新国デジタルシアター「骨と十字架」

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どもどもケイです。2023年末までに今年見た作品の感想メモをアップロードしようキャンペーン(別名、大事なのは質より量だと自分を鼓舞するキャンペーン)として、「骨と十字架」の感想を残しておきたい。
※投稿は2023年12月ですが、記事の日時は公開当時のもので投稿しています。

お噂はかねがね!と、新国立劇場の配信をありがたく観たのだった。

全体としてはパラドックス定数の深煎りブレンドはそのままに、全体的にお金がかかり、小川スッキリテイストで抽出!!という感じだった(謎のコーヒーの例え。

実在の古生物学者の話

古生物学者として北京原人の頭蓋骨を発見したフランス人神父ピエール・テイヤール・ド・シャルダンを描いた話だった。

今回はパラドックス定数の野木萌葱脚本、小川絵梨子演出の豪華共演。
具体の人を借りつつも、独自の野木色に作品を染める手腕は、今回の作品でも安定して発揮されていた。

長田育恵「らんまん」脚本の時も思ったけど、売れていくには常に求められている質を求められる期日で納品することが必須なのだなぁとしみじみした。

2面性が突き刺さる!

主人公は真実を探究し誠実なあまり神をも恐れぬ傲慢、北京へ誘った学者はシニカルに見えてリアリストで信仰を大切にし、弟子は師匠を愛するあまりに告発、イエズス会総長は寛大なあまり2人を辺境の地へ追いやる・・・

など各人が矛盾を抱えていて、それぞれに矢印が向かっている関係性が描かれていた。

各人のキャラがクッキリ濃い目

この各人の思いが余って突き進んじゃう感じが、きっと言われていたほねじゅうの中毒性に違いない。

うまく伝えられないのだが、漫画で言うと、「俺は失われた一族の末裔で、片目に呪力を宿し」「俺も失われた一族の末裔」「俺もだ」「俺もだ」みたいな、設定てんこ盛りキャラが過剰に登場している!でも各人拮抗していて気持ちいい!と言うようなの独特の味わいがあった。

曲で言うとずっとフォルテが続く、みたいな。コース料理なのに、ずっとメインディッシュだけみたいな。

薄めの役はなくそれぞれキッチリ濃いめに書き込み、かつ大変上手な役者さんたちがスタイリッシュに演じているので、これが面白くないわけないよね。

私はB的なL的な素養があまり無いので、どの関係がどうとかに胸は高なったりは無いのだが、伊達暁エミール・リサンのキャラが大変眼福でござった。

お衣装最高か

ここに神と科学が絡んで信念のありようの葛藤が入ってくるから、いろいろ渋滞しているが、さらに!神父の服!!ふー!!!
このお衣装をガッツリ持ってきて、こんなの嫌いなオタクおらんやろ・・・という遠い目をしながら、凝視してしまった。

野木脚本に神父のロング衣装、野木脚本にスーツ、野木脚本に軍服、プライスレス・・・。

装置が豪華だYO!

聖堂の入り口、外の広場、2階、発掘現場…など同じセットが照明と燭台で、次々違う場面として描き出されていく。

また、格子の床や、ステンドグラスの窓、アンティークのような机や椅子など、細部まで作り込まれていて、これまた萌セットだなぁと思いながら見ていた。

パラドックス定数の通常公演だと、想像で補う部分がハイクオリティで精細に提示されていたような感覚を覚えた。

一方で、シアター風姿花伝でのシンプルセットでも、この予算をかけたのと同様の豊かな体験ができる小劇場演劇の面白みも感じた。
ほねじゅうをもっと小さい箱で上演しても、想像がつくというかそれも面白くなるだろうと想像できたのだ。

進化論を突き詰めると神の否定に繋がるのか?それともその絶対の法則性を確信して探究するのは信仰の現れか?重要なテーマが扱われていたが、見ていて雑念が大きすぎてその部分の感想まで至っていないがこの辺で!!