ミュージカル「CHESS THE MUSICAL」@国際フォーラムホールC

chess

どもどもケイです。梅田芸術劇場がプロデュースするミュージカル「CHESS」を見てきたので、感想を残しておきたい。

生サマンサ・バークスが演じるミュージカル

生サマンサやで。これに尽きる。

ブロードウェイのプリティウーマン主演ヴィヴィアン役を終えて、ロンドンウェストエンドのFROZNエルサ役が控える彼女。
世界トップオブトップが!日本で!フルのミュージカルに出演してくれるって。

サマンサが演じるフローレンスのNobody’s Sideの歌があまりに尊すぎて、ぼうっとなってしまい、ここは・・・日本・・・? あれ、サマンサのしびれる歌唱を聞いているけど・・・これは・・・夢・・・?

と、あまりのド迫力に現実感を失ってしまい、白昼夢を見ているような不思議な気持ちになってしまった。
コンサートよりも作品として観ると、より尊みが増した。

みんなのアイドル・ラミン

ラミンも毎年来てくれているから、だんだん身近になっているが(勝手に、彼もトップ・オブ・トップなんだよね。
アンセムもそうだし、途中手を緩めて喉を労わりつつも、高音パンチを繰り出すところは魅せると言う流石の歌唱でございました。

やっぱりファントムというか、正統派王子様声だよね。

ラミンとサマンサのデュエットが聞けるのは日本だけ!!全然恋人には見えなかったけど!!!

気迫のアンサンブル

今回の功労賞は、シュガーさんもそうだが、アンサンブルさんたち!特に岡本華奈さんと思われる編み込みの方が、ダンスも押し出しが良くて目で追ってしまった。

おそらくリハーサルの時間をそれほど取れないスターたちの代わりに、フォーメーションを整えたり、装置を出し入れしたり、ダンスを披露したりと大活躍。
いずれも実力がある方々ばかりで、眼福だったなり。たたき上げの実力者で埋め尽くされる舞台ってほんと幸せ以外の何物でもないよね。

チェスの必要が・・・?

この作品のもやっと点は2つで、1つはチェスの使い方である。作品的に、チェスじゃなくても、ボクシングでも、もはや旧ソ連とアメリカなどの設定も表現されきれてなかったので、もはや勝負なら相撲でもいいのではと思った(流石に相撲はあかん、、、
なんでチェスなのか?チェスじゃないとダメなのか?(就活の面接官みたいな問い。
貧困から這い上がるために、元手が要らないスポーツだったと推測されるのに、そこを!もっと!ちょうだい!となった。

亡命シーンも、なんか、亡命なのか愛の逃避行なのか。

女性はセコンドと駒なのか?

そして最も致命的なのが、この時代と合わない作品のメッセージだと思う。アナトリーは女性をセコンド、亡命の道具、尽くしてくれる人として扱い、アナトリーの妻もまたモロコフに駒にされてそれを肯定している。

あ、あかん・・・Sixとか、&ジュリエットなどの過去の添え物・脇役としての舞台上での女性の役割を見直すトレンドがある中で、ど真ん中にあれだぞ・・・

ということは梅芸も、そして恐らくラミンも百も承知で、うまいことアナトリーをフローレンスへの真実の愛を貫くという設定にして、軟着陸。

また、ラストのシーンまで、フローレンスと妻がスターの1人として前面に出る演出になっているので、チェスの駒感は幻滅してストーリーや演出も良く分からなくなるが、1番避けたいメッセージングを避けたのかな?と感じた(その分モヤモヤは倍化した。

アナトリーが何をしたいのかよく分からない人になってしまったのは、ここが原因のように思った。

アンセムは名曲?

特にアンセムが、妻と祖国を捨てる不倫男の残念ソングだったのが、今回の発見(ラミンはコンサートでアンセムを目玉として歌っていたので、勝手にアイーダ的なサムシングかと思っていた。

朗々と悔恨と想いを歌い上げれば妻を捨ててもいいのか?セコンドとして支えてくれる女性を利用して、捨ててもいいのか?てか、そもそもセコンドでいいのか?
こう、日々立場や封建社会を呪いながらも権利獲得のために踏ん張っている者だと、ここ首を縦には振れないのだよな。

アナトリーを見ながら、最後の無言の人形のような妻の元に帰る姿は、ピンカートンだね・・・と思った。蝶々夫人の。

万年オペラ初心者なので(オペラの世界観はさらに古いので)、ここら辺折り合いつけながら見るけど、なんでこの作品を今上演するのか?というのは、常に考える必要があるのだよなといつも思う。

とはいえ最高だった

紛れもないミュージカル界のスターたち、実力ある日本人キャスト、日本では無名の作品(みんなラミンのおかげでアンセムだけ知っている)、オーケストラも充実の人数、脚本もカットしてほぼコンサートに全振りした演出を含めて、今日本で見られる最高の作品だったのは確かである。

特に衣装と振り付けはグッと来るものがあった。脚本が脚本なら沼へドボンしてそう。

VIPゲストも多く予算に制約がある中で、日本でこの作品を1万ちょっとで見られたなんて幸運以外の何者でもないと思うので、梅芸さんの方向に感謝の念を飛ばしておきたい。
あと感謝はなんの足しにもならないので、今後も継続してお金も捧げていきたい。