ナショナルシアターライブ「誰もいない国(No Mans Land)」@シネリーブル池袋

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12月〜1月いっぱい、シネリーブル池袋で開催されていたナショナルシアター・ライブ、アンコール祭。
今年は未見作品のコンプリートを目指して、2作品プラス見たことある1作品を観た。

ナショナルシアターライブの作品は、本国イギリスのWEBでも視聴が開始した。

しかし、映画館で作品と向き合える上に日本語字幕がつく、この日本のナショナル・シアター・ライブは何物にも代え難い体験だなと改めて思った。

https://twitter.com/ntlivejapan/status/1485059751189041152?s=20

ハロルド・ピンター「誰もいない国」

◆作品情報
上映時間:約150分
初演劇場:NY・コート劇場
作:ハロルド・ピンター(ノーベル文学賞受賞者)
演出:ショーン・マサイアス(『ベント』)
出演:イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート、オーウェン・ティール(「ゲーム・オブ・スローンズ」)、ダミアン・モロニー(『ハード・プロブレム』)

ストーリーが難解なのだが、下記トークライブの解説がわかりやすい。
◆ナショナル・シアター・ライブと新国立劇場のトークライブレポート

スター役者の豪華共演

イアン・マッケランとパトリック・スチュワートという2大大御所俳優による会話劇を楽しむ作品。
ニューヨーク公演を経てのロンドンの公演のようで、公演後のインタビューから2人の仲の良さというか、絆が伝わってくるようだった。

全然関係ないけど、X-MENのエグゼビア校長と、ヴィランでライバルのマグニートーの共演だなぁと思った。

全然わからなかった(^0^)

こう…上質な不条理演劇は、本当によく分からないんだな…という感想に尽きた。

何かを言っているようで、何か会話がなされているようで、ふわふわと情景が浮かんでは消えて・・・というのを繰り返しているうちに150分が終わる。

抽象画のような解釈の難しさがあったが、それでもなぜか飽きずに見ることができたのは、熟練役者2人中心の掛け合いの妙なのだろうと思った。

新感覚体験

むしろ、2時間半も意味があるようで意味がないような会話を体験し続けられるのってすごいというか。
会話は成立しているが展開や立場が目まぐるしく変わっていって一貫性が無いので、夢を見ているようだった。

または、1人の人の脳内を覗くようなそんな取り止めのなさがあった。観た直後は意味不明・・・?と思っていたが、1か月経って思い出すと、新感覚の良質体験だったように感じる。

ビシッとストーリーがあって感動した作品より、こういう理解を超えた舞台の方が何年かすると印象に残っていたりするのが観劇の面白さだと思う。

日本語字幕かつ映画館でないと最後まで完走出来なかった作品だと思うので、改めてシネリーブル池袋と主催のカルチャヴィルさんに感謝だと思った。

そびえ立つ舞台セット

1シーンもので、舞台セットは楕円を描いたそびえたつ高いブロックの壁だ。荘厳な屋敷の一室のようであり、どこか牢獄みのある閉塞感があった。

最近マトリックスを復習したので、ネオがマトリックスの中枢に入った時のモニタールームの永続感を思い出した。

このリアリティがありそうでどこか非現実なセットと、移り変わる時間の照明が、閉鎖感の演出に一役買っていたと思う。

コロコロと変わる関係性

シーンによって演技と関係性がガラッと変わったのが特に面白かった。ゲストでパトリック・スチュワートを翻弄していたはずのイアン・マッケランが、次のシーンでは呆然とさせられていたり、他の共演者も富豪の子息なのか、使用人なのか・・・?

ラストのインタビューで、登場人物皆が出て行こうとして、でも退場はしない、この場所にいたいんだとイアン・マッケランが回答していたのが印象に残った。

出て行こうとして出ていけない、その行き詰まり感が不条理演劇の特徴の1つなのだろうと思ったから。

最後、ここから話題が変えられないという永続性からNo Mans Landで締めるラストにグッと来た。