ロイヤル・オペラ・シネマシーズン「マイヤーリンク(うたかたの恋)」@tohoシネマズコレド室町

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今年の駆け込みバレエとして、ロイヤル・バレエのマイヤーリンクを観てきた!年末年始にアンコールがかかるので、未見の方はぜひ!演劇的な作品なので、セリフが無い分海外演劇作品よりもダイレクトに楽しめるところがあると思う。

https://twitter.com/rohcinemaseason/status/1607930690733232129?s=20&t=mCFXdeuAgFeocQhcKJz6Aw

2022年12月29日に記事を書いていますが、後で見てわかりやすいように投稿日は観劇時のもので投稿しています。

▷前回のスティーブン・マックレー主演版の感想はこちら!

最後の平野ルドルフの表情が焼き付く

これを言いたくてこの記事書いたようなものだが、本当に、死に向かう直前の一瞬の平野さんの表情が最高だった。

マリーとルドルフのもみくちゃになって愛憎に引き裂かれそうなパ・ド・ドゥが終わり、拳銃を握って、マリーと目を合わせてうなづいて

ーーそしてマリーを一瞬見る瞳に光が宿った。

それまでずっと死んだ目をしていたルドルフが、最後に一瞬見せた安堵と解放感
その表情が、ここまで歩んできた平野さん自身の苦しみや、作品自体のメッセージと重なってドバッと感情の波が押し寄せるようだった。

いわゆる繊細ブロークンなルドルフと、小悪魔ファム・ファタールのマリーという路線からは外れていて、どうかな?と思っていたけど、このラストの踊りを観て、ああまたすごいもの観ちゃったなぁ最高!すごい人が身を削りながら見せてくれる芸術たまらん!という気持ちになって映画館を後にしたのだった。

いやぁ、本当にラストの二人の踊りは手を揉み絞りながらの観劇だったので、銃声が聞こえる頃には自分の息が上がっていた。

剛のルドルフ

平野ルドルフは少年の延長の繊細さで崩壊していくというより、王様感のある男性がそのまま正常の線がズレていくような剛のルドルフだった。

その分なんで狂っていくのかなぁと疑問だったが、そうあれがあるではないか、麻薬!

ということでヤク中系ルドルフだった。

健康的なマイヤーリンク

前回は観ててヒリヒリするような危うい感じだったけど、今回2幕終わりに思ったのは、なんだろ…すごく強ぇなぁというか。

2人とも全然死にそうに無い。この2人が死を選ぶのってどういう時なのだろう、と逆に先が気になる中盤だった。

1幕最後のフランキーとのシーンは、いわゆるレイプのシーンなのだが、壮絶リフトが数珠繋ぎで人体ビックリ展みたいになっており、マスクの下でふひ、ふひひと笑いが出てきてしまった。

もう平然と踊りこなしてるけど、見ていてすでに筋肉痛になりそう…

ピュアなマリー

なんでオシポワなんだろうと思ってたけど、2人の踊りを見て納得。

オシポワぐらいパワフルな人じゃ無いと平野さんを死に導いて行くには足りないんだろうな。

そんなオシポワは献身的なピュアマリーを演じていて、これまた平野ルドルフとセットでの説得力があった。平野さんのインタビューでも「結構考えているんですよ」という面白コメントがあったけど、ピュアなオシポワ結構好きだなぁ。

マクミランが拍手の中断を嫌ったのでプリパレーションやレヴェランスが無い拍手できない構成、激情とパートナーリングの正確さを両立させる必要、最後ルドルフとマリー役は抱き合うくらい全てを出し合う、などインタビューも変わらず面白かった。

剛で陰気な主役ペアな分、ネラ(ミッツィー・カスパー)やフランキー(ステファニー王女)の社交界パリピのキラキラさとの対比が面白かったり、地母神モレーラ様(ラリッシュ伯爵夫人)が脇をがっちり固めていたり、大変豪華なお芝居だった。