メト・ライブビューイング「ラ・ボエーム」@新宿ピカデリー

どもども。万年オペラ初心者のケイです。

久しぶりにwowowではなく、映画館でメトロポリタンオペラ・ライブビューイング、通称メトライブ(mtlive)に行ってきたので、感想を残しておきたい。今回は、声楽を嗜んでいる友人とともに観劇した。彼女はメト・ライブも毎年全通している。興味深いお話を色々聞いたので、感想と合わせてご紹介していきたい。

とにかく豪華で豪華でたまらない演出だった。札束で観客をひっぱたくような、メトの良さを十二分に堪能できる作品だ。

▼メトロポリタン・ライブビューイングについては下記をどうぞ

愉悦!メトロポリタン歌劇場オペラを家で観る

2017-10-18

ラ・ボエーム

イタリアオペラの巨匠、ジャコモ・プッチーニのオペラだ。


ロマンティックで聞きやすいメロディと、韓流もびっくりのセンチメンタルなストーリーが特徴だ。オペラは大体ヒロインが死ぬ(暴論。

オペラの楽しみ色々

筆者はミュージカルとバレエも万年初心者なのだが、オペラとの重複部分はいつもとてもテンションが上がる。
今回のトスカの作曲者プッチーニも有名な作品を多数残している頻出作曲家の1人だ。荒川静の「誰も寝てはならぬ」で有名な「トゥーランドット」、ミス・サイゴンの原案である「蝶々夫人」、「愛に生き、歌に生き」のナンバーが有名な「トスカ」など、テレビや喫茶店のBGMなどの様々なシーンで目に耳にする。
同じくプッチーニの作品である「マノン・レスコー」は、ノイマイヤー版のバレエ「椿姫」で、主人公マルグリットが見に行っている演目でもあるなど作品間での関連も多い。他ジャンルに本歌取りされている作品がいっぱいなのだ。

ミュージカルRENTの原案

今回のラ・ボエームは、レントの原案ということで、公式が相互キャンペーンをしている。レントはちゃんと観たことがないので、この夏行ってちゃんと考察したい。同じマイケル・グライフ演出のディア・エヴァン・ハンセン大好きなので大丈夫だと思う。ちなみに映画「ムーラン・ルージュ」もラ・ボエームが原案らしいです。

▽8/5追記!RENTを見てきた感想記事はこちら。

来日ミュージカル「RENT」

2018-08-05

ストーリーよりも見所は歌!

ラ・ボエームもストーリーは至極簡単だ。ボヘミアーンな貧乏芸術家4名が住む屋根裏部屋に、お針子のミミが訪ねてくる。詩人ロドルフォと、ミミは暗闇で手が触れ合って、トゥンクする。もう一組、キュート系美女ムゼッタと画家マルチェッロの恋模様もありつつ、最後に結核でミミが儚くなる。
序曲もなく2人は一瞬で恋に落ち、その後もどんどこ進んでいくので話はストレートだ。次々と繰り出される歌をとにかく楽しむ作品になっている。

▼見所を予習しておくと観るのが楽しい。
ラ・ボエーム(wikipedia)

プッチーニはせっかちだった?
蝶々婦人やラ・ボエームなど、プッチーニは序曲が無い作品も多い
一つの説としては、当時オペラが貴族の嗜みから、新興貴族(成金)の趣味へと変わっていたことがある。貴族は文化資本も、集中力も、時間もあるため、ゆっくり聞くことが出来る。また序曲を聞けば、大抵のストーリーを把握して味わうことができた。しかし、新興貴族には分かりやすい作品が好まれたのだ。
加えて、プッチーニはせっかちだったので、序曲もなく、曲がドンドコ登場し、上演時間もとても短い作品が多いのではないか。(友人Tの話より)

いきなり難曲のオンパレード!

マイクを一切使わない生声勝負のオペラ。うっとり演じていても、超絶技巧を繰り出していることも多い。
冒頭ロドルフォが歌う「冷たい手」は、有名なアリアだ。テノールの最高音階ハイC(ハイツェー)が登場するので注目だ。続いてのミミの返歌「私の名前のミミ」も、名高いアリアだ。「本当の名前はルチアだけど、みんなミミって呼ぶの」。ロドルフォの自己紹介に呼応する、ミミの歌詞にも注目だ。

人称で萌える2人の距離感
イタリア語で相手に呼びかけるには、3通りある。最初はロドルフォとミミが2人ともよそよそしく「あなた様」と呼びかけている。
しかし、ロドルフォは自分の歌が終わると「きみ」と距離を詰めた呼び方になり、ミミもロドルフォからワンテンポ遅れて「あなた」と恋人同士の呼びかけへと変化していく。字幕では文字数の関係で省略されているが、その距離感がたまらんのだ。(友人Tの話より)

肉食系の演出

今回の演出ではロドルフォが超積極男子だった。ねっとりした歌声も合わさり、フランスの話なのに漂うラテン男…。過去に見た新国立劇場の演出だと、2人はもっとピュアピュアであった。偶然が偶然に重なり恋に落ちるのだ。今回は、ロドルフォもミミも肉食系です。

また、男子4人がきゃっきゃしているのも、胸キュンだった。本演出は男子が全力でアホの子なので、愛おしい。カフェ・モミュスに向かう時に友人一同で「モミュス!モミュス!モミュス!」って唱えているのがツボだったりする。
大の男みんなで飲み屋さんの名前を連呼して出発するって、可愛すぎかよ。

ミミは意外と計算高い?
ミミのアリアを歌うときは、「自分は石原さとみだ」と自己暗示をかける。自分が美女だという自覚があり、自分に自信がないと絶対あのアリアは歌えない。(友人Tの話より)

ミミを演じるのは、ソニア・ヨンチェバ。メトでも最もホットなソプラノの1人だ。今シーズンでは、トスカ、ラ・ボエームなど3作に出演する。

豪華絢爛な2幕

2幕ではムゼッタのワルツ「私が街をあるけば」にうっとりする。筆者も全オペラの中で、1番好きな歌だ。メトオペラシリーズのテーマソングに選ばれていたこともあるので、ファンも多い曲なのだと思う。
注目されながら歌う曲なので、歌手がどのように歌い上げるのか?ドキドキしながら観ることになる。

演じていたのは、スザンナ・フィリップス。前回はシルク・ド・ソレイユの演出家ロベルト・ルパージュ演出の現代オペラ「遥かなる愛」で歌を聞いた。大作を歌い切るディーバを惜しげもなく配置しているのを、すごく贅沢に感じたのだった。

豪奢な舞台装置とアンサンブル

圧巻なのは舞台装置とアンサンブルの量だ。全幕合わせて30トンの舞台装置、アンサンブルは200名弱はいたのではないかと思う。舞台上にクリスマスの街が出現したのだ。
筆者はフランコ・ゼフィレッリ演出を初めて見たので、とても感動した。このプロダクションは再演を重ねているとあるが、こんな豪華な舞台があっていいのか?!と目が回りそうだった。
幕間の舞台転換の様子も楽しい。メトロポリタン歌劇場は本ステージを含めて4面舞台、それをフル活用してマチネを行い、ソワレまでに装置を入れ替える。一歩を操作を間違えると大怪我をしそうな装置が動く様は、迫力満点だった。

余談だが、子供たちが歌う曲はおもちゃ屋さんの名前「パルピニョール」が連呼されている。蛙ピョコピョコみたいだなといつも思う。

怒涛の最終幕

今回の観劇の気づきはミミの描き方だった。ピュアなキャラクターだと、パトロンの元に身を寄せるのが残酷だと思ったが、ミミに野心があることが表現されていて納得した。
例えば2人の出会いでは意図的にロドルフォを誘惑しているし、街で帽子を見るときやムゼッタへの眼差しに豊かさへの羨望が透けているのだ。1度は物の豊かさに惹かれたミミが、愛情に飢えて戻ってくる最終幕には思いの外ジーンと来た。
「手が冷たい」と言い続けたミミが、最後に手があったまって終わる。愛情に飢えていた彼女が、貧しいながらも優しい友人に囲まれて心が休まったように受け取った。ほろ苦いエンディングに希望が感じられたのは、自分が歳を重ねたからだろうか。

筆者の初めての生オペラは「ラ・ボエーム」だった。オケーストラの音色と柔らかな歌声にフワーっと包み込まれて、温泉みたい!と思った(語彙力。また、装置や演出の豪華さに感動して、その後オペラを見るようになった。そのエピソードを覚えていて、改めて誘ってくれた友人Tの優しさにもホロリとしたのだった。

個人的に、生オペラを破格のお値段で見られる新国立劇場はオススメだと思う。

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愉悦!メトロポリタン歌劇場オペラを家で観る

2017-10-18