カム・フロム・アウェイ@Gerald Schoenfeld Theatre

どもども。年始早々インフルエンザをやらかしたケイです。自宅謹慎中なのだけど、こ、これは生けるサイバー兵器と言えるのでは・・・憧れの毒姫デビューだぜ・・・。

皆様におかれましても、加湿器や暖房など文明の利器を十二分に活用されますことを願ってやみません。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて年が変わってもまだまだ続いているニューヨーク旅行記。残り2作品プラス1つなので、なんとか完遂を目指したい。

【NYまとめ】7泊9日の全総括

2017.09.17

ドキュメンタリー「カム・フロム・アウェイ」

日本語にすると、「彼方より来たる」または「外からの人」だろうか。舞台はカナダの田舎町ニューファンドランド。9.11時アメリカの空港が全封鎖されたため、大量の飛行機と乗客を受け入れた実話を元に作られた作品だ。


映画化も決定している。

必死の予習

ディア・エヴァン・ハンセンのリピートと迷ったのだが、噂の演出をこの目で見たく前々日にボックスオフィスへ。運よく2階の安い席を買えたのは良かったのだが、そこからサウンドトラックを聴き込み、歌詞全てに目を通す突貫の予習が始まったのであった。

ストーリーがほぼ歌で進行するので、歌詞さえ押さえておけば概ね話についていける感じだ。音楽はカントリー調になっている。

▽あらすじは下記サイトが詳しいです。
カム・フロム・アウェイ” 新しいタイプのミュージカルが登場!
2016〜2017年シーズン注目作③ – カム・フロム・アウェイ

シニアな客層

印象的だったのが、観客の年齢の高さ。開始5分前になったも客席の埋まり具合は半分程度・・・あれ?皆様どこ行ったのかしら・・・?と思いきや、直前に入ってきたのはシニア、シニア、シニア。ほぼ白人、かつ40〜60代がメイン。テーマを反映した観客層のようだった。外国人入り混じる多国籍のアラジン、若者が熱狂するディア・エヴァン・ハンセン、家族づれのほんわかチャリチョコ、と見に行った舞台ごとに観客席がガラッと変わって、興味深かった。

目が20個ぐらい欲しい!

https://twitter.com/wecomefromaway/status/937759128826646533
写真の通り、舞台セットは簡素で場転はほぼ無い。中央に大きな回転盆があり、たまに回る程度。上手下手には木が生えていて、オケピ背後の舞台も木があらわになったセットなので、ガンダー(作品の舞台であるニューファンドランドの別称)の野性味をほんのりと感じられる。背景には木の壁があり、この木の壁はシーンによっては扉が開いて飛行機になったりする。

あとは、椅子とテーブルをキャスト自身で運んで、飛行機にしたり、バスにしたり、バー、学校、病院、カフェ、コックピット、、、と次々に場面が入れ替わるのだ。

初見だと話について行くことで精一杯で、誰がどんな動きをしているのか追いきれないまま1時間半が終わる。知らぬ間に舞台上に上着が出ていてそれを着ていたり、いつの間にか椅子が違う配置になっていたり、いつの間にか登場人物たちがカフェでくつろいでいたり。

とにかく動体視力を必要とする舞台だった。登場人物たちが計算し尽くされてた動きをしているので、演出を楽しむには何度も観る必要がありそうだ。

一人何役も、まるで落語。

11人で何十人もを表現するとのことだったので、無差別に次々人が出てくるのかと思っていたが違った
ニューファンドランド民、飛行機の乗客、その他通行人やエキストラとそれぞれに設定衣装があるのだ。それをタイミングよく、上着をうらがえしたり、脱いだり、出はけしながら出番までに用意して扮してセリフを言うのだ。まるで衣装かえありの落語のごとし。

パイロットや消防士の母、ガンダーのおばちゃんなど各人メインとなるキャラと、サブキャラを複数持っているようなイメージだ。全員でガンダーの場面をしているのに、一瞬のちには全員飛行機の人になっていて、その後には一部の人はガンダーの人で一部は飛行機の人で交流していて・・・と立場がくるくる変わりながら話が進んでいくのがマジックのようで小気味好い。

イントネーションも色々替えているということだったけど、聞き取れる英語力ではなかったので残念。。。。

もちろん歌うま

さすがにブロードウェイということで、皆様聞かせる聞かせる。さらに何人か歌の担当者がいる。特に感動した方に、終演後写真をお願いしたのだった。

まずCHAD KIMBALL。メンフィスのトニー賞授賞式でお見かけしてから、まさか彼の舞台を観る日が来るとは・・・と劇中密かに感動していた筆者。英語力がなさすぎて、思いの丈を伝えることはできず。でも終始にこやかで素敵であった。ビーサンでペタペタと夜の街へ消えていったのだった。


消防士の息子を亡くす印象的な役だったQ. SMITH。白髪のおばちゃんを演じていたのに、ご本人めっちゃ若かった!


お名前失念!日本から来たと言ったら、日本語で挨拶してくれました。

出待ちがたいそう少なかった本作。年齢層が上なのと、スターを作らない演出だからなのか。ちなみに、ここで一緒に写真を撮り合って仲良くなったチャイニーズのシアターゴーアーにリンカーンセンターの図書館を教えてもらったのでした。愛は国境を超える!

【NY3】リンカーンセンターの図書館で過去ミュージカル作品を見る!

2017.09.27

9.11.をどう描くのか?

終演後はスタンディングオベーションだったが、ディア・エヴァン・ハンセンの胸に突き刺さるような感動とは異なり、じんわり深く胸に残るような作品だった。
大げさな別離などは描かれず淡々と9.11〜15までを描いているからだろうか。あるいは、私自身が日本人であり、あくまで9.11.が隣国の出来事だからだろうか。

私にとっての9.11.

忘れもしない、台風の日だった。休校になった深夜、テレビを眺めていた母親に呼ばれた。「ニューヨークが大変なことになってるよ。」広がる空と煙を吐き炎上しているビル。何が起こっているかは分からなかったが、しばらくぼんやりと見ていると左から何か物体が横切った。飛行機だった。飛行機が左から入って来て、ビルの右側からは出てこなかった。音も衝撃も無い画面の向こう側。それが、2機目の衝突だと認識したのはアナウンスが入ってからだ。

当時は理解していなかった。ワールドトレードセンターが破壊された意味も、イラク戦争にアメリカが踏切らざるを得なかったことも、その後テロとの戦いが今に至るまで続くこともだ。

2度のニューヨーク訪問時に、ペンタゴンの飛行機激突跡の観光、メモリアルパークの散策、そしていくつかのドキュメンタリーなどを通じてやっと事の次第を理解するに至ったのだ。

客席の熱狂の意味とは

最後のカーテンコールでは、涙がこぼれた。「無償の思いやりこそ心を救いそして人を豊かにするものではないか」というどストレートなメッセージのミュージカルを作り上げる製作陣と、それを絶賛する観客たちという劇場でのコミュニケーションを感じたからだ。折しもトランプ政権に移行して、自国至上主義の横行している現状なので、なおさら感慨深かった。かの国でも大部分の人は平和を愛し、思いやりをもってすごそうとする市民なのだなぁとジワリと染みてくるものがあった。

日本に帰って来てからじっくり考えると、気になることもあった。演者も観客も劇中のエピソードもほぼ白人文化圏の出来事なので、宗教や人種という踏み込んだ融合についてはあまり描かれていないのだ。一瞬出て来るが、同じキリスト教徒なら聖書で話は通じるよね、という暫定措置のような一幕だった。

ドキュメンタリーとしての面白さ

ドキュメンタリーとして舞台を見る面白さがあった。
例えば、情報が広がる過程だ。食べ物よりも情報がほしい、電話で家族と連絡をとりたい。また飛行機で足止めされた人々も丁寧に描かれていた。新鮮な空気を求めてドアを開け、乗客が衝突し、自暴自棄になって歌や踊りや大盛り上がりをしたり。
ガンダーの受け入れ側の混乱もコミカルに登場する。食べ物やマットが足りなかったり、必要物資を買いに走ったり。ストーリーが積み重ねられる過程にリアリティを感じた。

また、セリフの端々にも取材のリアリティは光っていた。「飛行機が次々と来て、石油のにおいに満ちていた」「私が愛して止まなかった飛行機が爆弾になった」「別離が悲しいから、時間を止めてほしい」などだ。


意外だったのは、予想以上に笑いどころ満載だったところだ。サウンドトラックでの予習時から気になっていたタイタニック(アメリカンてんどんスタイル)、飛行機内で半狂乱の乗客がみんなウェーブをしたり、ゲイカップルの話がしばしば絡んで来たり、最後の酒場でニューファンドランダーになるシーンなど、ほんのりと心温かくなる交流が描かれていた。このお話自体が実話に基づくからこそ胸を打つのだろう。

おまけ「もしイタ」紹介

観劇中、もし地元民ならもっと胸に迫るものがあるのだろうかと考えていた。例えば東日本大震災について描かれていたのであれば、もっと自分の体験も織り交ぜながら逃げ場がなかったはずだからだ。
3.11.を描き被災者のために作られた演劇有名作品といえば「もしイタ」だなぁと思い出していたので、ご紹介したい。笑あり涙ありの名作だ。

▽わかりやすい概要情報
青森中央高校「もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら」

▽劇評
生き残ってしまった者たちへの鎮魂歌──被災地の高校演劇、『もしイタ』── 伊藤寧美

何度も再演されている作品なので、お近くで上演している時はぜひ見ていただきたいなと思う。