どもどもケイです。すごく前に忍者が屋根裏で会話して終わるnot for meの劇を観てから、なんとなくシアター風姿花伝を敬遠していた。今回はtwitterで背中を押してもらい、素敵な作品と出会えたのだ。一期一会に感謝だ。
というわけで、最終日に駆け込みで観劇したパラドックス定数「Das Orchester」の感想を残しておきたい。
宴の七皿目『Das Orchester』は全て終了いたしました。同時にパラドックス定数オーソドックスは幕を閉じました。本当にありがとうございました。一年間に渡る七本連続上演を終えて今はもう感謝あるのみです。劇団は少しお休みしますが、劇場でまたお会いしましょう。An die freude!Prost!野木萌葱 pic.twitter.com/GzxRh0BhXF
— パラドックス定数 (@pdx_labo) April 1, 2019
- エモエモのエモ
- 劇団チョコレートケーキ「熱狂」と同時代
- マエストロのブッ刺さったセリフランキング
- 蛇足:小劇場のお約束について
Das Orchester
タイトルはドイツ語で英語だと、The Orchestra。タイトル通り、ナチス時代の楽団を舞台に、芸術の自由と政治支配を描いた作品だ。パラドックス定数は度々ツイッターのタイムラインで目にしていたが、今回の作品を見て評判に納得。
エモエモのエモ
観劇から2週間が経過し、感想がまとまらない〜とボンヤリ考えていた。だって、言葉にするともうこれしかないのだ。
エモかった。
主にマエストロのセリフが、胸にブッ刺さるのだ。途中からダバーとずっと泣いていた。舞台にかける愛情、そして自分自身の生き方そのものを全肯定して祝福してくれるような作品だったと思う。
ナチス時代の作品「熱狂」との関連
ナチス時代を日本人が小劇場で演じるというと、どうしても頭をよぎるのが劇団チョコレートケーキ「熱狂」。熱狂で学んだナチス政権の成り立ちと同時の時代背景が非常に役立った。というか、熱狂の知識が無いと結構感情移入しづらかったように思う。
▽熱狂の感想はこちら
マエストロのブッ刺さったセリフランキング
もうどうやってもまとまらないので、個人的に涙腺直撃したセリフを挙げていきたい。
楽団員が馬鹿なことを仕出かして。悪かったね。
ま、マエストロ〜そうくるか〜!!開始数分にして、この人を上司にしたいランキング第1位にマエストロが躍り出た瞬間だった。でも直属の上司だと苦労しそうだから、1つ上か2つ上の階層にマエストロが君臨する組織だと良いんじゃ無いでしょうか(何がだ。
何かに傅いた時点で、それはもう音楽ではありません。
それまでの党の旗のやりとりでもジンワリきていたが、ここで第一次涙腺決壊。音楽や舞台などの創作活動はもとより、生活や人生に置き換えても通じるような気高いセリフだと思った。権威・権力に向かって恐れず自由を宣言する姿に、最近モヤモヤしていた色々が噴出!涙が止まらない。
宝塚雪組ファントムのセリフ「人は愛や喜びのために歌うのであって、何かを得るために歌ってはいけない」を思い出した。
また、てがみ座「空のハモニカ」の金子みすゞに言われるセリフ「心配しなくても、あなたは詩人です。生活にまみれても。文字さえ書けなくても。」も思い出した。観たのは2013年で当時はみすゞに感情移入してこのセリフに号泣しているのだろうと思ったけど、あれから年数を重ねて分かった。特別になりたくて、でもなりきれない自分自身を重ねて見ていたんだろうなぁ。
そこにいてください?
退出を命じられた秘書官を有能と評して、彼女へ言うセリフだ。第二次涙腺決壊(早い。ユダヤ人として迫害される彼女に昨今の情勢を重ねて見るのは凄まじく違和感なのだが、でもさ、能力で必要されて「そこにいてほしい」って1番言われたいセリフなんじゃ無いのか。
そして、冒頭のシーンが伏線になっていたのが分かる。いつも彼女は「そこにいて」、マエストロを支えてきたのだ。マエストロと秘書官が重ねてきた日々を考えると・・・な、泣いてまうやろ〜〜〜!!
彼等と創ろう。彼等としか創れない音楽を。
秘書官をオーケストラピットに呼び出して、空想のオーケストラ団員たちと一緒に演奏をするシーン。舞台と聞いて最初に思い浮かべるのが「楽しい」の筆者としても、グッと来た。
そして何より、脚本・演出の野木萌葱や演者1人1人がそう思って作品を上演しているのが伝わってきたことにも、胸に迫るものがあった。
このDas Orchesterは今年の連続上演7本目の最終作品だと聞いた。ニワカなので詳細は存じ上げないが、社会人として予定を合わせて1年間専念して多くの作品を上演するのは生半可な覚悟と努力ではできないと思う。その最後に、舞台は「楽しい」自由のために「闘え」という作品で締めくくったのだ。かっこいいなぁ。
そこからのマエストロへの秘書官の激励、彼女がマエストロの音楽を愛するがゆえの決意など、もうな、泣いてまうやろ〜〜〜〜!!
脚本読みながら感想を書いているのだが、なんだったら現在進行形で涙ぐんでいる。
【パラドックス定数オーソドックスを繋いだ役者たち】
松本寛子(まつもと・ひろこ)
『Das Orchester』秘書官 pic.twitter.com/H9bF8alZYF
— パラドックス定数 (@pdx_labo) April 2, 2019
【パラドックス定数オーソドックスを繋いだ劇団員】
小野ゆたか(おの・ゆたか)2019年
『トロンプ・ルイユ』青年・ロンミアダイム
『Das Orchester』事務局長 pic.twitter.com/LxzrqPYuoL— パラドックス定数 (@pdx_labo) April 3, 2019
秘書官役の松本寛子、そして事務局長役の小野ゆたかの演技が特に印象に残った。
蛇足:小劇場のお約束について
いや、もうこの記事自体が蛇足みたいな感じなのだが、同行していた友人の感想が興味深かったために残しておきたい。ぼろぼろ泣いていた筆者とは対照的に、すこぶるドライな感想だった。
「そこを切り取るのか」
曰く、もっと楽団員が演奏で達成感を得るシーンや、最後の盛り上がりが最高潮になるシーンなどを描いても良かったのではないかというものだった。
筆者自身は最初のシーンでヴァイオリンもチェロも多分中身は楽器ではないんだろうなぁ・・・と思ったし、コンサートホールのシーンなんて1ミリも出てこないのだろうなぁと無意識に思っていたが、確かにオーケストラなのに役者の演奏シーンが1度も出てこない。
友人は劇を見るのが数回目なので、この感想の差は小劇場のお約束的なのが体に染みているかどうかにも起因するのではないかと思った。
映画やドラマなどで予算のかかった表現や緩急自在なストーリーに慣れている新規層を開拓するにはどうすればいいのか・・・?筆者自身の布教活動に少し課題が残った観劇になったのだった。
内心の動きが中心になり、政治と芸術に対してとか、現在の政治情勢が国民の生活に入り込んでいる状況などに行き着かなかったが、今日はこの辺で!