映画「Dear Evan Hansen」感想!

DEH

見てきた!散らかっているが、今日時点でもやもや思っていることを書き残しておきたい。すごくネタバレしてます。

とりあえず、漫画やアニメの実写化・2.5次元などで日頃訓練されていると、予算も潤沢で原作リスペクトがある今回の映画化は割とよかったなという感じだった。

日本語字幕!東宝様!

よかったなその1が、全編に日本語字幕がついて理解が深まったことだ(そこかい。
削られている歌はあるといえ、元の歌詞そのままの歌、そしてセリフ。自分の英語力だと、やっぱり母国語の字幕の方が、グググっと迫ってくるのだなぁと思った。

Requiemなど、シンシアとラリー、ゾーイのキャラによって、歌われている歌詞に違いがあったりなど、今回見ていて発見もあったので、日本で放映されてとても嬉しい。

ティーンたちに集中した演出

アラーナと、コナーの掘り下げがされた分、エヴァンの母ハイディと、コナーの両親シンシア・ラリーの親世代の曲と背景が犠牲になった印象。

特に両母の名曲Anybody Have a Map?と、Good for Youが削られた分は、名優エイミー・アダムズとジュリアン・ムーア両2名の演技力に頼るという仕様になっていた。

やっぱり映画映えする役者さんというのはあるんだなあ・・・と思いながら見ていたが、2人の画面支配力がある分、ベンプラエヴァンがちょっと浮いてしまうようなところがあったような。

母側のストーリーは希薄に

両親側の群像劇要素が今回削り落とされたことは、賛否両論あると思う。ただ、多分親世代の掘り下げもすると、視点が入り込んでしまう映画だとおそらくあと30分は必要だったはずで、悩ましいなとは思った。

For Foreverにりんご出てこない

このシーンはエヴァンが立ち上がるタイミングなど、舞台版を完全再現していた。机の上のりんごが!りんごを見て嘘を話し出すところが削られていた。
こういうちょっとした映画に向かないところが細かく調整されており、そこも好印象だった。

最後だけ、コナーが出てくるところがそうだよねぇとちょっとホロリ。
この後の歌もそうだけど、この映画は歌っているところと挿入されるシーンのバランスがとても難しかったと思う。

Only Usの途中のシーンは、エヴァンが嬉しすぎて結婚式の妄想をしているのかと思ってびっくりした。あと、You Will Be Foundの謎のアタック25みたいな映像…(正解はコナーでした!

Sincerely Meは最高でした

暗い話な分、原作ミュージカルでもみんな大好きSincerely Meは映画版でも楽しい感じに。

ここは映画ならではというか、あっちこっちで楽しそうでこのシーンだけでも映画館行ったかいがあった。
でも最後懐かしのDDLをしていたけど、もう1個か2個ロケして入れてくれてもいいのよとは思った。

ベンプラがティーンに見えない案件は結局どうだったか?

前評判を聞いていたけど・・・うん、そう・・ね・・・(遠い目。

ベンプラめっちゃ応援しているので、好意的に解釈すると、ものすごいダイエットしていたと思う。ひょろっとしたティーンを演じるために、彼らしくストイックに体を絞り込んだのではないだろうか?
その分、いつもふっくらお坊ちゃん感のあった顔が痩せていた。目の窪みなどが強調されて、より老けて見えたのではないか。

劇場で、彼の鬼気迫るパフォーマンス(本当週8回もしているなんて恐ろしさしかなった)を間近に見ているので、ベンプラが主演することに価値があると思っているが、確かに何も知らなかったらもっとピチピチナイーブなティーンに演じてほしいという気持ちはわかる気がした。(でももうそれなら舞台収録でいいとは思う。)

自分に近づいたと思ったDear Evan Hansen

特に映画のアラーナの演出変更は個人的にはすごく良かった箇所だ。シンシアたちの尺は犠牲になったが、彼女を描いた部分は大きな評価ポイントだった。

ブロードウェイやロンドンの客席で観ていたときに、私はこんなに感情移入しているが、これ、白人の人が白人のために描いた話なんだよな・・・と疎外感を感じることがあった。

メインは全部白人、主人公は男性、自分の話ではないのに感情移入していて、ふと我に帰るととても寂しく思ったものだ。自分のための話ではないのに、感動している変な人みたいで。

優等生の鼻につくキャラだったアラーナを、原作ミュージカルでもあった彼女の精神的に不安定な部分を掘り下げてThe Anonymous Onesでスポットを当てたのは、なのでとてもほっとした。(それでもアジアンは出てこないんですけど・・・)

最後の投稿も、自分が目立ちたいからという動機から、りんご園のお金をどうしても集めたいというのに変更されて、元のストーリーに復帰する仕様になっていた。

コナーの愛読書に「夜中の犬」!

コナーの好きな本リストで「夜中の犬に起こった奇妙な事件」が登場していてエヴァンが読んでいた。

いや、ただそれだけだけど、私この5年ほど、好きな舞台ツートップがDear Evan HansenとThe Curious Incident of the Dog in the Night-Timeなので、なんか嬉しかったというか。

コナーが生きづらかったのは発達の偏りによるものなのかなぁと察せられるものだったと思う。

失敗してもやり直せる

サントラ見ていて、恐れていたのがSo Big So Smallの後のストーリー展開。新曲も入っているし、物語が終わるまで長くね?これ、蛇足がついちゃうのでは?とハラハラしていた。

セットやストーリーの余白が多い舞台と異なり、映画ではエヴァンの服薬や嘔吐、ハイディの仕事風景など描き切る形になっていた。

その上で、エヴァンの謝罪と贖罪を描いていたのは、余韻の良さはないけどこれはこれでありかなと思った。嘘をついて大失敗しても自分なりにやり直せば、やっていけるという製作側の明確なメッセージだ。

エンドロール後のメッセージといい、製作側の主義主張が入った作品は(成功しているかどうかは別だが)個人的には好きだ。ミュージカル「ノートルダムの鐘」のラストに感じた感想に近い。

抽象的な舞台と明確な映画

明確に描き切る形だった分、なんでマーフィー家があんなにバッシングされるの?とか、エヴァンとゾーイがそんなにラブラブなの?とか、エヴァンの映像そんなウケる?とか、エヴァンの若干ストーカーぎみのところとか、エヴァンいきなりスピーチすることになったなぁとかストーリーの違和感が強調されていたところはある。

あと、余白が少ないので、エヴァンたちに感情移入しづらい部分は大いにあった気がして、舞台版をオーバーラップしないで見る勢の感想は、別途動員をかけて聞いてみたいところだと思っている。

最後にFor Forever来んのかーい!

ラストも舞台に近い仕上がりになってホッとしたのも束の間・・・そっちの曲くるんかーい!!!!!

あそこのセリフほんと好きなんだよ・・・今回ショートカット版の独白になってはいたけど、That’s enough.のあとこう、泣く準備もできてブワー涙腺出てきてて・・・!からの!A Little Close!!!

涙スッと引っ込んだよね。

分かるよ。最後のセリフが削られて「木を登っていって、今度は落ちずに上へと登っていくんだ →空をずっと見るんだ」の繋がりに違和感があるとか。
せっかくパセック&ポールに新曲作ってもらったし、コナーの曲だからそれで締める方が映画としてはしっくりくるとか。
でも、ラストをYou Will Be Foundじゃなく、For Foreverで締めるのがこの作品の全て!!!

これでFor Forever来るから心配していたけど100点だなぁ・・・泣く!と締めくくろうとしていたけど(1箇所でも好きなところ来ると、安心して満点をつけてしまうタイプ)、ここで、お?となり現実に復帰できないまま映画が終了した。

このラストへの叫びを書きたいがためにこの感想書いたと言っても過言ではない。
あと、やっぱり1番最初にハマった曲がDissapearだったので、DissapearがDissapearしちゃったのは残念でならない。

ブラスバンドにてGood for YouとAnybody Have a Map流れてた!(by 編曲アレックス・ラカモア御大)とか、結局So Big So Smallでビョービョー泣いたとか、インパクトあるオープニングにしたかったとはいえ惨めなシーン挟んでからWaving Through a Windowを歌うオリジナルを生かしてもっとこの曲大事に使って欲しかったとか、モリモリあるけどこの辺で!

▷【ロンドン9】ミュージカル「Dear Evan Hansen」感想
▷「ディア・エヴァン・ハンセン」感想@MusicBox Theatre‎1〜全体とキャスト編