ナショナルシアターライブ「リア王」@ヒューマントラストシネマ渋谷

どもどもケイです。ゴールデンウィークは毎日お昼寝とお腹いっぱいに食べるのを繰り返している。何かの修行に励むが如く、ゴロゴロしている。

今年も完走を目指しているナショナルシアターライブ!4月はイアン・マッケラン主演のリア王だったので、感想を簡単に残しておきたい。

完売が続いたこともありゴールデンウィークにアンコール上映しているので、お時間ある方はぜひ!

index

  1. 四大悲劇リア王
  2. イアン・マッケラン
  3. コーデリアが強い
  4. 等身大の登場人物たち
  5. 効果と装置

リア王

ハムレット、オセロー、マクベスと並ぶシェークスピアの4大悲劇の1つ。筆者はハムレットとオセローを見逃しているので、ナショナルシアターライブではマクベスに引き続いて2作品めの4大悲劇だ。

『リア王』(リアおう、King Lear)は、シェイクスピア作の悲劇。5幕で、1604年から1606年頃の作。四大悲劇の一つ。
長女と次女に国を譲ったのち2人に事実上追い出されたリア王が、末娘の力を借りて2人と戦うも敗れる。王に従う道化に悲哀を背負わせ、四大悲劇中最も壮大な構成の作品との評もある。(wikiより)

大御所イアン・マッケランがリア王役

御歳79歳のイアン・マッケランがリア王役として登板。彼の演出プランに合わせて劇場はたった数百人の小劇場での上演。そんなイギリス本国でもプラチナチケットだったに違いない公演が、日本で3,000円で観られるのだ。


認知症として描かれていそうで、そうでもない演出だった。雨に打たれたり、棒を振り回したり、終始動き回っていたり・・・本当に大丈夫?とヒヤヒヤするほどの体当たりの演技。
もはやリア王にしか見えneeeeee!という貫禄で、映画を見ているようだった。4時間あっという間だし、ドラマとして非常に引き込まれた。

コーデリアが強い

日本でのリア王もいくつか見たことがあったので、可哀想で儚げなコーデリア像が筆者の中では染み付いていた。そして最初のシーンを見て思ったこと。

コーデリア、つえーなー。

黒人キャストをはめて、誇り高く一歩も引かないコーデリア像を描いていた。近年の海外作品や演劇の中の強い女に筆者は力をもらっている。むやみやたらに愛想笑いや媚を売るのではなく、自分の足で立っている女性に憧れる。(そうして、たまにテレビを見ると暗澹たる気持ちがする時がある。)

しかし、コーデリアもなんだな〜という衝撃があった。自分自身の姫像がまだまだなのだなぁと思い知るような、楽しい発見だった。親孝行を報われない可哀想なお姫様ではないのだ。フランスに嫁いで国土を取り返そうという、したたかで計算づくの姫が眩しかった。
そして、お姉さんたちには同情した。リア王が追放される火種は、リア王自身が招いたのだという妙な納得感があったのだ。

なんか等身大の登場人物たち

最初のシーンの愛憎含めて、登場人物は皆欲望に忠実な描かれ方をしていた。姉2人もグロスター伯の目を抉ったりするまでは、父の横暴さに振り回される感じでむしろ可哀想だった。本人の狭量さも含めて、すごーくリアリティがあったのだ。映画館を出てすぐの感想メモの一言目が「みんな生きてる」だった。

他の人たちも似たり寄ったりで、リア王って重苦しくて不気味な演劇だというイメージがあったが、むしろ愛おしささえ感じるような優しい作品なのだなという印象を覚えた。だって現実世界の方がよっぽど残酷だ。

1600年代の脚本を現代の感性でも現実感があるように仕立てる演出には夢中になる。
一方でシェークスピアの時代から変わらぬ人間の業があるなら、自分自身の苦しいこともしょうがないじゃないか、となぜか慰められるような謎の癒し体験となったのだった。不思議な感覚だった。

雨の効果

途中にリア王が雨に降られてから、ずっとぬかるみの中で劇が進行していく。見ていて気持ち悪かったが、その気持ち悪さを観客に求めていたのだろうなあと思った。役者の体調や装置の管理などが煩雑になるであろうに、小劇場のメリットを生かした迫力の降雨だった。

暗いライティング

ファンタビやゲースロなどで毎回思うが、今回のリア王も所々真っ黒お目めの自分にはしんどいシーンがあった。また戦争シーンは以前に見たジュリアス・シーザーに似ているなぁと思ったが、それが演出プランの類似なのか、そもそも戦争とはそういうものなのかは判断がつかなかった。

演出と装置デザイン

演出はジョナサン・マンビィ(Jonathan Munby)。昨年日本でも堤真一主演で「民衆の敵」を上演していたらしい。作品リストを見つつ、ちょっとずつ演出家にも詳しくなれたらいいなぁと思ったのだった。
セットデザインはPaul Wills。キャストとスタッフ一覧はこちら

語る会になかなか参加できていないのだが、どこかで行ってみたいなぁ・・・。