BBC・HBOドラマ「ダーク・マテリアルズ」@U-NEXT

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2022年5月13日からナショナルシアターライブにて「ブック・オブ・ダスト ~美しき野生~」が上映される。ブック・オブ・ダストはダーク・マテリアルズシリーズの前日譚だ。

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観劇にあたり、テレビドラマシリーズ「ダーク・マテリアルズ」を一気観した。

ダーク・マテリアルズ

フィリップ・プルマンのベストセラー児童小説「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」「琥珀の望遠鏡」を原作としたBBCとHBOの共同制作によるTVドラマだ。
原作の小説は小中学生の時に出会って、幾度となく読んだ思い入れのある作品である。


ハードカバー版


最新の文庫版

ちなみに、大ファンにも関わらずこのTVドラマ化「ダークマテリアルズ」を見逃していたのだが、これはドラマタイトルと日本語タイトルが全く別の名前だったことも大きい。

日本での上映時は先行する翻訳タイトルに合わせるのが、視聴率を上げる鉄則だと思うのだが、U-NEXTさん・・・同一作品と特定できないぜ・・・(人のせいにする。

タイトルと刊行年まとめ
日本語
ライラの冒険シリーズ3部作
1: 黄金の羅針盤(1999)
2: 神秘の短剣(2000)
3: 琥珀の望遠鏡(2002)
※新潮文庫から文庫版あり

ブック・オブ・ダストシリーズ3部作
1:美しき野生(2021)
2:未刊
3:未刊

英語
His Dark Materials
1: Northern Lights(1995)
 ※北米など他の国だとThe Golden Compass
2: The Subtle Knife(1997)
3: The Amber Spyglass (2000)

The Book of Dust
1: La Belle Sauvage(2017)
2:The Secret Commonwealth(2019)
3:未完

映画・舞台
舞台:The London Royal National Theatre
 「His Dark Materials」(2003-2004,2部構成,参考)
 「The Book of Dust」(2021-2022)
映画:New Line Cinema「The Golden Compass」(2007)
TVドラマ:BBC・HBO「His Dark Materials」(2019~)

参考:Wikipedia「His Dark Materials

そう、日本版は「ダークマテリアルズ」のダの字も入っておらず、逆に英語版は「ライラの冒険」のラの字も入っていないため、古参のファンは「ダークマテリアルズ」=「ライラの冒険」とピンと来ないのだ!
本当はターゲットなのに、ドラマ見ていない人が大勢いる気がするぜ!

U-NEXTの月額プランで見放題である。
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ちなみに、我らがリン・マニュエル・ミランダ御大はテキサス生まれの気球乗りのリー・スコーズビーとして登場している。

物議を醸した過去の映画化

過去ハリウッドで映画化した際ににも、胸を踊らせて観に行った。そして、よく分からない大乱闘スマッシュブラザーズが始まった挙句、尻切れトンボに終わってしまった結末に大変怒ったものだ。

そのため、今回のドラマについて、原作との違いも気にしつつ、観ることになったのだった。

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(これが最短予習ルートかもしれない。でもシリーズの肝であるダストとパラレルワールドの概念が薄めだったはず。)

原作に忠実なドラマ化

今回のテレビドラマシリーズは原作に忠実に沿った話作りだった。その上で、悪役側である教団側の話を掘り下げていた。

特にシリーズ通してヒールとして登場するコールター夫人は、第2の主役といってもいい程の活躍っぷり。

彼女を通じて、ライラが知り得ない大人側の世界や事情が描かれていた。

冒険そのものが話の目的

多額の予算で豪華な画面作りが映える一方で、原作シナリオの難しさが少し気になった。

少年少女向け冒険小説は、冒険そのものが目的である。ワクワクするような場所へ行き、危険な目に遭いながらも魅力的な仲間たちとなんとか切り抜ける。

そのため、ライラがさらわれたり、事故に遭って転落したり、そしてさらわれたりする
敵の渦中に投げ込まれる行程が少々雑なのだが(それはロードオブザリングもそうだけども)、本を読んでいると気にならないが、ドラマだと気になる部分だった。

児童小説の実写化の難しさ

その上、本作のライラは口八丁が持ち味の主人公だ。
最強の武器「真理計」を持ちながらも、土壇場で発揮するのはその道具だけでない。憎まれっ子のハートの強さと、嘘つきであるトーク力なのである。

そのため、大人たちがライラにやり込められるシーンが多いのだが、今回大人の世界を深く描くことで、かえってアンバランスというか、コメディ的に教団側の世界がとても浅く見えてしまう場面があった。

とはいえ、面白くてワクワクしながら一気見したのだけど・・・。
以下は雑多な感想です。

グロくない安心感

ゲームオブスローンズやホイールオブタイムなど、最近のファンタジーは何やら血糊の消費量が多い。上がる血飛沫、切り落とされる手足、挟まれる拷問、吊るされる死体・・・

ナーロッパ(ウェブサイト「小説家になろう」に投稿されている小説のような、中世〜近代の世界観に、現代の衛生基準や人権観念、貨幣などをマリアージュした安心安全のファンタジーヨーロッパ)大好き民としては、そこのリアリティはあまり要らないのにといつも思っていた。

今回のドラマは怖いシーンはライラ自身も目を瞑るため、ほぼ血液は出ない。死体もあまり登場しない、ということで安心して見ていることができた。

ファンタジー!!

シーズン1の舞台は異世界のオックスフォード。ロケでオックスフォードが登場して、観ていて楽しかった。

とはいえパラレルワールドを描いているので、CGが多用されている。人間の片割れであるダイモンや、飛行船、魔女たちなど、作中の様々なファンタジー要素が当たり前のように登場する。

教団やコールター夫人などの衣装も凝っていて、楽しかった。

ファンタジー最高!ふー!!ワクワクしてずっと見ていたかった。

真理計薄いな!?

真理計といえば、黄金の羅針盤(ゴールデンコンパス)の呼び名の通り、懐中時計のようなぷっくりとした大きめの円形のシルエットを想像していた。この点は、映画版の方がイメージに近かった。

ドラマ版の真理計は薄型かつ正方形で、大変持ち運びやすい形状となっていた。この形どこかで・・・そう、iPhone。
ポケットにも出し入れしやすく、確かにこれぐらいポータブルな形でないと、ライラも冒険できないわなという納得感はあったものの、薄いな・・・スマホだな・・・と見るたびに思った。

イオレクの決闘シーン

戦闘描写をマイルドにするためだと思うけど、鎧をまとった熊イオレク・バーニソンの重要要素が削ぎ落とされていたのが悲しかった。

作中人物で一番好きなのだよ、イオレク(熊。

アスリエルヴォイかっこいいな!?

アスリエルヴォイ(アスリエル卿を演じるジェームズ・マカヴォイ)はさすがの存在感だった。彼のシラノもそうだったが、なんでこれ程グッとくるのかと思う。

野心家で粗野で、でも魅力的なアスリエル卿にぴったりの配役だった。
あと関係ないが、アスリエル卿のダイモンであるステルマリアは、マテリアルズのアナグラムだなと今回初めて気がついた。

アンドリュー・スコットも作中のキー人物で登場。彼のダイモンの声を当てるのは、フィービー・ウォーラー=ブリッジでドラマ版「Fleabag フリーバッグ」のペアが登場している。

シーズン2は我慢のとき

原作2巻の「神秘の短剣」にあたるシーズン2は、3巻「琥珀の望遠鏡」までの繋ぎパートの要素が強い。
作中人物みんなが思わせぶりなことを言いつつ、オチがつかない。

2巻までの現実世界に足を置いた世界観から一転、3巻からはハイファンタジーの展開を見せる作品なので、シーズン2までだと物足りない!となってしまった。

シーズン3がない状態で、このダーク・マテリアルズは中々おすすめしづらいかもしれん・・・と感じた。
(第1巻単体では完成度の高い小説なのだが、ドラマのシーズン1は2巻・3巻を先取りして描いているので、シーズン1のみでのスッキリ感がやや薄まる。)

シーズン3はよ

シーズン3で終了することが決まっているようなので、シーズン3は怒涛の展開を見せるものと思われる。

舞台も超楽しみ!

プルマンによる新三部作「ブック・オブ・ダスト」の1作目「美しき野生」が舞台化された。

演出ニコラス・ハイトナーはもちろんだが、舞台装置はボブ・クロウリー。バレエ「不思議の国のアリス」など、派手でファンタジックな衣装装置で馴染みがあるデザイナーだ。

昨年上演ほやほやの舞台を日本の映画館で見られるということで、とても楽しみである。