ロイヤルバレエ「不思議の国のアリス」@TOHOシネマズ日本橋

鼻と喉のストライキに悩まされているケイです。急激に寒くなったので、風邪が流行っていますね。皆様大丈夫でしょうか。

念願のロイヤルバレエ「不思議の国のアリス」を観て来たので、早速感想をお伝えする!

予習編はこちらへどうぞ。

【ロイヤルバレエ】不思議の国のアリスの予習!

2017.10.22

現代のおとぎ話の行く末

楽しみにyoutubeでの予習をしまくっていたのだけど、予想よりもダークでごちゃっとした世界観だった。もちろん至高のダンサーに酔いつつ演出や曲などに感じたことを先にまとめておく。

なお、本作自体は2011年にクリストファー・ウィールドン振付け、ジョビー・タルボット作曲で新制作された作品。ロイヤルにとっては20年ぶりの全幕作品とのことだ。

あくまでレパートリーの一つ

うす気味悪く混沌とした原作の世界観と、「アリス」という小悪魔童女をこれでもかと前面に出した振り切った演出と構成だった。

ロイヤルのレパートリーにはすでにたくさんのおとぎ話や少女異世界トリップ、ロマンティックな恋愛ストーリーがある。


眠りの森の美女では、誰しもに愛されるうるわしのお姫様が王子様に求婚されて、結婚式には童話の主人公たちが駆けつけるというこう、少女の憧れを何重にもつつき回す鬼演出がなされていたり。


少女クララがおとぎの国で、金平糖の精になっておもちゃたちと踊る、これまた乙女の夢を詰め込んだようなクリスマスストーリーくるみ割り人形があったり。


ロミオとジュリエットでは、少年と少女がロマンティックでこれでもか!というようなイチャイチャダンスと燃える恋を披露する。

他にもシンデレラやジゼル、白鳥の湖、などなどロマンティックなおとぎ話、情熱的な恋愛譚など挙げればキリがない。
新制作にあたり単なるロマンティックな古典おとぎ話作品の2番煎じにしない、というロイヤル側の強い意思を感じた。べ、別にお姫様な作品を期待して行った訳じゃないんだからねっ。

(レパートリーの詳細はwikipediaロイヤル・バレエ団の項目をご参照ください。)

ダークな世界観と小悪魔アリス

2017/18シーズンのラインナップも、オープニング作品である不思議の国のアリスの後、12月にくるみ割り人形が上演され、ジゼル、白鳥の湖などが続いて行く。

特に、くるみ割人形は少女が王子を救って異世界にトリップし、お姫様となって1日の夢の中を楽しんで帰ってくる作品。そう、大枠だけだとくるみとアリスはほぼ同じストーリーラインなのだ。

しかし両者は連続で上演しても問題ないほど、別物に仕上がっているのである。

シニカルな現代に作品化された主人公アリスは、常にハートの女王の恐怖がにじむ世界の中で、途中で美しいドレスに着替えることもないし、異世界の登場人物たちと馴染むこともないし、ハートのジャックとの恋路を祝福されることもないまま、現代に帰ってくる、そんな話になっていた。

なお、振り付けについては下記のような講評を引用したい。なるほど。

素晴らしいのは振り付け構成が古典的であることだ。パドドゥ、パドカトル、デフィレ、花のワルツ、早足の庭師の粋なヴァリエーションなど、すべての要素に19世紀の振り付け家を想起させる。
一方でウィールドンのバレエには、すべてのエピソードが粒立った喜劇とドラマティックなひねりが効いていた。つまり、彼のバレエは伝統とすこぶる現代的なものが同時に味わえるものなのだ。(テレグラフ紙Alice in Wonderland, Royal Ballet, revieより)

なお、群舞にはスポットライトはほとんど当たらず、照明はアリス一人を引き立たせるものになっていた。アリスにしか目がいかないので勿体無いような・・・と思う一方、異世界に迷い込んだアリスと同じ目線で世界を楽しめるような照明設計になっていたと感じた。最後までアリスは異世界に馴染まないのだ。その孤立が照明で引き立っていたように思う。

脚色がファンタジーの王道すぎて胸熱

設定スキー&ファンタジースキーとしては、今回のストーリーにも触れておきたい。

ハートの女王を母親に、恋する庭師をハートのジャックに、白兎をルイス・キャロルに、庭のパーティーのゲストを芋虫に、、、などなど現実の登場人物を架空世界に投影するという脚色がなされており、異世界トリップものの王道をより濃く踏襲したストーリーとなっていた。

また、庭師の少年がタルトを盗んだ濡れ衣を着せられ、アリスの母親にクビにされた現実世界のエピソードが冒頭に挟まれていた。
不思議の国部分をハートの女王からタルトを盗んだジャックを救うとして描いたのだ。現実を反映したエピソードをおとぎの国で乗り越えて、現実に帰還する。これまた異世界漂流譚の王道である。この構成が明確な作品だと、筆者は大層もだえる。近年あまた出ているネット小説は、この構成が弱いのが納得いかない(突然の懐古主義。

オペラなどの古典作品に通じるような大混乱の最終シーンを経て、物語はなんと現代に帰還する。現代の女性が、小説「不思議の国のアリス」を読んでいた設定なのだ。これまたひねりが効いていて鼻血が出そうな脚色だ。

元のアリスの現実に着地してしまうと、ストーリー変更上どうしても母親との再対決が必要になる。この蛇足になりそうなシーンをうまく回避しつつ、現代の我々に通じるところに着地させることで、新しい古典作品を作りましたよ〜というロイヤルの主張がなされているのだ。うーん、胸熱。

ギミック盛り沢山の演出!

初見の観客の大きな関心事の一つが、あのアリスをどうやって舞台化するのだろう?ということだと思う。アリスはやたら大きくなったり小さくなったりするし、チェシャ猫はバラバラになるし、トランプの兵隊たちは・・・?
舞台装置ボブ・クロウリーと作曲家ジョビー・タルボットの技術の粋を尽くした演出だった。

打楽器まみれの楽譜

舞台を観て最初に感じたこと、ん?なにやら随分騒がしいな・・・? 通常のオーケストラだとたまーに出てくるのがパーカッションだ。!マークをつけるような強調部分に木琴、甘くキラキラ効果をつけたい部分に鉄琴、輝きの効果でウィンドベル、リズムを感じる場面でトライアングル・・・打楽器担当者は非常に目立つ美味しい役な代わりに、大部分がお休みなのである。

しかし、今回のアリスは最初から最後までずっと鳴りっぱなしである。しかも複数個同時に鳴っている。さらに、タップダンスの音もマイクで重なり、そもそも舞台上も大変な賑わいなのである。耳も目も忙しい。

幕開けのインタビューでは、オーケストラピットの半分が打楽器で占められていると語られていた。2018/19シーズンの新国立劇場バレエ団のオープニング作品にアリスが決まっているので、打楽器スキーとしてぜひこの目でピットを観てみたいものだ。

このパーカッションにより、時計の音や皆の気配などが多様に表現されており非日常感に浸ることができた。なお、この騒々しい音楽は賛否両論あるようだ。

2017/18シーズンの作品、Winter Taleが同様のタルボット作曲、ウィールドン振付の新作なので、比較することでこのパーカッションが作家の個性なのか、ファンタジーの計算なのか、よりわかりやすくなるのではないかと感じた。日本での冬物語の映画館上映は4月20日からだ。

舞台装置は豪華絢爛

ティムバートンやきゃりーぱみゅぱみゅを彷彿とさせるような、不気味な世界観の装置が多数だった。

そしてチェシャ猫が登場し、バラバラになるシーンではロンドンの観客から歓声が上がっていた。
https://twitter.com/frisky9/status/939242418167103488

また、プロジェクションマッピングも多用されており、トランプが投影されるのに合わせてトランプの兵隊が踊るなど、振り付けとも積極的に組み合わされていた。視覚的にも次から次へ目が離せない展開が多かった。

また予習時にインタビューであった通り、文字のメタ表現も多数散りばめられており、どこか架空の世界の話なのだということがすんなり入ってくるような装置になっていた。

トランプのスカートがマークになっているなど、衣装からも目が離せない。

個人的には、血と肉と赤子のおどろおどろしい女公爵シーンがとにかく恐かった。ファミリー向け作品として制作されたと紹介されているが、子供時代に見たら絵本押入れの冒険と同レベルでトラウマになるに違いない。

豪華なキャスト陣

ほとんど出ずっぱりで、無邪気でわがままなアリスそのもののローレン・カスバートソンをはじめ、この破天荒な演出・音楽を素敵な作品たらしめているのは、至高のダンサーたちだった。


ほんとバレエは素晴らしい身体能力を有した美男美女が、人生全てを費やした表現の結晶を拝めるありがたい機会ですな。眼福。アリスとジャックのパドトゥは、アリスが宙に浮いているみたいだし、どこを切り取っても美しいポーズばかりだった。


ミュージカル好きとしては、タップダンスはたくさんでした方が盛り上がるんでないの・・・? タップ音出すぎでねぇの・・・?とやや疑問に感じるシーンもあったが、バレエダンサーであるスティーヴン・マックレーが踊るタップはこれまたファンにはたまらないのだろう。

なお、キャストや舞台について中々紹介しきれないので、ぜひ下記ブログもご参考いただければと思いリンクを貼らせていただきます。

Balletholic(バレエホリック)
「バレエ@映画館:レビュー|『不思議の国のアリス』英国ロイヤル2017/18シネマシーズン」
本公演の全体感が掴める非常に参考になる記事。

la dolce vita
ロイヤル・オペラハウスシネマシーズン 「不思議の国のアリス」
各キャストについての潤沢な紹介が読み応えある記事。

明日もシアター日和
英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」@Royal Opera House, London
普段から日参させていただいているウェストエンダーさんの感想。

今日はこの辺で!

インタービュー動画の翻訳など、気合の入った予習編はこちら。

【ロイヤルバレエ】不思議の国のアリスの予習!

2017.10.22

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