おすすめが流れてきて、躍動感のあるサムネイルだったため、軽率に嵐が丘の配信を視聴したのだが、とても面白かったので感想を残しておきたい。
Our critically acclaimed production of #WutheringHeights will be available #OnDemand this weekend! So if you missed us in Bristol or York and can't wait till next year – head over to https://t.co/40QW7kX6jt. But be quick! pic.twitter.com/KflFDV0zHz
— WiseChildren (@Wise_Children) November 24, 2021
Adapted and Directed :Emma Rice
Composer:Ian Ross
Set and Costume:Vicki Mortimer
Sound and Video:Simon Baker
Lighting:Jai Morjaria
Movement and Choreography:Etta Murfitt
わかりやすい!面白い!嵐が丘
重苦しいイメージのある「嵐が丘」だが、躍動感のある演出と高速のストーリー展開、歌ありダンスあり、わかりやすい人物解説で、こんなに終始楽しいことがある!?
というのが観終わった感想だった。
(人が死ぬたびに誰が死んだのかご丁寧に回覧板を持った人が歩いてきてくれる)
語り部が荒れ野へ変更
わかりやすさの肝になっているのが、語り部が家政婦エレンから荒れ野(ヒース・ムーア)の擬人化に変更になっていることだと思った。
所々に本が登場したり、最後本閉じて終わるなど伝聞調の原作の雰囲気は残しつつ、説明が簡素にわかりやすくなっていたと思われる。
舞台装置の手作り感
舞台は袖までオープンで全て見えており、装置転換や効果音も含めてキャストが関わる見せ転換方式。小劇場ならではの演出だ。
前半も後半も鞭打ちからスタート
特に良いなぁと思ったのが、1幕と2幕のオープニング。1幕ではキャサリンが、2幕ではヒースクリフが出てきて、鞭で舞台を叩くと嵐とストーリーが始まる。
ワイルドキャサリンと理知的ヒースクリフ
WOWOWで観た堀北真希のあまりに可憐なキャサリンの印象が強かったので、今回のワイルドで本能のままキャサリンにびっくり。ヒースクリフがまともに見える分、あちこちのキャサリンのサイコパスみがすごい。
彼女自身が嵐のようで、この作品の魅力になっていたと思う。
また、うちに心を秘めたクレバーなヒースクリフ像も大変好ましかった(突然の個人的嗜好の告白。後半では娘に母を見ているのが伝わってくるのがグッとくるナイーブさがあり、役者さんが上手いと舞台見ていても楽しいよね。
才あるヤベエ人との燃えるような恋か、お金持ちの安定的な未来か、ってコテコテだけどロマンスの王道だよなと思う。オペラ座とかもそうだけど、嵐が丘ってロマンスなんだなと改めて。
分かりやすいけど品がある演出
ラストはヴィクトリアンケーキまで登場し、大変牧歌的なエンディング。分かりやすくするのと、作品の質を落とさない絶妙なバランスだった。
この相手に伝わりやすくするのと、相手を侮ることの境目は何なのか?というのは最近の疑問だ。
ニュースや解説、省庁のツイッターなど、分かりやすさや親しみやすさを出したいばかりに過剰に幼稚になり、本来の伝える役目から外れてしまい、とんでもない表出になることが散見されると思う。
目的意識と相手への敬意?
誤解を恐れず言えば、意思決定権者のそれ以外の層への蔑視が漏れ出しているというか、どこか「分かっていない人へ教える」という姿勢が滲むからなのではないかと思っている。
無意識のうちに自分が1番分かっているという前提でプロモーションを組むからなのか。または、時間が無くて代理店へ丸投げするからなのか。
本当に伝えたいこと、伝えるべきことの核を見極めて、相手への敬意を忘れず分かりやすくすれば、こんな演出ができるのだろうか。
伝えたいことに真摯に向かい、どう伝えれば1番伝わるのかを試行錯誤する、そのプロセスの問題なのかもしれない。