2018
上記リンクに舞台写真があるが、巨大な鐘のセット、常に舞台上にいるクワイヤ(合唱団)の姿などが印象的な舞台だった。
ちなみにペーパーミル公演のカジモド役オリジナルキャストは、演出家としてもキャリアを重ねるマイケル・アーデン。筆者はtwitterつながりのミュージカル好きの方によって彼を知ったのだが、声がセクシーすぎやしないか?と思った。朝出勤途中に、鐘のサントラを聞いていると腰が砕けそうになるよ。
毎度おなじみのApple Musicには、ペーパーミル版も四季版のサウンドトラックもある。
涙だばー
終演後は追加チケットを取る衝動と戦うのに必死だった。好きな作品だろうなと思っていたけど、ほろ苦エンドに加えて、アラン・メンケンとステファン・シュワルツペアの破壊力たるや!好みまっしぐらや!
ヴィクトル・ユーゴー作品なので、思っていたよりも観劇後の後味がレミゼに近かった。
聖書のエピソード
冒頭のフロローと弟の話に、聖書の「放蕩息子」の話だなぁと思ったので残しておきたい。ルカによる福音書にある、イエスが語る中でも最も有名なエピソードの一つだ。
財産をもらった兄弟のうち、兄は真面目に父に仕えて、弟は遊んで使い切ってボロボロになって戻って来ると。弟を大歓迎して宴会をする父に、畑で働いていた兄が帰って来て文句を言うというストーリーだ。もちろん、聖書なので父は兄をたしなめて、失われた弟が戻って来たことを喜んで終わる。
▼「放蕩息子」の聖書文言と筆者のイメージに合う解説
聖書のメッセージをあなたに『礼拝説教 2014年2月9日「放蕩息子の父」』
▼wikiのわかりやすい解説
放蕩息子のたとえ話
映画から追加されている冒頭のエピソードは、まさにこの説話だなぁと感じたのだ。
隣人愛を描いた作品
初めて出会ったのは中学の時だったので、真面目なのに報われない兄!カワイソス!と思っていた。
今では、迷わないことの幸せや、他人と比べる心が引き起こす出来事を学び、弟にも感情移入ができるようになったのかなぁと思う。
他にもイエスを迎える姉妹の話「良いほうを選ぶ」や、群れを放っておいて迷子の羊を探す「見失った羊のたとえ」など、聖書の教えは時々ふと、理解できるようになったかもなと思うことがある。
昔の自分がこのミュージカルを見たら、どう感じたのかなと休憩時間に思いを馳せた。放蕩息子の兄の立場であるフロローについて、掘り下げられていたからだ。教会権威の中で「正しく」生き残り、信仰と愛を両立することができないフロロー。
涙ポイントの紹介
筆者がブロードウェイのミュージカルを好きな理由として、圧倒的な歌唱技術がある。主演から端役まで、音程のコントロールや肺活量、歌のアレンジなどが訓練を積まれていて聞き応えタップリなのだ。主演の飯田達郎を中心に、日本でも音楽で勝負するミュージカルを見られて幸せだなぁと思った。
引き続いて鐘の感想戦中!
カジモド役の飯田達郎は、低めの声と伸びやかさですごい迫力だった。
四季のクオリティは安定感があって、安心して見られる。#ノートルダムの鐘 pic.twitter.com/2TETsiVODo
— ケイ (@key_s1014) April 14, 2018
舞台の様子はちまたに溢れているので、特に涙が出た曲を中心に残しておきたい。演出ともどもネタバレしています。
ノートルダムの鐘(オープニング)
このオープニングだけで、一つの作品のようだった。1人の青年がスタスタ歩いてきて、装備とメイクを舞台上でして、体と顔を歪めて「カジモド」になる。荘厳なメロディと歌詞「答えて欲しい謎がある、人間と怪物。そこに違いはあるのかを。」が重なる。
ミュージカルならではの表現だし、メッセージが胸を貫いてボロボロと涙がこぼれた。
この主題の部分は、最後までずっとぐるぐる頭の中に残るくらいインパクトがあった。これだけで終わっても十分なくらい好きな部分だ(まさかの15分作品。
続く「陽ざしの中」へは、石丸カジモドでもアーデンカジモドでも他カジモドでもサントラを聞きすぎて、ヤー!!!とテンションが爆上がり終了した。好きな曲をミュージカルで見られるほど幸せなことはござらんな。
トップ・オブ・ザ・ワールド
サウンドトラックで聞いている時は楽しい曲だなぁと思っていたが、舞台ではウルウルほろほろ来た。ぐっと来たので、びっくりした。
鐘の塔の留まるカジモドと、流浪のエスメラルダ。世間から排除された2人の思いが通じ合うのと、鐘の塔の見晴らしの良い世界観がクロスして、サントラの時よりももっと切ない曲になっていた。
囲いだけのシンプルなセットだが、早朝の塔の壮大な風景がバーッと目の前に広がる。役者の演技力で、観客を屋上へ連れて行ってくれるのだ。
今の心穏やかな時間だけがあればいいのに。エスメラルダの心中を思うと、どうしても泣いてしまった。
奇跡もとめて
悲しい…泣く…。そう、自分は幸せにはなれないのだという絶望感…と打ちひしがれて見ていた。
しかし、近くの人があまりに激しく嗚咽していて(2階席に響き渡るヒーッヒーッ)、一瞬舞台からログアウトした。どん底に感情移入するのを防げたので、結果的にダメージの少ない観劇になって良かったかもしれない。
その後の解けた鉛をこぼすシーン含めてすごく嗚呼…無情…と思った(ヴィクトル・ユーゴー違い。だって、エスメラルダもカジモドも状況的にここまでで死んでるのでは……こっからは舞台創作のボーナスステージだよねと。前回の歌舞伎もそうだけど、こういう時にいつもそう感じる。舞台の優しさと救いを感じて、泣けるし好きだなぁと思う。
石になろう
石でできたガーゴイルたちに「あなたはもっと強いと思ってた」と言われるシーン。ああ・・・と涙が止まらなかった。
ガーゴイルたちは神のご意思であり、自分自身の良心だなぁと思っていたのだが、彼らから見放されたのだ。もちろん、カジモド自身が自分自身の弱さと向き合えなくて、自分自身を見限ったのだ。
ラストは…演出が過剰…?
ずっと、泣くー!と思いながら観ていたので、ラストの演出にあれ?と違和感は残った。勿論、ジーンと来て普通に泣いたのだが。
英語歌詞を確認していて、違和感を理解した。
英語→What makes a monster and what makes a man(なにによって怪物となり、なにによって人間になるのか)
日本語→人間と怪物、そこに違いがあるのかを
日本語、答え言ってない??「そこに違いがあるのか?いや、ない!」って言ってない!?反語!!
舞台上では、キャストたちがカジモドと同じ歪んだ体と顔のあざを表現しているので、目で見ても「違いはない!」、耳でも「違いはない!」と二重に意味を受信して、ちとくどいかもしれん?と思ったのだった。
個人的には、あっさりカジモド1人が戻る方が好きだなぁ。
一晩寝て、「見た目は全てじゃない」というメッセージではなく、「人は皆いびつな怪物で、だからこそどう生きるかが人たることを決める」というメッセージをとにかく明確に伝えたい演出なのだなぁという思いに気がついた。
出演者と音質
ピュアホワイトフロロー
ワンマンズドリームでフロローに出会い、キンダムハーツと各種ヴィランズでフロロー像をすくすくと育てた筆者は、今回のフロローをピュアホワイトだ!と思った。もちろん権力で弱者を搾取する人を即刻爆破したいという、基本スタンスは変わらないが。
どんなに苦しくても美しい心のエスメラルダには「美人」という若干の妬みが入ってしまうので、フロローの方が好感が持てた。教会以外に拠り所のない彼が、人間らしさだと開き直って肉欲に塗れるようなところなどだ。カジモドとの交流もどこか愛情があるように見えたのだ。
音質について
オーケストラを持たない方針転換について、議論がある劇団四季。今回はすでに各種レビューでもある通り、既存音源による伴奏だが迫力満点だった。
聖歌合唱は本人たち、舞台上から飛んでくるようだったし、オーケストラのそれぞれの音、弦楽器、金管、木管、そして鐘と粒だって聞こえた。
中途半端にシンセサイザーに置き換えた生演奏よりも、ずっと迫力があったと思う。これだけの機材で、これだけ会場を変えながら毎回音を作り出すのってすごくコストがかかる気がするが、それでも演奏者を抱えるよりもローコストなのか…。
良心的な値段設定
オールライブというミュージカルの醍醐味は減ってしまうし、コンサートホールで伴奏が無く指揮者もいないという舞台形式にも違和感があるが、正直この値段でこのクオリティで見られるのはありがたいと思っている。海外オペラハウスの引越し公演(チケ代B席1万円〜)には手が出ない庶民なので・・・。
もし石油王になったら、クワイヤと演奏はマイクなしで大人数!の公演をプロデュースするんだ〜。
役者によって大きく表現が変わるようなので、チャンスがあれば再度見に行きたいなぁと思っている。
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