イキウメ「天の敵」@本多劇場

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どもどもケイです。台風上陸直前!イキウメ最新舞台を観てきたので、感想を残しておきたい。

本多劇場

シアタートラム、シアターイーストが鉄板だったイキウメが、下北沢上陸!!本多劇場!!

イキウメが本多劇場で上演するんだなぁ…という感慨があった。

舞台好きなのに下北沢の劇場行ったの数えるほどしか無い者なので、完全にイメージと偏見なのだが、ちょっとしたアングラ感というか、どんな作品も受け入れる雑多なパワーがある土地なような気がする。

イキウメの作品はどっちかというと小綺麗な作品が多いように感じ(そういうカリッとコンセプチュアルなところが好みなのだけど)なので、どういう風に仕上げてくるのかな…?という興味があった。

気合いの装置と衣装

全力ぶつけてきた!と感じた。
舞台セットは、2017年のものをベースに(薬瓶が確かそうだったような…)しつつ、入場すぐ目を見張るような豪華さ。

天井まで続く薬瓶の棚、背後と上手にある温室の曇りガラス、木組みの植物棚に、ぶら下がり照明、理科室のような机椅子、冷蔵庫、流し…

上手は家が演じられるであろうオシャレスペース、ローテーブルと、水色とグレーとラタンっぽいソファ(このソファすごく好みだった)。

お金かかってるねぇ…(^O^)

衣装もすごくて、皆さま何回お着替えするの!革の鞄やら、ケーキにロウソクやら、小道具もたくさん。
カツラやジェルで撫でつけたり、髪型も忙しそう。
そもそも、助演的な装置展開専門スタッフ2人やら、キャストも増えてる…

冒頭の料理のところもギミックが増えている気がしたし、とにかく気合いというかこだわりが伝わってくるようだった。

舞台好きの客層

そういう目で見るからだと思うけど、客層も普段より多様なような気がした。初日翌日なので、ファンが来ているというのもあるだろうけど、笑ったり息を呑んだり自由自在。
この中で一緒に観るの楽しかったなぁ。

広い劇場

小劇場というより、中劇場というか空間が広いので随所に工夫を凝らしていた印象だった。

たくさんのセット、小道具、出てくる人数、時の表現のマイムなど…
特に、人生から退場する人だけが真ん中の出口から去っていくのは、ベタかもだがとても良いなぁと思った。(最後、橋本が下手にはけたのは、彼がまだ生きていくことを示していると思う)。

一方で、小道具の出し入れや、出はけにかかる時間などすこし間延びしてしまう印象で、とつとつ語っていく舞台なので、トータルの完成度はあったと思うけど、全体を通じて箱が大きくなることで静けさが増したような印象だった。

2017年前回は発想面白!っていう印象だったけど、2022年今回は橋本一代記というか重たかった。

ボウリングのシーン

回顧録の1シーンでボウリングの箇所が好きだった。笑いメインの横道にそれるのは、劇場ならではだと思う。
個人的にはコメディ好きなので、もう何エピソードか続きがあっても良かったなぁ。

劇団員の魑魅魍魎感

いつもの劇団員も箱が変わってもやっぱり良い味だなぁと再確認したというか。超常現象がメインの作品たちなので、不可思議な雰囲気の役者さんありきの劇団だよね。
相変わらず大久保さん可愛かったよね。

前説&後説無し

今作品では直近の作品(関数ドミノ、獣の柱)のようなキャストによるメタ的な観客への語りかけが無かった。
その代わり料理番組準備はあったけど…。
個人的にはいきなり始まって、いきなり終わってほしいので今回の演出は好きだったなぁ。

思考実験のストーリー

近年の健康志向に対して、健康や若返りを極めたらどうなるのか?というストーリー。飲血をしながら100歳を超えて生きる橋本を、筋萎縮性側索硬化症で余命が見えている寺泊がインタビューする中で、橋本の人生のエピソードが再現されながら挿入されて進んでいく。

関数ドミノのエイズもそうだったけど、今回の筋萎縮性側索硬化症も便利な舞台設定として使われているようなところがあって、少し抵抗があった。死が見えている人の希望にすがる気持ちはもっと切実なものがあると思うので、不老長寿の橋本の対比として描くなら、もっとインタビュアー寺泊の苦しみや怒りのシーンがあった方が、設定に意味があるような気がした。

また、生殖についてはできなかった、ですぐ話題が終わっていた。直近で「ザ・ウェルキン」の描く生殖と所属する男性によるどうしようも無い女の分断を見て、「これは!わしが!見たかった芝居や!!」と膝ポンした者としては、そこ飛ばされると中々感情移入のフックが無いというか。

どうしてもイキウメの女性役は空気というか、慈母神みがあるので、もうそういうものと割り切るしか無いと思うのだけども。SFメインというよりは、SFを通じた哲学へ作風が熟していっていると思うので、どうしても合う合わないが出てきてしまうなぁとは思った。これは自分自身が年齢を重ねてきたこともあると思う。

加えて、現在のコロナ罹患リスクが続いている状況もあるだろう。今日も客席は満員。みんな多かれ少なかれ、自分と大切な人の命をベットして趣味を見にきている状態なわけで、現実のグロテスクさが舞台を上回ってしまうような。だからこそ、作品もコロナ前の年代記で終わったのだと感じた。

他のイキウメ作品の感想はこちら

最近ストーリーを忘れることが多いので、後で見返せるようにメモに残しておこうという試みを文末につけます。

ざっくりお話メモ(ネタバレあり)
橋本は第1次世界大戦で出兵して、完全食を求める時枝と出会い、ある時飲血を始めて若返る。以降、妻の若返りと別離、ヤクザ一家の若手との友人関係、ベジタリアン五味沢との出会いなどが描かれて、最終的に現代の料理家として姿の取材に戻ってくる。最後は、友人糸魚川の孫夫婦の飲血を通じて、完全食の限界を悟った橋本が死を覚悟して去り、寺泊もまた、飲血の魅力に抗えないが挑戦することはできず、妻に抱き抱えられて「大丈夫」で幕を閉じる。