忘れられない涙〜戦火の馬〜(ナショナル・シアター・ライブ アドベント企画)

Lilyさんによる「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)10周年記念企画 Advent Calendar 2023」参加させて頂きます。12/7担当のケイです。
素敵な企画をご一緒できて嬉しいぜ!!

そしてナショナル・シアターライブ10周年おめでとうございます!!
人生を豊かにして頂いている無くてはならない存在だ!

たくさんの思い出があり選びきれないのだが、私がナショナルシアターライブを見にいくきっかけになった1つ、戦火の馬in恵比寿をご紹介したいと思う。

そう、恵比寿ガーデンプレイスでナショナル・シアター・ライブが上映されていた時があったのだ。
▷NTLive『戦火の馬』と『ザ・オーディエンス』のアンコール上映が決定

こちらはLilyさんによる「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)10周年記念企画 Advent Calendar 2023」の参加記事です。「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)との思い出」をテーマに皆さま素敵な記事が公開されますので、ぜひご覧ください。
▷「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)10周年記念企画 Advent Calendar 2023」

▷ナショナル・シアター・ライブの上映作品リストと見た37作品の一言感想はこちら

戦火の馬 in 恵比寿の思い出

2017年2月、恵比寿ガーデンプレイスにあるYEBISU GARDEN CINEMAでの「戦火の馬」と「ジ・オーディエンス」のアンコール上映を観に行った。

「フランケン・シュタイン」で開かれたイギリス演劇への扉

さかのぼること数年前、ナショナル・シアター・ライブにて2015年上映の「フランケン・シュタイン」、「宝島」を観て、私は初めて海外演劇に興味を持った。

それまでブロードウェイに行ってミュージカルを観たことはあり、国内の小劇場演劇はちょくちょく観に行っていた。ただ、海外の、しかもロンドンの演劇なんて縁もゆかりも無かった。そもそも海外情報を入手する英語力がなく、そして周囲にはそういう楽しみがあることを知っている人も、ましてや教えてくれる人もいなかったからである。

いつも演劇情報を参考にさせていただいていたブロガーさんがナショナル・シアター・ライブの「フランケン・シュタイン」を激推ししているのを知って、ふらりと観に行った。

グ、グロイ・・・そして怖い・・・

なんか凄いものを見たなという衝撃で、とりあえず続く作品のうち「宝島」を観にいくことにした。この時点でも「ナショナルシアター」が何かはあまり認識しておらず、ただ自分の好きなファンタジーなら楽しいのではないかと思ったからだ。

できるだけ全部見に行きたい、という姿勢になり、最終的に念願のロンドンに行ったのはここから数年後のことである。

戦火の馬を観るぞ!

そんな2017年の年明け、評判を聞いて常々観て見たいと思った2作品、ナショナル・シアター・ライブ「戦火の馬」「ジ・オーディエンス」が恵比寿で上映されることが分かった。

WEBのどの感想を読んでも絶賛されている2作品。観られる!やったー!まずは戦火の馬から観に行った。

平日の仕事を一生懸命切り上げ、恵比寿へスタコラサッサー。
結婚式でも無いと来ない土地の1つ、恵比寿へ足早に向かった(あとは赤坂と代官山)。

恵比寿ガーデンプレイスは遠い。駅から続く動く歩道と街並みのおしゃれさにドキドキしながら映画館に到着した。

こんな素敵な街を尻目に、私はこれから演劇を観にいくのだ!なんて素敵な夜だろう!!ららら〜(舞台を観に行く日は、私は必ずハッピー野郎に変身する)。

ソロ客がひしめく中央列

チケットを早めに取ったので中央の見やすい席だった。

見渡すと私が座る中央列は、ソロ客の女性ばかり

ソロの方、ソロの方、ソロの方、そして私(もちろんソロ)。私を含めて4人のソロ客が並んでいた。
残りは覚えいていないが、この3人のソロ客の方が後にナショナル・シアター・ライブの世界へ私を導くきっかけとなったのだ。この時にはそんなことは思いもしなかったけど。

みなさん仕事場にいたら、「演劇!」なんて言いそうにない雰囲気の方ばかりで(というか「演劇!」って言っている人にあまり出会ったことないが)すごく不思議な感覚に包まれた。
ロブションやその他オシャレスポットには目もくれず、ここに映画を、しかも演劇の映画を観にくる人がいるんだ!

みんな腹ごしらえをして集中を高めている中央列

演劇は長い。お腹が空くといけないので、軽食をもぐもぐとする。
周りを見ると、私以外の皆様もモグモグしている。思い思いのものをつまみながら、スマホを見たり何かを読んだりしていた。

なんというか、みんな手慣れている。

一切の迷いを見せずに、各自、観劇前のルーティンをこなしながら、集中モードに入らんとしている。

最高だぜぇ!(ハッピー野郎)

ウキウキ感と作業感

後にそう思うようになるのだが、ナショナル・シアター・ライブ独特の空気感が大好きだ。仕事帰りなどの隙間を縫って映画館に駆けつけ、演劇と向き合う。

演劇を好きな人が、ロンドンの毎度手ごたえのある作品を観に来ているウキウキ感がある。同時に、日常をこじ開けて来ている作業感が同居している。
そして映画館で観るから、好きなおやつやコーヒーを片手にどこかのんびりとしていて。

劇場現地やMETライブビューイングなどともまた違うと思う。

戦火の馬の結末

戦火の馬の主役は馬だ。パペットだけど舞台上で息を吹き込まれて、観客は彼の旅を追体験することになる。

ここから作品のネタバレが入ります。

ジョーイの行く末を見届けて、すーと涙が溢れた。良かったねぇ、良かったねぇ。

いつの間にか人為的に操られているパペットであることを忘れて、見入っていた。長い旅路の末に主人と再会するシーン、その一点に集約していく作品の結末に胸打たれて、そして優しい音楽が染みて仕方なかった。

忘れられない涙

そして、音が聞こえた。「ズビッ」「ズッ」ん?ふと横をチラ見して、

ーー泣いとる。横3人も泣いとる。

他のソロのお3方も、スクリーンを真っ直ぐ見つめて泣いていた。結末の感動と、良作を観たのだと言う満足が、彼女たちの心を満たしているのが伝わってきた。

ーー客席の一体感……!これが…ナショナルシアターライブ…!!

銀幕の光が涙に反射して、とても美しかった・・・ような気がする。少なくとも私の胸にはそのように光景がしまってある。

勿論国内舞台もいい作品が数多あるし、ナショナル・シアター・ライブでも爽快な涙で締めくくる作品は少ないと思うのだが、私はこの一瞬の涙の4連星が忘れられない。
私のナショナルシアターライブの原点になったエピソードだ。

ナショナル・シアター・ライブの作品をもっと観たくなった

その方々とは話すことなどは特に無く、映画館を後にした。
しかし、上映前の歴戦の戦士のような姿、上映中の集中、そして最後の一体感・・・とギャップは忘れ難い。

当時は「なんと!」という感嘆が主だった。
しかし今思い返すと、ナショナル・シアター・ライブの魅力の一端を垣間見たのだろう。
1人1人別々で来ている観客に語りかけ、時には圧倒し、反応を引き出すような強い作品がひしめき合っている、その気配を感じたのだと思う。

この世界をもっと知りたい、自分も通う一員になりたい!という興味でナショナル・シアター・ライブをさらに観に行くようになり、最終的にはNT at Homeのサブスク会員(幽霊)となっていったのだった。

魅力は語り尽くせない!!

その後、日本語字幕がいかにありがたいか、ローレンス・オリヴィエ賞やトニー賞のレースに絡む作品や演出家の作風を観たことがあることがどれだけ心躍るのか、シネリーブル池袋などの長めの上映期間やアンコールの貴重さ、などを年を追うごとに理解して(感謝が増し増しになり)今に至る。

毎年全通を目指してでも出来ずを繰り返しているが、それでももう人生に無くてはならない存在だと思う。

年末のアンコール上映も楽しみに、通うぞ!

明日のアドベントカレンダーは、はづき真理さんです!

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