新国立劇場「レオポルトシュタット」

leopoldstadt

新国立劇場25周年記念公演&第77回文化庁芸術祭主催公演であるトム・ストッパード脚本小川絵梨子演出「レオポルトシュタット」を観てきた!2023/1/6-12のナショナルシアターライブとセットで観劇を楽しみにしていた作品だ。

トム・ストッパード作品は、ナショナル・シアター・ライブ「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、シス・カンパニー「ほんとうのハウンド警部」に続いて3作品目、小川絵梨子演出作品は「暗いところからやってくる」、「Fun Home」、「1984」、「ほんとうのハウンド警部」で5作品目?おそらく。

世界で上演中の人気作品を、日本語で国内の劇場でリアルタイムに観られる幸せったらなかった。キャストの人数的にもセット的にも民営の劇団には厳しいものがある作品だと思うので、新国立劇場の意義が果たされた作品だったと思う。感謝したい。

2022年12月29日に記事を書いていますが、後で見てわかりやすいように投稿日は観劇時のもので投稿しています。

Twitterランドの皆様のお知恵をお借りして、本番2時間前から鼻血が出そうになりながら予習した。血縁関係は予習無しでも十分楽しめると思うが、個人的には誰が誰?と気になってしまったと思うので、予習してよかった。

独特のクリアさ

小川演出作品を多く観ているわけではないが、独特の透明感というか、クリアさがあると思っている。舞台空間の使い方、音響効果、役者の掛け合いの間、からくるのだろうか。今回のレオポルトシュタットでもそのくっきりさを感じた。

豪華な舞台装置

空まで続く大きな柱と、盆、長机、ソファ、テーブルセット、ベッドのシンプルな舞台装置だった。

ただ、舞台端は土で覆われて野の花が咲き、どこかお墓や荒野を思わせるような雰囲気だった。

盆含め、全面が古びたフローリング、柱は巨大だし、家具はアンティークまたはアンティーク風揃い、天井からはシャンデリアが2つ。

シンプルに見せかけて、なんかとても豪華だなと目がシパシパした。全体の造作がとても丁寧なのである。

また衣装メイクも、時代に合わせて最初はバッスルドレスから始まり、カツラや服なども頻繁な変更。これは当日の裏方スタッフ含めて運営も大変そうだが眼福であった。

キャスト総勢21名

新国立劇場ならではというか、これだけのキャストを揃えて約2週間お芝居かける費用とは。稽古含めた出演料だけでいくらになるんだろう。

チケ代と見合わない豪華な舞台で大変ありがたやという気持ちになった。

一方で万人受けするエンタメ作品ではないので、舞台後方やサイドは空席も目立った。こんなに良いものがかかっているのに、どうやったらあの客席を埋められるのか、本当に頭の痛い課題だ。

早口言葉みたいなセリフ

ユダヤ人、オーストリア、第二次世界大戦、経済状況などの用語が次から次へとてんこ盛り。予習しないと迷子だったと思う。

常に早口言葉みたいな長台詞が挟まるのだけど、余裕で演じる一部の役者さんの滑舌と演技力に、はわーっと夢中になってしまった。

一方で長台詞がひょろーっと流れていってしまったシーンもあったように思った。
ドラマが次々展開するというよりも、大きめの塊をコツコツと積み上げることで大河ドラマとしての重みを出す作品だと思うので、もっと叩き込んでほすぃ!みたいな感想を持ってしまうところもあった。

ラストは脚本の方が、悼みの気持ちになった

ラストシーンを初台のドトールで読んでいて、思わず本を閉じて目を瞑ってしまった。ああ、そうなのね、そこに行き着いて終わるのね。

登場して来た人物の大半が、アウシュビッツなどの虐殺で亡くなっている。ここまであや取りのようにくみ上げてきた話が一気に立ち上がるラストで、痛ましく悲しい気持ちと上手い話を読んだ興奮が混ざった奇妙な気持ちであった。

劇場で見ると、青く美しきドナウがオーケストラに引き継がれて流れ続けているせいか、思ったより感傷的でなく淡々とした終わり方だった。
装置の周りの土にも思ったけど、改めてホーンテッドマンションというかホラー味があった。

ハンナがピアノを弾き続けるのはト書きの指示なので、他の演出版でも陽気な感じで終わるのかな?というのは注目ポイントだと思っている。

ウィーンの負の側面を知らずにウィーン旅行に行っていたものとしては、なんとも身につまされるというか、今後青く美しきドナウを幸せ100%で聞くことはないのだろうなぁという気持ちになった作品だった。