豊岡演劇祭2020 スペシャル配信の感想

toyooka

2020年9月9~22日、兵庫県豊岡市で開催された「豊岡演劇祭2020」。1/28まで配信されていたauスマートパスプレミアムのコンテンツ配信を見たので感想を残しておきたい。

▶︎豊岡演劇祭2020配信のページ

これauの地方創生アクセラレーションの一環で取り組んでいるということで、ビジネスモデルで成立させながら地方演劇へお金を流すすごい取り組みだった。マルチアングルといい、感動した。

また、本配信は配信情報をまとめていただいているsuuさんの記事で知ることができた。
▶︎suuさんの「舞台配信メモ」へのリンク
面白い作品をキャッチして広めてくださる方々のおかげで、素敵な趣味活動ができているので、大変ありがたいといつも思っている。

Q「バッコスの信女 ─ ホルスタインの雌」

作・演出の市原佐都子と劇団「Q」の参考記事は下記を読んだ。
▶︎パフォーミングアーツネットワークジャパン アーティストインタビューの記事

全体的に振り切っている

キャッチーだったのはMade by Japanese national seisi~♪で始まる合唱。投影のスライドはカタカナがパワポのようなポップアップで登場。
映像や画像が自然に入って、合唱も入って。新しい感じで楽しいなと思ったが、ど、どこに分類すればいいのだろう・・・。

ナショナルシアターライブで見た「イェルマ」に近いえぐさと閉塞感と生殖感があったと思う。

「あなたは、あなたの欲望が誰も傷つけることのない、安心安全なものだと言い切れますか?」
これ言い切れない、時間軸を進んでいくとそう判定されてしまうかもしれない、というのを目にしている時代だと思う。

不快で面白い

全体的にぶっ飛んでいたが、テーマとしてはブレがないので散らかった印象は受けない、不思議な後味だった。
ギリシャ悲劇をモチーフに基本筋はざっくり踏襲しているので、しっちゃかめっちゃかではないのだろうか。合唱隊は牛の魂という設定は面白かった。

また、ベースには薄ら不快というか、好んで観たいシーンではないものが連なっているのだが、全体が連なると意味があるように受け取れて、面白い。
面白いものは楽しいとは限らないのだなぁ、ということをしみじみ感じた。またテレビでは無く、場所時間を拘束する演劇ならではだと思う。

段々エグくなる

息子が生まれてからはうっかり吐いてしまいそうな、なんかこう、えぐさがあった(しんどかったので、音声小さめにした。コーンフレークのお清め塩が救いでしたな・・・。

役者さんもパワーがいるというか、脚本に負けないように演じ切るの大変だろうなと思った。元の荒いパワーに負けかねないというか。
ハワイ(パピヨン)のテンションよ、と遠い目になっていたが、確かにラストのセリフ言うにはあれくらいのぶっとんだ具合がいるというか。

グロテスクだけど、最後スクリーン突き破っちゃうから、なんかこうコミカルで耐えられる感じだった。最後、客席は子宮に見立てられている気がした。
切り取って来たものが、男性性や女性を脅かす肉体的な欲の象徴に感じ取れて、ちぎって切り刻んでしまいたい、その憎しみを表現しているように受け取ったので、爽快感等があった。
舞台上だとなんでもできるんだなぁ。

岩井秀人(WARE)『いきなり本読み!in 豊岡』

台本、演出、役者を分けて観られるようになることで、舞台がもっと楽しくなるようになる。

公開舞台稽古という感じだった。同じシーン繰り返し実演することで、演出と俳優の演技によって作品が立体的に立ち上がってくる様子が受け取れて楽しい。

演劇は演出家の作品なんだなぁというのが、思った以上だった。また、役者や音声は技術の塊だなと思った。また、自己主張が強くないと存在感を発揮できないなぁとも。

シリアスとコメディは紙一重

途中で、へ?というアドリブや、セリフに呼応して入るボーンという音一つで、吹き出してしまうような。また、張り合ってと言われて、掛け合いが増えていったり、とそれぞれのキャラ付けが濃くなっていったりと、アイデアを出し合いながら見ていて面白いシーンを作っていくのが伝わって来た。
しばしば吹き出してしまう感じなので、間合いや音一つでシリアスはぶっ飛んでコメディになるのだなぁと思った。

ワークショップ配信の難しさ

そして藤谷理子さんが、ヒッキー・ソトニデテミターノで印象的だった妹役だったことに気が付く。全3人、ハイバイの舞台で観たことがあるので、なんとなく実物のイメージもついて楽しめたのだが、配信のみだったら親近感がわかず、入り込めなかったかもなと思った。

輪廻TMは2012年「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」からの出典。筆者が、初めてイキウメを観て、以降見続けるようになったきっかけの作品だ。
当時はあまり感じていなかったが、すごく仏教的な作品なのだなと思った。

2021/2/4〜21の「イキウメの金輪町コレクション」で再演予定。楽しみだ!