どもどもケイです。ゴールデンウィークもう1回来ないかな。ツイッターで複数の方がオススメ頂いてた(勝手に受信)シアターカンパニー「1927」の作品を見てきたので感想を残しておきたい。
宣伝で予想していたよりもシニカルでしっかりしたストーリーだった。アニメーションを多用した画面作りで最初から最後までずっとワクワクだった。
- 獣よ、子供よ、街に出よ!
- 動画紹介
- とにかく照明がすごい
- ライトの表現はアニメ技術
- アイデアの宝石箱
- 痛烈なアッパークラス批判
- 投げっぱなしエンド
- メタファー盛りだくさん
獣よ、子供よ、街に出よ!
シアターカンパニー「1927」の代表作。3枚のパネルが舞台上に設置され、プロジェクターでアニメーションを投影しながら、3名の役者がアニメに合わせて芝居をすることでストーリーが展開していく。
BGMは主にピアノと歌による生演奏。アニメーションはコミック的な要素が多く取り入れられ、メタファーを多用した表現により大人が見ても考察が捗るストーリーだった。
曲は全て短調、舞台は街の貧民街であるバイユーマンション、おどろおどろしいダークな寓話となっている。
1927
アニメーションと映像とライブ・ミュージックを融合させた、マジカル・フィルム・シアターを制作しているUK発のシアターカンパニーカンパニー1927。シュールな創作スタイルが特徴で、ティム・バートンを彷彿とさせる、不気味だけれども、カワイイ『コワかわいい』ブラックな世界観で、一見ダークにみえる作品の中にも愛がテーマとなっており、そのシンプルストーリーが子供から大人まで幅広い世代に支持されている。東京芸術劇場のwebサイトより
パフォーマンスについての分かりやすい抜粋とインタビュー動画があったので、貼っておく。
こちらの魔笛も有名なようだった。
頭の体操のようなアニメーションが続いていて、とても楽しい。
ライティングがSUGEEEE!
筆者が夢中になったのはまずライティングについてだった。タイミングがバッチリあっているプロジェクター投影と役者さん、そして各種照明!
プロジェクターからの投影って基本暗いところでないと見えない。そのために舞台上の照明は最小限になっていて、役者さんの表情を見せるために皆白塗りをしている。この白塗りが道化のような効果や匿名性も出していて、実用性だけでなく演出効果も絶妙。
特に気になったのが、ピンスポット。よくよく観察していると、役者にはちゃんとスポットが当たっているのだ。
スポットが当たる部分は背景の投影されている画像が白飛びしてしまうのだが、これを電灯によるライティングなどに見せかけて極々自然な画面作りをしていた。
他にもプロジェクションマッピングごと丸に集約されて行ったり。
プロジェクションマッピングに重ねてさらに影が飛び交ったり。
技術チームも八面六臂の活躍をしていた公演だった。
アニメーションの技術を多用
また、投影アニメーションで目を奪われたのは電球やネオンの表現だった。照明を当てて光っているように見えるけど、違うのだ。なぜなら前述の通り、照明を当てるとプロジェクションマッピングは白飛びしてしまうから。
実際にはいわゆるアニメで使われる光の表現技法を利用して発光しているように見せていた。
2枚のイラストは、丸の色を白めにしただけなのだが、これの2枚を繰り返すと電球が点滅しているように見える。
背景動画を制作している方は、イラストレーションだけでなくアニメーションの配色も利用していた。でも絶妙にアニメではなくてイラストっぽいし、その塩梅加減に夢中になってしまった。
アイデアの宝石箱
途中から私の中に住んでいる彦摩呂的な人が叫んだ(誰。アイデアの宝石箱や〜〜〜!
部屋を上から見たり、吹き出しで叫んだり、電話の営業時間外メッセージ文字に取り囲まれたり、袋の中身が一瞬見えたり、ほうきやスプレーを動かすと煙が出たり・・・インフォグラフィックみたいに、情報がイラスト化されてシーンが進行していくのは仕掛け絵本のようだった。
コミカルなシーンは子供達からも笑い声が上がっていた。
パフォーマーは3人!
パフォーマーは3名。入れ替わり立ち替わり、帽子や眼帯、カツラ、衣装などを取り替えて複数の人物を演じていた。登場人物は総勢12~3名だっと思う。同行者は3名でなく、もっとたくさんの出演者がいると思っていたらしく、この舞台で1番驚いていたポイントだった。
筆者はミュージカルのアンサンブル人数を把握する癖があるので、途中で3人だなぁ・・・めっちゃ忙しそう・・・出はけの場所間違えそう・・・と思っていた(自分の気づいた点をドヤ顔で誇っていくスタイル。
ポイントはピアノの演奏者にあると思うのだよな。1人の人が弾いているように見せかけていたけど、実際は管理人の青年を演じていた人もピアノを弾いていたはず。
痛烈なアッパークラス批判
主要な登場人物の1人、アグネス・イーブス。子供が暴れるバイユーマンションに、娘を連れて手芸教室を開きにやってきた女性だ。
このアグネスが終始コケにされていた。
なんかこう、新聞などの風刺イラストを見ているようだった。猫なで声、粗野に振舞う子供たちをリボンやマカロニの工作で解決しようとするお門違いなところ、街で助けを求めるだけで何もできないところ、最後は助けてくれた人の恩にも報いずに無責任に去っていくところ・・・。
表面的には優雅で上品な人物なのだが、実際は甘ちゃんでエゴにまみれたアグネス。本質を見ずに、貧しい人々を自己満足のために救おうとするフリをする、しかし実際はそんな下流民から搾取して豊かに暮らす上流階級を風刺的に描いているのだと思った。
人を批判するときはSNSでぶっ叩くんじゃなくて、こんな感じにコケにするんやで・・・というお手本を見せてもらっているようだった。
「僕たちにも普通の子供と同じものを与えてほしい」と言う子供達の叫びは見ていて辛かった。結局子供達は薬漬けで自我を失い、上流階級の娘であるイービーだけが、貧民街の管理人の全財産と引き換えに助けられたのだ。スーパードゥーパー皮肉な展開。
投げっぱなしエンド
子供達は薬づけにされて、自我を殺されて街は平和を取り戻した救いなしエンドだった。薬はメタファーで、教育や政策など様々な受け取り方ができると思う。
特に心に残ったのが、政府のとったヤバイ薬で子供を黙らせるという何の解決にもなっていない対応が、当事者である住民にも歓迎されているところだった。
自分の娘はマルクス(移民で貧しいながら思想で世界を変えた人物として挙げていた)になるかもしれないと期待していた母親でさえ、子供が大人しくなると胸を撫で下ろしたのだ。
劇のタイトルの「獣よ、子供よ、街に出よ!(The Animals and Children Took to the streets)」は子供に警鐘を鳴らして、思考停止のままで行けないというメッセージを発していると受け取った。
メタファー盛りだくさん
前述のマルクス発言も、筆者がナショナルシアターライブで予習していたので意味を受け取ることができた。
他にもメリー・ポピンズの劇中歌「お砂糖ひとさじで(お砂糖ひとさじで薬を飲むことができると乳母が歌う曲)」がオルゴール調で流れることで、子供達がキャンディと偽られて薬を飲まされいるのを表現しているシーンもあった(このシーンはオルゴールサウンドの可愛らしさと、実際のヤク漬けにするブラックさのコントラストがひどすぎて、とても好きなシーンだった。
他にも黒い手が出てきて誘拐を表したり、とにかく頭の体操のようにメタファーを多用していた。連想ゲームのようで達成感があったし、豊かな作品だなぁと思った。特に主要人物である少女イービーが全てイラストで表現されていた部分に心惹かれた。大人は人が、子供はイラストがと分けることで世界の違いが明確になるし、絵的にもパフォーマンス的にも幅が広がるし。
見終わった後もスルメのように味わえる舞台だった。