METライブビューイング「椿姫」@東劇

どもどもケイです。花粉の嵐ですね。鼻水ジェット噴射。

週3日ライブビューイングをキメて来たので感想を残しておきたい。まずはオペラから!

世界屈指のオペラハウスであるニューヨークのメトロポリタン歌劇場。その最高級のオペラをお手軽価格3,600円で見られるMETライブビューイングで、椿姫を見てきたのだった。

index

  1. みんな大好き椿姫
  2. 最強の出演者とディレクション
  3. オススメの関連動画
  4. 序曲の演出がまず最高
  5. 死の瞬間をとらえた作品
  6. #me too時代のヴィオレッタ

ヴェルディ「椿姫」

アイーダやリゴレットなどでも有名なヴェルディの1853年の作品「椿姫」。乾杯の歌や、花から花へなど名曲づくしの最も人気なオペラの一つ。みんな大好きだよね、筆者も大好きだYO!


オペラの原題は「La traviata ラ・トラヴィアータ(堕落した女)」。
オペラに詳しい人は「トラヴィアータ」と呼ぶ傾向にあるので、筆者はたまに通ぶって「トラヴィアータ、あ、椿姫ね。見てきたよ」とか言っている(圧倒的な小物感。

あらすじ
高級娼婦のヴィオレッタはピュア貴族のアルフレードと恋に落ちる。しかし、ヴィオレッタは病に侵されており、暗い未来が暗示されている。アルフレードのパッパの頼みで2人は別れを告げる。アルフレードに誤解されて、意気消沈したヴィオレッタは病状も悪化し死ぬ。悪女&ヒロインの死という、冬ソナもびっくりのコテコテ展開だ。

バレエだとノイマイヤー版「La Dame aux camelias ラ・ダーム・オ・カメリア(椿姫)」やアシュトン版「マルグリットとアルマン」が有名。原作は全てアレクサンドル・デュマの小説「椿姫」だ。

最強布陣の椿姫


俺の考えた最強の椿姫の名を欲しいままにするような作品だった。

最強理由
その1:ブロードウェイの人気演出家マイケル・メイヤーのディレクション
その2:端正なルックスと甘〜い声のテノール歌手ファン・ディエゴ・フローレス様
その3:可憐な性格と天才肌の演技の最高峰ソプラノ歌手ディアナ・ダムラウ様
好きな人しかおらん。メトよありがとう・・・。
新音楽監督のネセ=セネガンのお披露目公演であり、オケの演奏も含めて新たな作品作りに挑戦していた。

フローレス様といえばセビリアの理髪師のアルマヴィーヴァ伯爵の超絶技巧歌唱(動画の6:30のあたりから目が飛び出る)。

ダムラウ様といえば魔笛のアミダラ女王夜の女王のアリア。この動画だと怖いけど、実際はすっごくキュートなお人である。

そしてマイケル・メイヤー演出といえば「American Idiot」のこの演出に思い入れがある。現地で見た話はこちら

マイケル・メイヤーは先月のメトオペラ「マーニー」も最高でしたな。

過去最高の椿姫

大学時代にアンジェラ・ゲオルギューの椿姫をDVDで見てから、さすが〜に万年初心者といえど様々なバリエーションの椿姫を見てきた。
前回のヴィリー・デッカー版椿姫こそ世界最強の椿姫だと思っていた。

大きな時計を置き、終始死を象徴する医者が舞台上で監視しながら進行する抽象的な舞台。シンプルかつ斬新だった。

だが、しかしだよ。

今回は、エモさ爆発だった。過去最高だった。軽々と過去最高を塗り替えてきた。この世は椿姫インフレが起こる極楽浄土やったんや・・・。

エンディング後の世界から始まる

椿姫の序曲は有名だ。悲壮感の漂う静かな音楽から入り、アルフレードに別れを告げる愛のテーマが流れてしっとりと本編へ入る。常だと幕が閉まっていたり、舞台セットに照明が暗く当たっているなど静かな始まりが多い。しかし、今回は違った。この序曲が、すでにクライマックスだった

序曲の背景で、寝台に横たわるヴィオレッタ。周りを取り囲むアルフレード、メイド、アルフレードパパ・・・こ、これは!

ヴィオレッタの死のシーンからスタートなんですけど〜〜〜〜!!

劇的な幕切れから、さかのぼるやつだ〜〜〜〜!!みんな大好きなやつ〜〜〜!!

いや、ほんとこの時点で最高だったよね。開始3秒で3,300円の元が取れて、あとは儲けしかないやつだ。ちなみに過去半券があると3,600円から300円割引なのだ(リピーター割のステマ。

そして愛のテーマに曲調が移り皆が見つめる中で、ふと起き上がるヴィオレッタ。そっと寝台を抜け出して、アルフレードに寄り添う。もちろんアルフレードにはヴィオレッタは見えない設定で、ヴィオレッタがいない空の寝台に泣き伏すアルフレード。そのまま少女めいた足取りで闇の中に消えていくヴィオレッタ。背景には椿の花。

最高かよ〜〜〜〜〜〜〜!!!(2回目。
みんなには見えないで1人で天国に旅立つのかよ〜〜〜〜〜!!

ノイマイヤー版バレエ椿姫のオープニングの形見分けシーンや、ミュージカルレ・ミゼラブルのラストのバルジャンが旅立つシーンなどが彷彿とされる演出だった。

本編開始前に早くもドラマが頂点に達した。好きが爆発してドキのムネムネが止まらない。

死にゆく一瞬を描いた演出

幕間のインタビューで演出のマイケル・メイヤーが「ヴィオレッタに真の救いが訪れた、死の瞬間をとらえたかった」と言っていた。そう、この作品は死の間際の走馬灯のような作品だったのだ。

死にゆく彼女の、最後の心象風景。

せ、切ないかよ〜〜〜〜〜〜!!

閉鎖的に覆われたドーム型のセット、どんなシーンでも常に舞台上にあったベッド、最初からメッチャ体調不良で幸薄めのヴィオレッタなどとにかく死の気配が濃厚で、儚い舞台だった

歌い上げるオーケストラ

今回のオケを聞いた筆者が思ったこと。

・・・サブちゃん、かな?

演歌の様にコブシがきいてて、エモいところでジャワーンと伸ばしたり、悲哀のシーンで金管がブオブオ言ってたり・・・とにかくオーケストラの主張がめちゃめちゃ強かった。最後のカーテンコールでは、オーケストラも舞台上に上がる珍しい演出だった。


特に1幕最後の「愛してね、アルフレード」と歌う有名アリアでは、盛り上げてもうアゲアゲ。いっつももっとちょーだい!・・・とちょっぴり惜しく思っていたので、今回は思う存分堪能できた。泣いた。

空気の読めないアルフレード

まぁ、古典の男性はなんともアレなのは定番なんだけれども。ヴィオレッタがまともであればある程、難しくなるのがアルフレードでして。今回のアルフレードは、あんぽんたんアルフレード太郎でした。

フローレス様、優雅な歌唱はそのままに空気読めない君うますぎで、冬。別れのシーンでニッコリ帰ってくるところが最高だった。

#me too時代のヴィオレッタ

加えて、今回の演出版で筆者の印象に残ったことが、アルフレードの妹を家族に大事にされて、結婚して万事がうまくいく女性の象徴として描いていたことだ。

ヴィオレッタが死の淵にいる時に、お祭りの音とともに、花嫁姿の女性が横切っていく。自分の好きに生きた人生に悔いは少ないけれど、祝福された他の女性を見て深い孤独を感じる・・・。
引き継がれたロールモデルに乗れない中で苦闘して命を散らす1人の女性として、ヴィオレッタが描かれていた。

悪女をこき下ろすのを楽しんでいなかったか? 古典作品を楽しむ自分にドキッとした一幕だった。

▽同じマイケル・メイヤー演出メトオペラ「マーニー」の感想はこちら