劇団四季「パリのアメリカ人」@シアターオーブ

どもども花粉症もクライマックスですね。ケイです。劇団四季の新作ダンスミュージカル「パリのアメリカ人」を見てきたので、感想を残しておきたい。
四季のチャレンジングな姿勢をビリビリと感じる才能の宝石箱のような舞台だった。

INDEX

  1. ブロードウェイの大型作品
  2. 世界的に有名な振付家とデザイナー
  3. 見所はやはりダンス
  4. セットと衣装デザインが豪華!
  5. キャストに注目〜酒井大と岡村美南〜
  6. 四季のチャレンジングな姿勢に乾杯

パリのアメリカ人

1951年の同名映画を有名コンテンポラリーバレエ振付家クリストファー・ウィールドン振付・演出でミュージカル化した本作品「An American in Paris」
2014年パリシャトレ座の委託作品として製作、2015年にブロードウェイへ進出して2017年にクローズ、現在はイギリス・ウェストエンド公演がスタートしている。そのプロダクションを劇団四季が輸入して上演している形だ。なお、2015年トニー賞は12部門にノミネートされ、その中の振付、編曲、装置デザイン、照明デザインの4部門を受賞している。

世界的に有名な振付家とデザイナーの作品

本作はイギリスロイヤルバレエ団出身で振付家としても成功したウィールドンの初演出作品。鬼振付と鬼リフトなんだろうなぁと思いながら見に行ったら、案の定、ラスト20分近くのバレエシーン。群舞と主役2人のパ・ド・トゥ。まるっと半幕分くらいコンテ寄りのバレエが入っていた。もうミュージカルというかバレエじゃんっ!


そして舞台美術・衣装はみんな大好きボブ・クローリー。英国ナショナルシアターのデザイナーで、リトル・マーメードやアイーダ、ワンスなどを手掛けるトニー賞常連の衣装・セットデザイナーだ。ちなみにアラジンのセットも手がけている。劇団四季は劇団ディズニーだと思っていたけど、劇団クローリーでもあるんだなぁ

バレエ「不思議の国のアリス」のペアやで!

ウィールドン振付、クローリー衣装・セットと言えばバレエ「不思議の国のアリス」!!!英国ロイヤルバレエ製作で、昨年からは日本の新国立劇場のレパートリーとなっている作品だ。筆者はこのアリスが好きでねぇ・・・。
ちなみにパリアメにも、アリスに出てきた人が走る姿勢のまま違う人に運ばれる謎リフトが出てきた。ウィールドン氏この振付気に入っているな。

▽不思議の国のアリスについてはこちら

新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」

2018-11-04

劇団四季や新国立劇場が作品を採用して、ウィールドンとクローリーは確実に日本のバレエ界にも大きな影響を与えているのだなぁとしみじみ感じた。

見所はやっぱりダンス

主役とアンサンブルがとトゥシューズとダンスシューズを都度履き替えて登場という、鬼畜の所業みたいな舞台だった。そんな短時間でポワント履けるの?怪我しない?!さっきあんなに踊っていたのに体冷えない?てかほんと怪我大丈夫?!?!と筆者はハラハラし通しだった(目線がお母さん。

長いダンスナンバーが続くというよりは、ミュージカルナンバー中の振付レベルが高いといった感じだ。グランバッドマンやアラベスクターン、コンテンポラリーチックな大きく体を使う動作が頻出する。しかし、バレエではない。そう、予想以上になんとも不思議な作品であったのだ。

ストーリー自体は3人の若者が1人の女性に恋をしてしまうという、落語もびっくりの簡単なお話。やはりガーシュウィンのトワイライト感いっぱいのジャズメロディーと、陽気な歌とダンスを楽しむ作品なのだろう。

セット&衣装に夢中

想定外だったのは舞台装置の作り込みだ。洒脱なパリの空気を舞台上に醸し出すために、プロジェクションマッピングとバトンによる釣り物を組み合わせたような独特の装置だった。お金かかってるなぁ・・・(感想が庶民


上記写真のような背景のパネルと、窓や鏡、フレームといった手元の大道具をフレキシブルに移動させて行われる見せる舞台転換。ダンススペースを確保するための工夫なのだと思うが、とにかく新鮮で楽しかった。
またアンティークな雰囲気の家具が好きな筆者にとっては、バーやスタジオの鏡などの道具がいちいち可愛くて身悶えた。


特に上記の写真のシーン、1幕のデパートのシーンはこの部分だけでも1万円の価値があったなぁと思えるような可憐な色使いと楽しいダンス、幸せな瞬間だった。

キャストを味わう

歌と踊りに焦点が当たった作品だった。登場して踊り出す、歌い出すだけでワクワクしたキャストさんを残しておきたい。

ジェリー役酒井大


まず驚異の身体性を見せていただいた主演の酒井大。休憩の時点で、彼の!彼のプロフィールは!?と探したところ、谷桃子バレエ団のソリストなのね。納得。
2007年にユース・アメリカ・グランプリ(ローザンヌと同じ、バレエ団に所属しないバレエダンサーの世界的な登竜門)の日本予選でスカラシップ獲得、2009年にはニューヨーク本選にも出場しているという才能あるバレエダンサー。体のダイナミックさといい、着地の柔らかさといいとにかく目が離せないのだ。
スタジオグランディア講師紹介に1番詳しい経歴が掲載されていた。

岡村美南

ウィキッドのエルファバノートルダムの鐘のエスメラルダなど数々の主演を演じている岡村美南がマイロ・ダヴェンポートにはキャスティングされていた。とにかくオーラがハンパない。


確かな歌唱力と存在感で、舞台を引っ張っていた。美しくて行き届いた歌声ってクセになるよね。
マイロ役では勿体無いくらいなのだが、ダンス重視ゆえに歌にやや不安感があるチーム編成なので観客に安心をもたらしていたと思う。

四季のチャレンジ精神に乾杯

とにかく歌に踊りにハイスキルが要求される作品だった。正直なところ四季版は作品の魅力を120%引き出せているとは言えなかったと思う。コメディーのはじけ具合といい、ダンスや歌唱力の凸凹といい、技術的にももっと花開くポテンシャルがあると感じたからだ。
ただ、そんな完成度になることは四季も百も承知だっただろう。それでもこの作品を日本へ持ってきたのだ。

ダンサーに活躍の場を!

筆者自身が感動したのは、ポワントを履いて毎日舞台にたつダンサーがたくさん輩出されるなぁという部分だった。職業としてのダンサーの活躍の場が広がるのはとても喜ばしいと思うし、日本の役者層の厚みと広がりに一石を投じるのは間違えないんだろうなあと感じた。

チャレンジングな演目に足を運びたい

また、四季は近年ディズニー作品の製作が相次いでいたので、おそらく集客で苦戦することが見えていたこの作品を持ってきたことにも敬服した。収益だけ考えれば、ディズニー作品だけを続けた方が儲かるのだ。
だからこそ、新しい観劇体験を作る信念をもとに、出演者に・観客に投資をしていく姿勢をひしひしと感じた。筆者が行った日は平日だったので、学生団体も観劇に来ていた。未来を担う若者がこの作品を見てその中からまた沼に引きずり込まれる人がいというのは、とても胸が踊るようなことだ。今後も四季に行かねばだなぁと思ったのだった。

▽今回はツイッターでも面白い取り組みをしていた。下記に舞台写真もたくさん掲載されている。

▽不思議の国のアリスについてはこちら

新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」

2018-11-04

▽ノートルダムの鐘についてはこちら

劇団四季「ノートルダムの鐘」@KAAT神奈川芸術劇場ホール

2018-04-22

▽ブロードウェイ「アラジン」の感想はこちら

ミュージカル「アラジン」感想@ニューアムステルダムシアター

2017-11-11