METライブビューイング「ドン・ジョヴァンニ」@東劇

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どもどもケイです。2023年末までに今年見た作品の感想メモをアップロードしようキャンペーンの感想として更新しています。
※投稿は2023年12月ですが、記事の日時は公開当時のもので投稿しています。

イヴォ・ヴァン・ホーヴェ御大の演出作品だったので構えて観に行ったが、意外にもすごく誠実だし(暗いけど)最後の万人受けホームランはハートを撃ち抜かれて終わった。

ラストシーン好きすぎる

なぜエラヴィーラが有閑マダム風の服なの?
ジョヴァンニの食卓がバルコニー風なの?
ツェルリーナのワンピは特に現代風?
などの引っ掛かりが、ラストシーンの家々と民衆の朝が明ける様子に接続することで氷解。

ぶっ飛んだ設定を一夜の悪夢とするのは、ケイティ・ミッチェル演出の《ペレアスとメリザンド》に通じるところがあった。

辻褄が合うように、現代の価値観に合うようにオペラのストーリーを整えようとすると、どうしても「悪夢!支離滅裂なのは夢だから!!」となってしまうのかもしれない。

尊重された女性たちの扱い

このホーンテッドマンションのようなお葬式のような雰囲気の中で、ツェルリーナのおっぱいソングどうするの…?と思っていたのだが、血糊が衣装につくのに配慮した、タッチしたかしていないか微妙な清潔な感じだった。歌いきったのは感心。

他のドン・ジョヴァンニが女を口説くところも、女性たちが尊厳と賢さを保ったままだったので、結果ドンジョバンニが超性犯罪者になった思い切った演出だった。

でもオペラ見てて女の扱いにどっか引っかかるところがあまり無くてスッキリ楽しめたので、意識のアップデートに合わせて古典を演出していく大変さと成し遂げて作品として成立させる工夫に頭下がる思いだ。

レポレッロ役のアダム・プラヘトカがとにかく芸達者。
彼がコミカルなところと、最後の地獄落ちの目撃者を一手に引き受ける要の役なので、いやぁ凄かった。

後半は特にスゴツヨ歌手が入り乱れる紅白歌合戦みたい。
シンプルで場転がほぼ無いセットだったけど、それを意識させないくらい豪華。
塩と焼くだけで美味しいお肉とか魚がドンドコ出てくる感じ。
現地で観るのはどうだったんだろう。

地獄落ちは、蠢く亡者で、まさかの演者全然見えなくなる演出。
新国立劇場の、石像とスモーク奈落の王道演出観てたからか、生身感が凄かった。

そして、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ御大でも大衆の心にヒット飛ばしに来るんだ…というラストシーン。
でもドンジョバンニの良いオペラみたな〜と日常に戻りやすいよね。